糸川耀士郎インタビュー ミュージカル『ミセン』 「一つに限定することなく様々な分野のお芝居を学んでいきたい」（後編）
2025年1月10日(金)より大阪・新歌舞伎座、2月1日より愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、2月6日より東京・めぐろパーシモンホール・大ホールにて、ミュージカル『ミセン』が上演されます。
韓国のウェブコミック・WEBTOON（ウェブトゥーン）で大ヒットしドラマ化もされた「ミセン」は、韓国のエミー賞と言われる百想芸術大賞など、2014年度のドラマ賞を総なめにし、「ミセンシンドローム」と呼ばれるほどの社会現象を起こした大ヒット作品。
日本では、2016年よりピッコマにて連載され、同年、リメイクドラマ『HOPE～期待ゼロの新入社員～』も放送されました。この度、脚本・歌詞のパク・へリムさん、音楽のチェ・ジョンユンさん、演出のオ・ルピナさんにより、「ミセン」が世界で初めて舞台（ミュージカル）化されます。
囲碁のプロ棋士になる夢が絶たれ商社のインターンとして働くことになる主人公のチャン・グレ役を演じるのは前田公輝さん。グレが所属することになる営業3課のオ・サンシク課長に橋本じゅんさん、グレの母親とワーキングマザーでありオ課長の同期ソン・ジヨンの一人二役に安蘭けいさん、グレの同期インターン社員に清水くるみさん(アン・ヨンイ役)、内海啓貴さん(ハン・ソギュル役)、糸川耀士郎さん(チャン・ベッキ役)ほか、石川禅さん、中井智彦さん、あべこうじさん、東山光明さんなど、魅力的な俳優陣が物語を彩ります。
THEATER GIRLは、チャン・ベッキ役を演じる糸川耀士郎さんにインタビュー。後編では、役作りについてや本作での課題、過去の経験から得たことを語っていただきました。
「歌の中でキャラクターをどう表現するか」が課題
――本作ではチャン・ベッキ役を演じられますが、演じるにあたりどんなことを意識していますか。
チャン・ベッキは、エリートかつ切れ者で心の内が読めないという、今までに演じたことのないキャラクターです。最初は感情をお芝居で表現するのが難しそうだと思っていましたが、今はルピナさんの演出のもと、もの静かな一方でたまに出る可愛さがどんどん魅力的に見えるようなキャラクターになっています。
――本作で新たに取り組みたいことや現在取り組んでいること、課題があれば教えてください。
チャン・ベッキは、歌で感情を表に出すというよりも、音の取り方一つでまっすぐな性格が出てしまうキャラクターなので、「隙のない完ぺきな人間だ」ということを歌の中でどう表現するかが課題になっています。今までにないことなので、色々模索しながら、ミュージカルナンバーの中でもキャラクターを表現できるようにしていきたいと思っています。
――本作の楽曲についての印象はいかがでしょうか。
キャッチーで心が弾むような曲が多いですね。喜怒哀楽の幅が大きい分、観ているお客さまも2時間の中で感情をかき乱されてしまうと思います。でも、そこがこの作品の魅力ですし、リアルな社会の一部を切り取った生々しいものにもなっています。そのリアルさとミュージカルの掛け算を楽しんでいただけたら。まさにミュージカルの魅力を感じていただける楽曲だと思います。個人で歌わせてもらうパートも結構あるので、そのあたりも注目してもらいたいです。
俳優になる前は「美容師」として仕事をしていた
――本作の主人公のチャン・グレは夢が絶たれて商社のインターンとして働くことになります。糸川さんが、「この決断で人生が大きく変わった」と思うことはありますか。
この仕事を始める時も大きな決断でしたが、僕の中で人生が大きく変わったと思うのは、高校時代の進路を選択する瞬間です。進学校に通っていたので、最初はこのまま卒業して大学に入って、会社員として働くと思っていました。なので、高校1年生の時にはとくに何も考えずに勉強をしていて。
でも、高校2年生の進路を考え始めるタイミングで入院した時があって。授業にもついていけなくなって「これからどうしよう」と思っている時に、家族会議で母から「本当にやりたいことをやればいいんじゃない」と言われて、美容師の兄が思い浮かびました。
今までは勉強ばかりだったけれど、元々兄の影響もあってお洒落が好きだったし、そういうことを仕事にしてもいいかもしれないと気付くことができて。学校の先生からは猛反対されたのですが、それも押し切って美容師の道を目指した流れで、今この俳優の仕事をやらせてもらっています。母からの言葉と兄の存在がなければ、上京していなかったと思いますし、自分の中での大きな決断だったと思います。
――その経験があったことで、本作のストーリーもより身近に感じられそうですね。
そうですね。大手の企業で働いている登場人物と比べるのは気が引けますが、僕も一応美容師として少しだけ社会人を経験したので、「社会ってこうなんだ」と思うこともありました。でも、そういった社会人経験を積んだからこそ、演技に役立てられることもあるので。社会の不条理みたいなものが描かれるお芝居に具体性を持たせるには、当時の経験も役立っているのかなと思います。
――では最後に、本作を楽しみにしている皆様に向けてメッセージをお願いします。
見てくださるお客様の生活に溶け込めるようなリアルなお話なので、これまでありそうでなかった気がしています。この作品を観て「人生が救われた」というよりも、「重かった心がちょっと軽くなった」と少しだけでも前進してもらえたらうれしいです。
取材・文：THEATER GIRL編集部
撮影：梁瀬玉実
公演概要
新作ミュージカル『ミセン』
プレビュー公演：2025年1月10日(金)
本公演：2025年1月11日(土)～1月14日(火)
大阪・新歌舞伎座
2025年2月1日(土)・2月2日(日)
愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
2025年2月6日(木)～2月11日(火祝)
東京・めぐろパーシモンホール 大ホール
チケット：
エグゼクティブシート：16,000円
S席：13,500円
A席：11,000円
U-25：7,500円
原作著者： ユン・テホ
著作権者： SUPERCOMIX STUDIO
脚本・歌詞： パク・へリム
音楽： チェ・ジョンユン
翻訳・訳詞： 高橋亜子
演出： オ・ルピナ
出演：
チャン・グレ：前田公輝
オ・サンシク課長：橋本じゅん
アン・ヨンイ：清水くるみ
ハン・ソギュル：内海啓貴
チャン・ベッキ：糸川耀士郎
パク・ジョンシク課長：中井智彦
キム・ドンシク課長代理：あべこうじ
居酒屋店長／協力会社社長：東山光明
チェ・ヨンフ専務：石川禅
ソン・ジヨン次長／チャン・グレの母：安蘭けい
他
