矢田悠祐×上口耕平インタビュー　舞台「僕はまだ死んでない」「普段考えないことを考える機会になっていたら、すごく嬉しいです」（後編）

2022.02.16

INTERVIEW

――では、本作の内容にかけまして過去にあの時こうしておけば良かったと、今後悔しているエピソードはありますか？

上口：そんなのいっぱいありますよ（笑）。僕は「こうしておけば……」という考えが出た瞬間に、それを否定する癖があるんです。後悔ほどではないけど、後悔っていう言葉を遠ざける癖があるので、その瞬間は「しまった！」と思っても、後から考えると「あの時こうだったからこういう出会いがあったんだ」となりますね。

「あの時家にある小銭持ってくれば良かった」みたいな、そういうちっちゃなことはあると思うんですけど、人生でこれは！　みたいなことは、考えてもすぐ出てこないってことは、あんまり後悔していることはないのかなぁ。どう？　矢田くんは、ある？

矢田：僕は、普通の高校から通信の高校に編入したので、途中からあまり高校に通ってないんですよ。当時アパレル関係の仕事か美容師になりたかったので、早く大人になりたくて。大人ばかりがいる古着屋で働いたりしていました。今思うと高校時代なんて一回しかないのに、3年間くらい通えば良かったなと思いますね。

それはそれで、人がしていないことをたくさんしてきて、いい体験になったなとも思うんですけど。普通に通っていたらどうなっていたかなと思うところはありますね。その時は金髪にしていたりして、自由でいいなと思っていたんですけど、今思えばそんなちっぽけなことで辞めずに高校に行けばよかったなと思いますね。

上口：あ、僕も、そういうことで言うと、大学の時にサークルに入らなかったんですよ。今思うと、その時はちょっと突っ張ってる部分があって。どうせみんなでなかよしこよしの会でしょ？　みたいな（笑）。僕はすごくダンスが好きだったので、ダンスサークルを斜めに見ちゃってたんですよね。でも今思えば絶対楽しかったと思うので、入っていれば良かったかなとは思いますね。

――それでは、最後に本作への意気込みとファンの方へメッセージをお願いします。

矢田：終末医療を扱うお話なので、僕も初見であらすじを見た時は、重たくてすごくリアルなピリピリした作品なのかと思っていたんですけど、蓋を開けてみると意外とそんなこともなくて。コメディーチックな掛け合いの部分もあったり、情景の表現としての面白さだったりという部分もたくさんあります。

今はまだ稽古の段階ですが、ウォーリーさんが作ってくださったシーンとシーンの繋がりを舞台上でやってみるとすごく幻想的で。映像でやる時とは違う、舞台ならではの表現になっていると思います。なので、そんなに重たく考えずに観ていただいて、面白い部分もあるし、なおかつ普段触れないようなことにも触れられると思いますので。

自分で言うのもなんなんですが、すごくいい舞台になるんじゃないかなと思っています。今は情勢がこんな感じですが、ぜひ劇場に来て生で観てもらいたい作品です。よろしくお願いします。

上口：作品の内容に関しては、きっと見てくださった方それぞれの考えや思いが浮かんで、それぞれの感想を持たれると思います。普段考える機会が少ないテーマだとは思うので、それぞれいろんな考えがあっていいと思いますし。普段考えないことを考える機会になっていたら、演劇を通じてそういうメッセージを届ける意味があると思うので、すごく嬉しいです。

今回は、矢田くんと僕が日々交互に役をやることで、舞台上で発見といいますか、公演を重ねる毎にいろんな部分が進化していくと思うんです。今稽古では同じシーンをやっていますけど、日々新鮮で未だかつて同じことってゼロなんですよね。

テーマも台詞も同じだし、芯の部分は一つなんですけど、毎回感じるものが違うんです。少人数での会話劇だからこその化学反応みたいな、奇跡みたいな瞬間がいっぱいあるので。こういう演劇の形を変化という意味でも、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。そして、劇場で僕たちの生の呼吸を感じていただいて、一緒にその時間を共有できたらと思っています。