末原拓馬インタビュー 劇団おぼんろ 第20回本公演『パダラマ・ジュグラマ』「世界に通用する演劇を作る」(後編)
2月13日(日)より劇団おぼんろの第20回本公演「パダラマ・ジュグラマ」がMixalive TOKYO Theater Mixaにて上演されます。
本作は、劇団おぼんろが株式会社ホリプロインターナショナル、株式会社講談社とタッグを組み、作・演出を末原拓馬さんが担当。”何もかもがうまくいかない世界”を舞台にした切なく美しい物語です。
今回THEATER GIRLがお話を伺ったのは、世界に通用する演劇・物語の創出を目指し、邁進する劇団主宰、劇作家・演出家の末原拓馬さん。後編では、今後劇団が目指す場所、 コロナ禍に作品を作るにあたり、以前と考え方が変化したことなどをうかがいました。
おぼんろという場所自体が、いろんな人の待ち合わせ場所になっていくことが重要
――今回おぼんろは「世界に通用する演劇」ということを掲げていますが、それ以外の面で今後劇団が目指しているものはありますか?
物語が常にいろんな人に届き、心を癒していくようにと考えています。それは、演劇界で成功するだけでなく、さまざまな形で僕らが伝えたことをまた他の人が自分の大切な人に伝えていくといった感じで、普遍的というか、日常の中に常にあるものを目指しています。
あとは、おぼんろという場所自体が、いろんな人の待ち合わせ場所になっていくことが重要だと思っているんです。何十年もやっていると、子供の頃に来ていた方が今は大人になっていたり、お爺さんやお婆さんになっていたり。僕らの人生も、みなさんの人生と共にあるので、そうやって出会った人たちがいつでも集合できる場所を作っていきたいと思っています。
――劇団おぼんろ自体が、人と人とのつながりを生む場所でありたいということなんですね。
何万~何十万人が1つの家族でいられることを諦めなくていいんじゃないかと思っています。おぼんろなら出来るんじゃないかと感じているので、そういう場所を目指したいですね。
――今後規模が広がったとしても、コミュニティとしての居場所を大事にされていきたいということなんですね。
そうですね。真ん中に物語があれば、そこに集うと人々は仲間になれる、そう思っています。
お芝居を観た感動は金銭ではかる必要はないのでは
――劇団おぼんろの公演では、さまざまなチケット価格が設定されていますが、それは幅広い世代やいろいろな方に観てもらいたいという気持ちからなのでしょうか?
もともと僕は路上で独り芝居をやっていて、その頃は本当に誰にも見てもらえないような時期だったんです。でも、力が付いてくると人が増えてきて、最初は「はい、10円」という感じだったのですが、100円、1,000円といただける金額が増えてきて。
一度、4~50人の方が観ている時に、1万円を入れてくださった叔母様がいて「1万円なんて、すごい!」と言ったら、そこにいた学生たちを指さして「この子たちの分だから」と仰って。その学生たちも感動はしてくれていたみたいで「ごめんなさい」と言いながら10円とか小銭を入れてくれていたんです。「いいよ、今のあなたにとっての精一杯の金額であるのはわかっているから」と思った時に、お芝居を観た感動って金銭ではかる必要がないんじゃないかという気持ちになったんです。
システム上チケット代を設定しなきゃいけないというのはあるんですけど。自分の作品に自信があるので、こっちで値段設定をしなくても、”お代は見てのお帰り”という言葉があるように、自分で決めていただいて構いませんよという気持ちはあります。
商品を見せる前にものを買わせるって、世の中ではなかなかないですから。路上からやってきた経験として、良いパフォーマンスにはそれ相応の値段がつくし、いいもの見せてお金をケチる人はいなかったというか。いいなと思ったら、僕らが設定した価格よりもいい値段をくれたり、「言い値」の日の方がたくさんの金額が集まることのほうが多い。
僕自身そういう文化が好きなのと、自分たちの戒めみたいな。僕たちがお金持ちになるというよりも次の公演が出来るための収入だからと思ってもらえるようなものを作り続けないといけないし。作品として上手くいかなかった時は、面白いくらいにがんと下がりますしね(笑)。
いただいたお金は次の公演の資金になります。また良い公演を創ってほしいと言っていただけるような活動を続けていかねばなりません。
――今後もこの投げ銭システムはずっと続けていかれるのでしょうか?
企業が入る時に「このシステムどうする?」と話し合ったこともありましたが、「ここはおぼんろのいいところだから、とっておこうよ」と言ってくださったので、それはすごく嬉しかったです。