三浦宏規インタビュー 『アイ・ラブ・坊っちゃん』 「パワーがあり愛されるキャラクターを作っていきたい」(後編)
2026年5月1日(金)より東京・明治座を皮切りに、ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』が上演されます。
本作は1992年に音楽座ミュージカルで初演され、紀伊國屋演劇賞・団体賞や読売演劇大賞優秀作品賞などを受賞、「日本のオリジナルミュージカルの到達点」と評された傑作。
苦悩の底にあった夏目漱石が小説『坊っちゃん』の執筆を通して自己を回復していく姿と、それを受け止める妻・鏡子。史実とフィクションを織り交ぜ、漱石の日常と小説世界がシンクロする巧みなオリジナルストーリーと演出が高い評価を受けた本作が、東宝製作により上演されます。
演出を務めるのは、多彩な作品で観客を魅了しているG2さん。出演は、ミュージカル『エリザベート』、そしてミュージカル『ダディ・ロング・レッグス』、舞台『大地の子』と精力的に活動する演劇界トップランナーの1人、井上芳雄さんが主人公の夏目漱石を務め、劇中の坊っちゃん役を、ミュージカル『ジェイミー』、ミュージカル『のだめカンタービレ』シンフォニックコンサート!、『デスノート THE MUSICAL』と大作・話題作で舞台をけん引している三浦宏規さんが務めます。
また、坊っちゃんの親友 山嵐役に小林唯さん、漱石の兄嫁である登世役を彩みちるさんが演じ、坊っちゃんが赴任した学校の教頭・赤シャツを松尾貴史さん、坊っちゃんを支える清役を春風ひとみさん、そして、音楽座ミュージカルで数々の主演を務めた土居裕子さんが、初演と同じ漱石の妻・鏡子役で出演します。
THEATER GIRLは、坊っちゃん役の三浦宏規さんにインタビュー。後編では、本作の楽曲の魅力や和物作品ならではの新鮮な挑戦、さらに身体表現へのこだわりや大切にしている思いについてもお話をうかがいました。
幕開けの最初の一曲がとても印象的
――本作の楽曲についての印象はいかがでしょうか。
どの楽曲も素敵なのですが、特に幕開けの最初の一曲がとても印象的で、頭から離れません。いわゆる“ザ・ミュージカル”という華やかさがありながら、日本の物語にブロードウェイ的なアレンジが融合していて、そのバランスがとても魅力的だと感じています。
歌と物語との配分も絶妙で、「傑作と呼ばれるミュージカルとはこういうものか」と、日々実感しながら稽古に臨んでいます。

――三浦さんは、和物作品への出演は珍しいですよね?
そうですね。自分にとってはほぼ初めてに近い挑戦なので、とても新鮮に感じています。
――演じるにあたって、特に新鮮だと感じていることはありますか?
稽古場での準備段階からすでに新鮮でした。これまで浴衣や袴を自分で用意したことがなかったので、どうしようかと思っていたんです。事前に確認はしていたのですが、いざ稽古場に入ると、芳雄さんや土居(裕子)さんがしっかり和装でいらっしゃっていて、それを見て少し焦りました。
そこからスタッフの方々と相談しながら、どんな浴衣や袴がいいかを一緒に選んで。みんなで意見を出し合いながらトータルでコーディネートしていただき、用意しました。
――まさに“坊っちゃん”の装いになっていくのですね。
着付けも含めて新しく学ぶことが多かったです。そうした部分も含めて楽しみながら取り組んでいます。

坊っちゃんのように“まっすぐな人”とは……!?
――本作にちなんで、坊っちゃんのように“まっすぐな人”は身近にいらっしゃいますか?
裏表がないという意味では、自分かもしれません。本当に坊っちゃんと似ていると感じるんです。曲がったことが大嫌いとか、まったく嘘をつかないとまでは言いませんが、基本的に裏表はないと思っているので。
忖度せず、自分の信念を大事にするタイプですし、間違えたと思ったらすぐに謝るところも共感できる部分ですね。
――やはりご自身と重なる部分があるのですね。
そうですね。坊っちゃんはとても素直で気持ちのいい人物で自分もそうありたいですし、とても感情移入しやすいキャラクターだと思います。
――これまで演じてきた役柄と比べても近い存在なのでしょうか?
かなり近いと思います。これまでは海外作品や現実離れした設定の役を演じることが多く、日本の物語の中で“日本男児”のような役を演じる機会はあまりありませんでした。今回は、自分にとって新鮮且つ、やりがいのある挑戦になっていると思います。

新しい挑戦として楽しんでいます
――三浦さんといえば、ダンスなどの表現も魅力的ですが、本作での身体表現についてはいかがでしょうか。
今回ダンスナンバーはあるのですが、実は下駄を履いたまま踊るんです。これがなかなか大変で、稽古の段階からずっと履いて慣れるようにしています。普段のダンスとはまったく感覚が違うので難しさはありますが、新しい挑戦として楽しんでいます。
今では下駄っていいなと思うようになって、役者さんの中には普段から履いている方もいると聞きますが、その気持ちが分かる気がしました。
――ダンスなどの表現をするうえで、大切にされていることはありますか?
自分自身が納得できるかどうかを大切にしています。もちろん、演出の意図や技術的なことを大切にするのを前提として、それでも最終的には納得した形で舞台に立ちたいと思っています。
お客様が観に来てくださっている以上、プロとして納得できていないものをお見せするべきではないと思うので、自分の中でしっかりと納得した上で、責任を持ってお届けすることを常に意識しています。

――最後に、本作を楽しみにしている皆さまへメッセージをお願いします。
この作品には、「日本に生まれてよかった」と感じていただけるような魅力が詰まっていると思います。古き良き時代の空気の中で描かれる人々の愛情や、夏目漱石という人物の成長も大きな見どころです。さまざまな葛藤を抱えながら進んでいく物語の中で、坊っちゃんという存在が芳雄さん演じる夏目漱石を励ませるような、そんな役としてしっかりと力を発揮できたらと思っています。
普段は自分がまわりの方に励まされてばかりですが、坊っちゃん役として皆さんに元気を届けられる、パワーがあって愛されるキャラクターを作っていきたいです。ぜひ劇場でご覧ください。

取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:遥南 碧
スタイリスト:小田 優士
ヘアメイク:AKi
公演概要

ミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』
<演出>
G2
音楽座ミュージカルオリジナルプロダクション
総指揮 相川レイ子
演出 ワームホールプロジェクト
脚本 横山由和・ワームホールプロジェクト
作曲・編曲 船山基紀
製作著作 ヒューマンデザイン
<キャスト>
漱石 井上芳雄
坊っちゃん 三浦宏規
山嵐 小林唯
登世 彩みちる
赤シャツ 松尾貴史
清 春風ひとみ
鏡子 土居裕子
林アキラ 山野靖博
伊藤かの子 今村洋一 大音智海 小熊綸 小原悠輝 管谷孝介 中野太一
長谷川暢 般若愛実 藤咲みどり 三浦優水香 山根海音 蘆川晶祥
鈴木弥人/涌澤昊生(Wキャスト) 植木紗菜/内 夢華(Wキャスト) 早川一矢(Swing)
(五十音順)
<公演期間>
2026年5月1日(金)~5月31日(日) 明治座
<ツアー公演>
2026年6月7日(日)~14日(日) 札幌文化芸術劇場 hitaru
2026年6月22日(月)~28日(日)SkyシアターMBS
<料金>(全席指定・税込)
平日 / 土日祝日・千穐楽
S席 16,000円 / 17,000円
A席 11,000円 / 12,000円
B席 5,000円 / 6,000円
製作:東宝
公式ホームページ:https://www.tohostage.com/botchan/
ストーリー

1906 年、39 歳の夏目漱石は教師を辞め、小説家として独立したいと願っていたが、家族を養う安定した生活のためにふんぎりがつかず、鬱々と日々を暮らしている。
妻の鏡子や幼い娘にイライラをぶつける毎日。妻の鏡子は漱石の癇癪をものともせず、明るく日々を送っているかのように見えたが、実際は心通じ合えぬ夫に言い知れぬ寂しさを深めていた。
ある日漱石は、訪ねてきた高浜虚子に新しい小説のプランを話す。タイトルは「坊っちゃん」。
江戸っ子で曲がったことが大嫌いな坊っちゃんは心に闇を抱えた漱石とは正反対のキャラクターだったが、漱石はいつしか坊っちゃんに自らを、結核で亡くなった親友の正岡子規を山嵐に重ね、自分では叶えられなかった冒険物語に筆と心を躍らせ、執筆に没頭する。
やがて漱石は登場人物たちに周囲の人間を重ね自らの闇に向き合い、時に飲み込まれそうになる漱石の筆は坊っちゃんに教え子の反抗や学校組織による理不尽な人事といった数々の試練を与えるが、坊っちゃんと山嵐はそれらを必死に乗り越えながら漱石を励まし続けるのだった。
なぜ生きるのか。苦しみ続ける漱石は、果たして「坊っちゃん」を書き上げることができるのか―。
