新納慎也インタビュー『ショウ・マスト・ゴー・オン』「今の世の中でこの作品を上演することは、とても意義のあること」(前編)
2022年11月7日(月)より福岡公演を皮切りに、京都、東京にて『ショウ・マスト・ゴー・オン』が上演されます。
本作は、三谷幸喜氏が主宰する劇団東京サンシャインボーイズで1991年に初演され、最後の上演(1994年)から28年の時を経て、 三谷幸喜自らが手がけたリニュ―アル版として上演されます。
出演は、鈴木京香さん、尾上松也さん、ウエンツ瑛士さん、シルビア・グラブさん、小林隆さん、新納慎也さん、今井朋彦さん、藤本隆宏さん、小澤雄太さん、峯村リエさん、秋元才加さん、井上小百合さん、中島亜梨沙さん、大野泰広さん、荻野清子さん、浅野和之さんと豪華キャストが集結しました。
THEATER GIRLは、小道具作りの七右衛門役の新納慎也さんにインタビュー。前編では、三谷作品で魅力に感じていることや「ショウ・マスト・ゴー・オン」と強く感じた当時のエピソードなど、たっぷりと語っていただきました。
日常の中でリアルに起こり得る笑いが上質で好きな部分
――NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に続いて三谷作品への参加になりますが、どんなところに面白さや魅力を感じられていますか。
出演者のいろんな事情が折り重なっていくシチュエーションコメディの面白さが、三谷作品を好きになったきっかけだったんです。ただ、三谷さんの作品も年々進化していて、最近の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、シチュエーションコメディから程遠いくらい毎週おぞましいけど癖になる面白さですよね。人の闇や黒い部分をこれでもかと見せつけられても、引きつけられる魅力があるなと感じました。
一昔前は三谷作品といえば、シチュエーションコメディだったのかもしれないですけど、以前出演させていただいた『日本の歴史』という舞台も、三谷さんの脳みその中を覗いてみたいくらい、キッチュで笑えるのにどこか怖くなるような作品だったんです。なので、ひとえに三谷作品とはどういうものかと聞かれると、すごく答えに困るんです。例えば、「鎌倉殿の13人」でも怖い話の中にも笑いの要素があったりしますよね。役者が一発芸のようなギャグで笑わせたりという笑いではなく、日常の中でリアルに起こり得る笑いが上質で好きな部分ですね。
――改めて『ショウ・マスト・ゴー・オン』という作品に出演されるお気持ちはいかがでしょうか。
この作品は、三谷さんが主宰していた劇団東京サンシャインボーイズで、30年以上前に上演されていて、今回28年ぶりに上演されるんです。演劇人である僕も、もちろん知っていましたし、演劇界では伝説の作品なんです。劇団東京サンシャインボーイズの代表作として必ず名前が上がるくらい有名ですし、その作品に出演させていただけることはとても光栄です。プレッシャーもありましたが、今の世の中でこの作品を上演することは、とても意義のあることだなと思いました。
小道具作りの七右衛門が真の主役!?
――今回演じられる役は、28年前に梶原善さんが演じられた小道具作りのレジェンドという役柄になりますが、三谷さんからは、役についてのお話やアドバイスのようなものはあったのでしょうか。
僕の役は一幕のラストに出てくるのですが、 読み合わせの時に、三谷さんが「皆さん、この小道具作りの七右衛門が、この作品の真の主役だと思ってください」とおっしゃられて。もちろん主役は鈴木京香さん演じる舞台監督の役なので、僕も含めて全員が「えー!」と言ったんですけど。それはもう三谷さんの冗談というか、僕へのいじりみたいなものなんです。だから、全然真の主役なんかではないんですよ(笑)。
あの時は「ショウ・マスト・ゴー・オン」だと思えなかった
――新納さんが「ショウ・マスト・ゴー・オン」と強く感じた、エピソードや思いを聞かせていただけますか。
とても難しいのですが、「ショウ・マスト・ゴー・オン」という言葉は、僕ら演劇界では昔から叩き込まれていて。例えば東日本大震災の時は、電力の問題などもあって舞台をやることが不謹慎なんじゃないかという空気が一瞬流れたんです。でも、東京はそこまで被害が大きくなかったので「こんな時こそエンターテインメントの力で、日本を元気づけなきゃいけない」「ショウ・マスト・ゴー・オンなんだ」ということで、すぐに舞台が再開したんですね。
その時はその言葉で僕らも鼓舞されたというか、舞台に立てる勇気を持てたんです。でも、このコロナ禍においては、震災の時のように「こんな時こそ」と考えようとは思いましたが、何よりも人を集めてはいけないと言われたことで、「ショウ・マスト・ゴー・オン」とは言えなかったですね。
「ショウ・マスト・ゴー・オン」だといくら僕らが言っても、「人を集めたら死人が出るんだよ」と言われてしまうと、舞台をやることで人が死んでしまうかもしれないという現実を叩きつけられて。 あの時はなかなか「ショウ・マスト・ゴー・オン」だと思えなかったのが正直なところです。
――世の中が少し落ち着いてきたことで「また 動き出そう」というお気持ちになっていったのでしょうか。
「よし、動き出そう」というよりも、最初は恐る恐るでした。今もですが、お客様に声を出さないでくださいとお願いしたり、少し前までは客席も1個飛ばしでしたし。「よし、再開だ。ショウ・マスト・ゴー・オンだ」という勢いよりも、恐る恐る、「どうか感染者が出ませんように」と祈るような気持ちで舞台を再開したような感じでした。
――少しずつではありますが、徐々に状況がよくなってきているとお感じですか?
舞台をやらせてもらえているので、当時に比べれば良い状況ではありますが、 相変わらず客席で声は出せないですし、初日から楽日まで全公演がまともにできる舞台の方が今も少ないくらいなので。僕らも稽古場で毎日のように抗原検査やPCR検査をして、稽古中もマスクをしていますし、元に戻ったと言うには、まだまだ程遠いと感じますね。
取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:加藤孝
ヘアメイク :田中エミ(Rapport81)
スタイリスト:津野真吾(impiger)
ジャケット¥49,800、パンツ¥30,800(ともにroom.13/Sian PR)、その他/スタイリスト私物
公演概要
「ショウ・マスト・ゴー・オン」
【福岡公演】
2022年11月 7日(月)~11月13日(日)
キャナルシティ劇場
【京都公演】
2022年11月17日(木)~11月20日(日)
京都劇場
【東京公演】
2022年11月25日(金)~12月27日(火)
世田谷パブリックシアター
【作•演出】 三谷幸喜
【出 演】 鈴木京香 尾上松也 ウエンツ瑛士 シルビア・グラブ 小林隆 新納慎也 今井朋彦 藤本隆宏小澤雄太 峯村リエ 秋元才加 井上小百合 中島亜梨沙 大野泰広 荻野清子 浅野和之
【企画•製作•お問合せ】 シス・カンパニー TEL:03-5423-5906 (営業時間 平日11:00~19:00)
シス・カンパニーHP・プロデュースページ:https://www.siscompany.com/showmust/