鈴木 福インタビュー ミュージカル『RENT』「今の僕にできるマークを精一杯ぶつけていきたい」(後編)
2026年10月15日(木)より東京・シアタークリエを皮切りに、ミュージカル『RENT』が上演されます。
本作は、1996年の初演以来、ブロードウェイで12年4か月のロングラン、さらに世界40か国以上で各国語版の上演、そして、2006年には映画化もされ、日本のみならず、世界中で愛され続ける作品。
2008年に初演の幕を開け、2012年にはオリジナル版を手掛けたマイケル・グライフ氏による新演出版を上演し、RENTファンの熱烈な支持を受けました。以降も度々再演を重ね、今回は満を持しての8回目の上演となります。
『RENT』は、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』をベースに、舞台を20世紀末のニューヨーク、イースト・ヴィレッジに置き換え、当時の若者たちの生き様や世相を鮮烈に描いた作品。
『RENT』の主題である「No day but today」という言葉、「過去もない、未来もない。 今日という日を精一杯愛し、生きていく」という強いメッセージは、現在も色褪せることなく世界中で共感を呼ぶと共に歌い継がれています。
THEATER GIRLは、マーク役の鈴木 福さんにインタビュー。後編では、Wキャストならではの共演者との化学反応への期待や、大学卒業を控えたタイミングで本作に挑戦する思い、ミュージカルや舞台ならではの魅力についてお聞きしました。さらに、「Seasons of Love」の歌詞にちなんだ質問や、マークがカメラを回す役であることから「記録に残しておきたい瞬間」についても伺いました。
それぞれの役者さんによって違うものが生まれると思う
――今回、ロジャー、ジョアンヌなど、Wキャストによって変化もあると思います。他のキャストの方と声を重ねていく上で、楽しみにされていることはありますか?
シングルでやれるということは、Wキャストの方より単純に2倍できるということなので、それはすごく贅沢なことだなと思います。それぞれの役者さんによって絶対に違うものが生まれると思いますし、その中で、ぶらさないほうがいいところも見えてくるはずです。
これまで、周りがWキャストという経験はなかったので、すごく楽しみですね。その分、皆さんとコミュニケーションもたくさん取りながらやっていけたらと思っています。そこは得意分野なので(笑)。
――大学を卒業する直前のラストイヤーに『RENT』に挑戦するというのは、記念碑的な意味もありそうですね。
そう言われてみれば、確かにそうですね。特に大学に入ってからは舞台に立つ機会をたくさんいただいて、オリジナル作品に出ることも多かった4年間でした。
今回『RENT』への出演が決まったとき、以前ご一緒した鴻上尚史さんから「ここまで来たか」と言っていただいて。その言葉や、この4年間の成長を思うと、確かに一つの区切りであり、次に進むための大事な瞬間なのかなとも思います。
ただ、卒業に向けてまだやるべきことも残っているので、どちらも大切にしながら全力でやるしかないというのが、今の気持ちですね。『RENT』が終わったら、テストシーズンと卒論提出が待っているので、それさえ乗り越えたら、ようやくフリーになれます(笑)。

表現の場としてこういう機会があることがとてもうれしい
――コメンテーターやMCなど、さまざまなお仕事をされている中で、ミュージカルならではの充実感はどんなものですか。
とにかく音楽が大好きなので、そういう環境に身を置ける日々がとても楽しいですし、ステージで歌って踊るお芝居も大好きです。お客さまが反応してくださるのも楽しいですし。
あと、僕は歌って踊るイメージがあまりないと言われるので、そういう意味では、期待値をいい意味で裏切りたいなと。エンターテイナーというものへの憧れはずっとあるので、表現の場としてこういう機会があることがとてもうれしいですし、楽しんでやれる場所だと感じています。
――映像と舞台でのお芝居の違いについては、どのように感じていますか?
日常や生活を切り取ってつなげてくれるのが映像で、演劇は、今目の前にあるものをお客さまに向けてちゃんと届ける、その場にしかないものが生まれるというのが大きな違いだと思っています。
お芝居をする上では、届ける対象が必ずしも一人ではないということを、意識しすぎないようにしながらも大事にしていることかもしれません。

――ストレートプレイとミュージカルで、表現の違いを感じることはありますか?
音楽の力ってすごいなと感じる瞬間が、ミュージカルにはたくさんあります。ストレートプレイは、自分と相手、周りとの間で何かを生み出す行為をずっと続けていく感じなのですが、ミュージカルは音楽が加わることで、そこで生まれているものとは別の場所に、ふっと連れていってくれる瞬間があって。
稽古の中で、気づかないうちにそういう状態になっていることがこれまでにもあったので、それがすごく面白いなと思います。
逆に言えば、感情を込めて歌うということは、ミュージカルを通じて得た大きな学びです。『カラフル』をやる前は、そこへの理解がなかったので。役として歌うということや、そこで得たものは、とても大きかったと感じています。
たくさんのことを感じて、そこから生まれるものを大事にしたい
――「Seasons of Love」の歌詞の中に「1年をどうやって計る?」という問いかけがありますが、鈴木さんだったら1年を何で数えますか?
難しいですね……感情という言葉にまとめたくはないのですが、“感じた数”が大事なのかなと思います。今この質問をもらって感じることも、きっと一つではなく、たくさんあって。どう返そうかと考える中で感じたことを言葉にすることも、この作品でこんなことを言っていたなと思い出すことも、これまでの人生で出会ってきたものを振り返ることもできる。
そうやって、さまざまな瞬間にたくさんのことを感じて、そこから生まれるものを大事にしていきたいなと思います。

――マークは劇中でカメラを回していますが、俳優として活動してきた中で、「この瞬間を記録に残しておきたかった」と思うことはありましたか?
僕の人生は、ホームビデオが必要ないくらい、テレビ番組やドラマ・映画のメイキングなどで記録が残っていて。必要なものは自分の心のカメラにそれなりに残っているので、ある程度は大丈夫かなという感覚があります。あの頃に戻りたいと思うタイプでもないので、割と満足できているほうかもしれないですね。
逆に、自分よりも誰かを記録したいという気持ちはあるかもしれません。弟が急成長期を迎えて、身長が僕に近くなってきたり、一番下の妹もまだ小さかったり。一緒にいられる時間が昔ほど多くはないからこそ、家族との瞬間が大事だなと感じています。
家族だけでなく、友達や周りの人たちも含めて、記憶って意外と曖昧になってしまうなと最近よく思うので、一瞬一瞬を大切にしていきたいですね。
――最後に、本作への意気込みをお聞かせください。
すでにチケットを取ってくださっている方も、興味を持ってくださっている方も、精一杯この『RENT』という作品に愛を持って向き合って、今の僕にできるマークを精一杯ぶつけていきたいと思っています。
すでにチケットを取ってくださっている方は、ぜひ期待して楽しみに待っていてください。これから取りたいと思っている方は、ぜひその期待を行動に起こしていただけたらと。精一杯準備していきますので、よろしくお願いします。

取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:加古伸弥
ミュージカル『RENT』がシアタークリエで開幕! マーク役 鈴木福らが作品に懸ける想いを語る。
公演概要
ミュージカル『RENT』
キャスト:
鈴木 福 (マーク)
木原瑠生/RIKU(THE RAMPAGE) (ロジャー)
Beverly/遥海 (ミミ)
石井一彰/加藤潤一(コリンズ)
坂口涼太郎/髙橋 颯(WATWING) (エンジェル)
KIMIKA/住田愛子(OVAL SISTEM) (モーリーン)
宮本美季/塚本 直 (ジョアンヌ)
秋沢健太朗 (ベニー)
COLINA (ミセス・ジェファーソン)
Miai (アレクシー)
小熊 綸 (ミセス・コーエン)
聖司朗 (スティーヴ)
田村凌大 (ゴードン)
吉岡悠歩 (ミスター・ジェファーソン)
KATSUHIRO(5IN) (スウィング)
※各役アルファベット順
スタッフ:
脚本・歌詞・音楽:ジョナサン・ラーソン
演出:マイケル・グライフ
日本版リステージ:アンディ・セニョールJr.
スケジュール:
2026年10月15日(木)→11月13日(金) 東京・シアタークリエ
2026年11月20日(金)~11月21日(土) 広島・呉信用金庫ホール
2026年11月26日(木)~11月29日(日) 福岡・博多座
2026年12月4日(金)~12月6日(日) 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
2026年12月11日(金)~12月14日(月) 大阪・skyシアターMBS
公式ホームページ:https://www.tohostage.com/rent2026/
