桜井日奈子インタビュー 『138億年未満』「また岡山に対する愛が深まりそう」(後編)
2024 年 11 月 23 日(土・祝)~12 月 8 日(日)まで東京・本多劇場にて、12 月12 日(木)~16 日(月)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて、ニッポン放送開局70周年記念公演『138億年未満』が上演されます。
福原充則氏の作・演出で『東京キャラバンin岡山』(2019年)にて上演された短編作品『小渕と韮沢』は、夢と現実の間で生々しくもがきながらも前へと踏み出そうとする人々の姿を描き、観る者に強烈な印象を残しました。この作品を、若者の希望と挫折、そして“故郷”をキーワードに、長編のオリジナル青春群像劇として福原自らが書き直し、新たに誕生したのが『138億年未満』です。
今作が初の外部舞台出演にして初単独主演となる作間龍斗さんが、主人公・小渕勲を演じ、小渕の通う高校の同級生であり、校内のアイドルだった韮沢カスミを桜井日奈子さんが演じます。
その他、若林時英さん、中野周平(蛙亭)さんなど、実力のある俳優陣が集結しました。
THEATER GIRLは、桜井日奈子さんにインタビュー。後編では、桜井さんの高校時代についてや東京に上京してからの思い、本作にちなみ学生時代の“青春ソング”などをお聞きしました。
高校時代は「バスケしかやっていなかった」
――高校2年生で芸能界デビューする前は、どんな高校生活を送っていたのでしょうか?
本当にバスケしかやっていなかったですね。うちは未だに父がミニバスのコーチをやっていますし。兄も弟もバスケをしていてバスケ一家だったので。日常の会話もずっとバスケのことでした。
周りの女の子たちがメイクやファッションに目覚めていく中、汗臭くなりながらバスケに夢中になっていた青春時代を過ごしていて。プリクラを撮ったり、女の子が楽しむような遊びをするのが周りよりもとにかく遅かったですね。
――韮沢カスミは校内のアイドル的存在ですが、桜井さんはどんなタイプの高校生でしたか?
私も含め、バスケ部は「男子に好かれようとする女子が嫌い」というような見栄を張っているタイプの子が多かったんです。 だから、男子からちょっと引かれるような突飛な行動をとってたりとか、女子同士でよくはしゃいでいました(笑)。
――先ほど台本を読んで「愛おしい」と仰っていましたが、やっぱり岡山愛は強い方ですか?
強いと思います。地元は育ててもらった場所でもあり、岡山出身だからこそ応援してくださる方もいると思うので。 今でこそあまり聞かなくなりましたが、「岡山の奇跡」というキャッチコピーで背中を押してもらったりもしていたので、岡山に対する感謝と恩があります。
――では、今回の作品は岡山の方にもたくさん観ていただきたいですね。
観ていただきたいですね。大阪公演もあるので、ぜひ新幹線や車で来ていただけたらうれしいです。
当時は不安の方が大きかった
――コメント動画で、当時「東京にワクワクしながらも環境の違いにしばらく怯えていた」とお話しされていましたが、やっぱり当時は両方の感情が入り混じった心境だったのでしょうか?
当時は本当に忙しくさせていただいていて、環境も目まぐるしく変わったタイミングだったんです。上京のタイミングで初めて舞台に出演させていただいたのですが、戦中戦後の話で、中原淳一さんというアーティストに憧れた女学生が、ひょんなことからストリッパーになるという、激動の人生を歩んだ女性の役を演じさせてもらって。初舞台でちょっと荷が重すぎる役ではありましたが、今となってはいい経験をさせてもらったなと思います。
ただ、両親はやっぱり勉強はしてほしいということで、大学受験をして入学したんです。そのタイミングで初めての一人暮らしをしたので、いろんな初めてに押しつぶされそうになって精神的にも不安定になってしまいました。そんな訳ないのに、街行く人に悪口を言われている気がしてしまったりして。期待3割、不安7割と、不安の方が大きかったかもしれないですね。
――現在見ている東京は、やっぱり景色が違いますか?
今はあまり怖いと思わなくなりましたね。もちろん東京も好きですが、地元の良さに気づいたというか。昔は東京の方が楽しいと思っていたけど、 周りの俳優さんも「東京は働く場所」と考えて、仕事がない期間は東京から離れる生活をしている方も多いので。
東京が嫌いなわけではないですが、やっぱり岡山に帰ると肩の力が抜けますし、東京にいると、知らないうちにすり減っていたんだなと感じます。今では岡山ののんびりとした雰囲気も好きになりましたし、出てみて初めて気づきましたね。
――まさに今回、岡山が舞台の作品で岡山弁で演じるというのは運命的なものがありますね。
そうですね。また岡山に対する愛が深まりそうですし。支えてもらった大好きな地元のことをみんなに知ってもらういい機会にもなると思うので、楽しい舞台にしたいなと思います。
――先ほど、デビュー後の舞台出演で苦労されたというお話がありましたが、現在は、舞台のどんなところに魅力を感じていらっしゃいますか?
初舞台の時は今までお芝居をしたことがなかったので、すごくプレッシャーがありました。何より演出家さんがそういうプレッシャーや責任を背負ってくれていたように感じます。愛情深く、カンパニーの中でも人一倍目をかけてもらっていたと思うので。当時は、本当に精一杯だったので、楽しいというよりはやりきったという感覚でした。
そこから年に一度くらいのペースで舞台に立たせてもらっていますが、今でも緊張します。去年は朗読劇をやらせていただいたのですが、本番直前まで「出なければよかった」と思うくらい毎公演緊張するんです。ただ、みんなで長いこと稽古をして一つの作品に向き合って本番を迎えると、毎回違うんですよね。それぞれのコンディションなのかお客様によるのか様々ですが、舞台っていろいろな条件で毎公演変わってくるので、そこが面白いなと思います。一つの台本に長いこと向き合っていく中でも気づきが無限にあって、その作業に終わりがないところも楽しいところだと思います。
特に上の世代の方に刺さる作品になっているのでは
――本作は青春群像劇となっていますが、特にどんな方にご覧になっていただきたいですか?
私も「あの頃は良かったな」と、高校時代の思い出の尊さを感じることが年々増えているので、世代が上になればなるほど、青春時代に思い描いていた自分とそうではない自分の折り合いのつけ方というか。それすらもちょっと愛おしく思えてくるのではと思います。どの世代の方にも楽しく観ていただけると思いますが、特に上の世代の方に刺さる作品になっていると思いますね。
――本作にちなみまして、桜井さんの学生時代の“青春ソング”を教えてください。
多分、back numberを好きになったのが高1の頃だったと思うんです。 学園物のドラマの主題歌だった『青い春』という曲をきっかけに好きになったのですが、いまだに大好きです。今もずっと活躍されているので、いろいろ聴いていても、結局back numberに戻ってきちゃいます。
――では最後に本作を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。
酸っぱめの青春群像劇で、ものすごい会話劇になると思います。会話劇はまだ挑戦したことがないので不安と期待が入り混じっていますが、必ず面白い作品になると感じています。
本自体がとても面白いですし、私たち出演者も一つになってお客様を楽しませられるよう、みんなで一生懸命作っていきます。私としては、やっぱりダンスと岡山弁の二つが特に楽しみなので、私たちと一緒に青春してくださいという思いで頑張ります。
取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:野村雄治
ヘアメイク=Hitomi(Chrysanthemum)
スタイリング=阿井真理
トップス ¥110000(税込)
ボトムス ¥99000(税込)
SHIROMA 080-3901-9195
公演概要
ニッポン放送開局70周年記念公演『138億年未満』
作・演出: 福原充則
出演:
作間龍斗 桜井日奈子 若林時英 中野周平(蛙亭)
倉沢杏菜 菊池銀河 井上向日葵 相原未来 永島敬三 山口航太
【東京公演】
2024年11月23日(土・祝)~12月8日(日)
本多劇場
【大阪公演】
2024年12月12日(木)~16日(月)
サンケイホールブリーゼ
公式サイト: https://event.1242.com/events/lt138by/
公式X(旧Twitter) :@lt138by
製作 ニッポン放送 プラグマックス&エンタテインメント ノックス