ウォーリー木下インタビュー 舞台「僕はまだ死んでない」「常に刺激のあることをしていたい」(前編)
――矢田さんと上口さんが直人と碧をそれぞれダブルキャストで演じていくというのは、意図があってと言いますか、あえてそのような演出にされたのでしょうか?
最初は違っていたんですけど、役者さんをキャスティングしたときに、直人役の人は、 寝ているだけは辛いだろうと。それで2役やってもらうことで、その解消になるかなと。ただ、実際に2役でやると決まった後に、いろいろと考えて、2人がやることを前提とした台本にちょっと書き直してもらいました。
まさにさっき言ったように、「なんで僕じゃなかったんだ」 だったり、「なんで俺なんだ」みたいなセリフがあったりするので。病気やケガをするとなぜ自分なのか理由を探してしまいますよね。この構造が、まさに物語の中核を担ったということですかね。
――VR版では、観客が主人公の目線になる感覚でしたが、舞台版では実際に直人が寝ているところを観客が観るような形になるのでしょうか?
そのとおりです。舞台版だと、お父さんだったりお医者さんだったり奥さんだったり友達だったりと、群像劇になっているので、観ている人はもしかしたら直人以外の人にも自分を投影しながら体感するようなものになるのかなと思います。
――VR版だと直人だけに感情移入する感じだったのが、舞台版だといろんな登場人物に感情移入できる感じになっているんですね。今、稽古中とのことですがVR版のときと異なる点や舞台版として新たに取り組んでいることはありますか?
全然違いますね。今もまだ続いていますが、VR版は コロナ禍でとにかく稽古場に人が集まる時間を減らして、撮影もなるべくコンパクトに短い時間でやろうと。それでも演劇を作ろうという信念でやっていたんですけど。今回は完全に今まで通りとは行きませんが、いつもの演劇に近い形で稽古をして、役者さんたちが自分たちで立ち上げながら、作品の意味を掘っていくという作業をしているので、そこは全然違うかもしれないですね。