大原櫻子インタビュー 『ザ・ウェルキン』「今を生きる私でも共感できる題材だと思った」(前編)
2022年7月7日(木)より東京、大阪にて『ザ・ウェルキン』が上演されます。
本作は『チャイメリカ』で一躍名を馳せることとなったイギリスの若き劇作家ルーシー・カークウッドによるもの。イギリス本国にて2020年1月下旬に初演され大きな話題を呼ぶも、コロナの猛威によるロックダウンのため2ヶ月ほどで上演が中止となりました。それでもなお高く評価されるこの戯曲が、この度日本初演を迎えます。
演出を担うのは劇作家、演出家として今注目を集める加藤拓也さん。自身も「劇団た組」を主宰し、20代作家として初めて「市川森一脚本賞」も受賞した彼は、今作が初めての翻訳戯曲への取り組みとなります。
物語の舞台は1759年の英国東部にある田舎町。殺人罪により絞首刑を言い渡された少女と、彼女の命を委ねられた12人の女性陪審員たちの会話によって、スリリングな推理劇が紡がれると同時に、時代が変われど今なお圧しかかる女性たちの苦難の歴史が描き出されます。
物語の発端となる殺人犯サリー役を演じるのは大原櫻子さん。サリーを取り巻く女性陪審員のうち、中心人物となりサリーを助けようと努力する助産婦エリザベス役は吉田羊さんが務めます。そのほかの陪審員役にはベテランチームに長谷川稀世さん、梅沢昌代さん、那須佐代子さん、峯村リエさん、明星真由美さん、西尾まりさん、若手チームには那須凜さん、豊田エリーさん、土井ケイトさん、富山えり子さん、恒松祐里さんといった、幅広く個性豊かな面々が名を連ねました。
今回、THEATER GIRLはサリー役の大原櫻子さんにインタビュー。前編では、出演への意気込みや、大原さんの中のサリー像などについて語っていただきました!
インタビュー後編はこちら
「すごい大作に挑むことになる」プレッシャーをバネに
――本作へ出演が決まった時の気持ちはいかがでしたか?
すごい大作に挑戦することになるなと感じました。日本では上演されたことのない作品で、お話をいただくまでは、この作品自体を知らなかったんです。最初に殺人犯の役だと聞いて、それから脚本を読んだのですが、 初めて殺人犯の役を演じることになるので、自分が演じたらどうなるかというのをシミュレーションしながら読んでいきました。
でも途中から、それができなくなるくらい、作品のテーマが濃くて、どんどん引き込まれていったんです。同時に、何度も読み込んでいかないと簡単には理解しきれない難しい戯曲だとも感じましたし、これはとんでもなく高い壁となる作品だと思いました。でも、逆に気持ち的には「よし、やってやろう!」と高まったところがありましたね。最初は怖さもありましたが、これだけの手ごわい作品に出演できることが、徐々に喜びに変わっていきました。
作品に感じる普遍的なまなざし「今を生きる私でも共感できる」
――作者のルーシー・カークウッドは『チャイメリカ』をはじめ、骨太でチャレンジングな作品を手がける戯曲家ですが、彼女の作品の主要人物に挑むにあたっての意気込みはいかがでしょうか?
この作品は、女性ならではの悩み、女性が持つ心の叫びだったりと、「女性」という存在そのものに焦点が絞られ、色濃く描き出されている作品だと思うんです。舞台となっているのは18世紀半ばですが、現代の世の中での女性の立ち位置や抱えている問題などについて「あぁ、昔からあることなんだな」というのをすごく感じました。この作品を今の時代に上演することで、昔はこうだったんだと感じるのではなくて、今を生きる私でも「こういうのあるよね」と共感できる題材だと思ったんです。
――本当にその通りだと思います。
だからこそ、この作品が上演された時に、現代の女性がどのように受け止めるんだろうって。共感できるところがかなりあると思います。ルーシー・カークウッド作品はどれもしっかりしたテーマが設定されていますが、この作品のテーマはより強烈に響いてきました。
見どころは、サリーのぶっ飛び具合と台詞劇ならではのやりとり
――今のお話とも関連してくるかと思うんですが、今作の見どころはどんなところにあると思いますか?
私が演じるサリーというのは、本当に本能に従って生きているような女の子なんです。そして、普通は人がしでかさないようなことを平気でやってしまう。それこそ、人の目の前で平気で用を足す、であったりとか。そういうぶっ飛んでいるサリーの行動や考え方が、まずは見どころかなと思います。
――それは確かになかなかのぶっ飛び具合ですね。
それから、これだけの素晴らしい女優さんたちと共演させていただける作品で、登場人物も少なくはない――その中で繰り広げられる台詞劇だというところですね。テンポ感や、台詞の繋ぎ渡しの激しさなどといった台詞術も、見どころになるんじゃないかなと思っています。