『阿呆浪士』出演 宮崎秋人さん特別インタビュー
A.B.C-Z・戸塚祥太には打ち合わせなしで仕かけにいく
――役どころとして、主人公・八を演じる戸塚祥太さんとのシーンが多いと思います。稽古を通してのチームワークはいかがですか?
すごくいいと思いますよ。役者同士でお芝居についてよく話し合ったりしてます。
戸塚くんに関しては、打ち合わせなしでぼくが仕かけにいっちゃったりもします(笑)。段取りはもちろんあったりするんですけど、1回は「できますよ」っていうのを提示したうえで、ぜんぜん違うことをやりたくなっちゃうんですよ。それに翻弄される戸塚くんを見るのが好きですね。
戸塚くんもよく声をかけてくれたりします。とくに用がないのに「しゅうと、しゅうとぉ」って言ってきたり(笑)。近い距離でいてくれているってことだと思うから嬉しいですけどね。
――仲のよさが伝わってきます(笑)。そのほか稽古中のエピソードがあれば教えてください。
エピソードって感じではないんですけど、小倉(久寛)さんがとにかく面白くて素敵ですね。こうセリフを読んでも成立しないだろって思うようなトーンで演じたりするんですよ。年齢的なこととかじゃなく、ほかの人は絶対マネできない感じ。松村さんとも、「あれ、ずるいな~……小倉さんって役者が1人いるだけでぜんぜん変わるよね」ってよく話してます。
ラサールさんとの信頼関係もあるから、「ここちょっと、なんかつないではけて」みたいなムチャぶりをされても、確実に爆笑とって去っていくとか。最初は「天然なのかな」って思っていたんですけど、稽古を見ているうちに「計算だわ」ってゾッとしました。テクニックあってのことだなって。
小倉さんって、いいことをポロッと言うだけですんなり入ってくる。長いセリフでも、なんか聞き入っちゃう魅力があるんですよ。「オレだったら、もっと一生懸命しゃべっちゃうけどな~」って思うシーンも、小倉さんはマイペースにこぼれるように演じる。きっと自分が歩む先の完成形にはない特別な方だし、本当に素晴らしい役者さんだなって思います。
演出家の言葉で覚醒「さらに上のOKをもらえるように」
――少しお話にも出ましたが、演出家は読売演劇大賞を受賞されているラサール石井さんです。印象に残っているようなことがあれば教えてください。
自分だけにおっしゃったことではないんですけど、「絶対にユーモアだけは忘れるな」って言葉ですかね。「ここは笑いがとれる」っていうトコに対してのセンサーみたいなものがすごく敏感な方で。「この人にこうやらせたら絶対面白い」っていうのが本当に的確なんですよ。
役者一人ひとりに合わせて言い回しを変えたり、笑いのとらせ方を変えたりもして。「え、それだけで変わるの?」って正直思っていても、実際やってみると一気に面白くなるんですよ。台本が頭に入っていても笑ってしまう演出。そのあたりは、本当にすごいと思いますね。
一方で、熱くなるシーンにも同じくらい力を入れる方ですね。「お笑いの面はOKだから、ソコもありつつもっと熱いところをつくっていこう」とおっしゃっていますから。もともと「熱い部分だけで芝居やってやろう」と自分なりにつくって稽古に臨んだんですけど、それを言われちゃったから「もっとやらなきゃ!」って気持ちになりました。役者の乗せ方が上手な方なんだと思います。
それからは同じことをやるだけじゃなくて、さらに上のOKをもらえるようにやり方を変えて試すようになりました。けっこう体力は必要ですけど、その分、ラサールさんも見てくださっているので、やりがいのある現場ではありますね。
――現場の濃密さを感じるお話ですね。では、本作の見どころを伺えますでしょうか?
大阪公演でキャストは変わりますけど、(玉川)奈々福さんの浪曲や三味線を生で聞けるところも見どころの1つだと思います。若い世代はなかなか見る機会もないでしょうし、節を聞いているだけで「オレ、この作品出てよかったな」と思えたりもするので。CDとかテレビでは伝わりようのない、日本人の血が騒ぐような部分を楽しんでほしいですね。
『阿呆浪士』はそこからはじまって、お祭りみたいにノリがよくて、テンポも速くて熱い作品。赤穂浪士を知らなくても、身をゆだねていただければ、きっと笑って最後はホロッと涙する舞台になっているので期待していてください。