舞台『積チノカベ』出演キャスト特別インタビュー

INTERVIEW

劇団アレン座(Allen suwaru)の第3回本公演となる舞台『積チノカベ』が、7月4日から7日まで福岡・北九州芸術劇場 小劇場、7月11日から14日まで東京・すみだパークスタジオ倉で上演されます。

稽古開始を間近に控えた6月初旬、THEATER GIRL編集部が主演の小林亮太さん、そして劇団アレン座から來河侑希さん、栗田学武さん、普光院貴之さんに、それぞれが演じる役の見どころや、お互いの印象などについてお話をうかがってきました。お互いの印象や、作品の見どころについて語ってくれた、4人の賑やかなクロストークも必見です。

劇団アレン座第3回本公演 舞台『積チノカベ』

−何も知らない私たちは、ただ世界を無視し続けていた

樹は学校帰りに友達と廃ビルを漁るのが日課だった。

そこで毎日他愛ない話をしていた。

今日の授業の話、学校の先生の話、ニュースの話、数値の話、地下の話。

帰ってくるとお母さんに携帯端末の使いすぎを怒られる。

SNSで色々な人の投稿を適当に眺める。

庭でとれた野菜でご飯を食べる。

お母さんはいつも二つの鍋を使う。

夜には星を見る。

たくさんの星を見る。

そうして眠りにつく。

朝起きて、数値を計ることから1日が始まる。

そんな日常。

それが日常。

彼らの日常。

私たちの日常。

作・演出/鈴木茉美

出演/小林亮太、石川翔、田中美麗、來河侑希(劇団アレン座)、栗田学武(劇団アレン座)、普光院貴之(劇団アレン座)、西本銀二郎、宮﨑優、妃乃ゆりあ、鷲尾英彰、小林麻子、近童弐吉、磯野大(映像出演)、しゅはまはるみ(映像出演)、【特別出演】樹崎聖(漫画元気発動計画Domix主宰)(声の出演)

小林亮太さん

Q. ご自身の役の見どころは?

今回の役は“普通の男の子”というのが一番しっくりくる気がしています。僕はこれまでこういう役をあまり演じたことがないので、面白く演じれたらいいなという気持ちはあります。

キャストの多い作品でそれぞれキャラクターもちがいますし、感情移入できる役やポイントは人それぞれだと思うので、実際に観に来ていただいて感じ取ってもらえたらと思います。

同じ男子高校生役ではあるんですが、前回演じた「ヒロステ」(=「僕のヒーローアカデミア」The “Ultra” Stage)の爆豪勝己とは全くちがって、今回はナチュラルに近い、どこかにいそうな人物像なので、若さゆえの思いや生き方、それに気付いていくさまが見えるお芝居ができたらと思っています。

Q. 初の主演作になりますが、意気込みは?

変に気負うことなく向き合えている気がします。「ヒロステ」では主人公のライバル役として、主演の田村 心くんといろいろ相談しながらやるという経験ができたので、それを生かせたらと思いますね。充実した稽古、良い作品にしたいのはもちろんですが、年齢層もさまざまな共演者のみなさんが、自分の意見をきちんと持ちつつ高め合っていけたら、きっと面白い作品にできるんじゃないかなと思っています。

Q. 作品のキーワードとなりそうな“日常”という言葉にちなんで、あなたの日常に欠かせないものは?

なんだろう……好きなものを食べることですかね。ハンバーガーが一番好きと公言しているんですが「イヤなことなんかも全部いっしょに食べちゃえ!」って感じで気分転換にもなってます(笑)。チェーン店のものからカフェのものまで、ハンバーガーなら全部好きで、だいたい週一では食べてますね。それから、新しい現場や普段行かない場所に行く時には、事前にその辺りのおいしいご飯屋さんを調べてから行くんです。今日もおいしい中華を食べてきました!(笑顔)

來河侑希さん

Q. ご自身の役の見どころは?

今回の話は土の上と土の下、2つの場所に別れて住むことになった世界の話なんですが。僕が演じるのは、土の下に住みながら、ひとつの思いを抱えて生きている人間の役です。自然な会話劇をやるのは久々ですし、自分と年齢も近くて思想も近い役柄を演じるにあたって、その役になるためにどう変化を起こすか……「來河侑希なんだけど、來河侑希に見えなかったね」って思ってもらえるような芝居ができたらと思います。あと、個人としては芝居で作品に憑依するような演技にも挑戦してみたいです。

Q. あなたの日常に欠かせないものは?

映画か演劇か、何かを観ていないと、ちょっと枯れるような感覚になります。常にインプットしていたいというか。あとはお酒。これを飲まないと一日が終われないところがあります。この2つがないと僕はダメですね、生活が荒れます(笑)。映画はフィクションに限らず、ドキュメンタリーでもいいんですけど、ヨーロッパや東南アジアの作品など、マニアックなものをよく観ます。これまでに観た本数は……もう相当な数なんじゃないですかね(笑)。

栗田学武さん

Q. ご自身の役の見どころは?

今回、Allen suwaruの本公演は3回目になるんですが、本公演に関してはエンターテインメント性がほぼないような舞台を毎回やっているんです。何をエンターテインメントと捉えるかにもよるかとは思うんですが、笑いやワクワク感のあるようなストーリーではないかなと。今作で僕の演じる役は、そんな中での笑いの役といいますか、空気を明るく気持ちをラクにさせるようなところがあるなと思います。それと同時に人間として伝えたい思いも抱えているので、そんなところも見ていただけたら嬉しいです。ぜひ細かい会話や、微妙な表情の変化に注目してください。

Q. あなたの日常に欠かせないものは?

ぱっと思いついたところだと、甘いものです。僕、気が付いたらご飯を食べていないことが多いんですけど(苦笑)、何かしらの甘いものを常に摂取してるんですよ。だからご飯を食べないのかもしれないんですけど。ありがたいことに舞台があるたびに甘いものをたくさん差し入れていただいて、それが事務所に集められているので、ほぼ僕がいただいております。賞味期限が早いものがあると、その時期だけちょっと太るんですけどね(笑)。

普光院貴之さん

Q. ご自身の役の見どころは?

僕の役は作中ずっと出ているわけではないんですが、物語のキーとなるような、かなり印象に残る役なんです。主演の小林亮太くんとのシーンも結構あるので、一言でいうならおいしい役どころなのかなと(笑)。舞台に取り組むたびのことではありますが、今回もまた新しい座組みで、新しいキャストさんたちと芝居ができるということにワクワクしてます。それから、詳しくは言えませんが、観劇後にキャストのビジュアルをもう一度眺めてもらえると、「なるほど」と思えたり、救われる感があったりするかもしれません。そこもどうぞお楽しみに。

Q. あなたの日常に欠かせないものは?

何でしょうね。最近だとコーヒーかな。コーヒーを飲んで「はぁ……」と一息つく時間が欠かせないかもしれないです。甘党なので、ミルクも入れるし、ガムシロも2個くらい入れちゃうタイプです。 基本的に飲む時にはアイスカフェラテなんですけど。でも、朝には頭を起こしてスッキリさせたいので、苦めなのを飲むことが多くて、昼過ぎくらいになったらカフェラテにする感じです。

「お互いの印象は?」笑いと本音のクロストーク

栗田:今回、亮太くんはAllen suwaruの舞台が初ということで。僕ら3人と、脚本・演出の(鈴木)茉美さんには実際に会っているわけですが、どういう印象を持ちましたか? 会う前の印象と、会ってからの印象の変化なんかでもOKです。

小林:みなさん、会う前に想像していた印象とかなりちがうなと思ったので、うまく言葉にまとまらないというか、情報の整理がついていないというか……。

栗田:じゃあ、誰が一番好き?

來河:その質問が無理があるだろ! っていうか、俺だろ、俺。

小林:あはは!

栗田:一番最初に会ったのは來河さんだもんね。

小林:ですね、新宿でお会いしました。でも本当にみなさん、イメージしていたよりフランクというか、優しい方たちだなと感じました。それにぶっ飛んでるなって。

來河:ぶっ飛んでる(笑)。

栗田:そうかぁ……最近、俺自分で思うねんけど、初対面の人の心に土足で踏み込みすぎやなって。プライベートではそんなことないんだけど、ちょっとお仕事モードになるとそうなっちゃう(苦笑)。

普光院:それは反省して!(笑)

小林:いやいや、最初から話しかけてきてくださって、嬉しかったですよ。普光院さんはビジュアル撮影の時に、森の中でいろいろ舞い降りてきてるイメージ……。

普光院:え、舞い降りてるイメージって何? 俺、その話知らない。

來河:貴之と亮太くんは、ビジュアル撮りの時に森での撮影があったでしょ。で、亮太くんが撮影している時、ちょうどその目線の先に貴之がいて、メイクする時の髪留めを前髪につけたまま、ずーっとこう、顔をマッサージしてて。それも、あの森の原住民みたいな衣装で。

栗田:舞い降りてるって、原住民のこと!?(大笑)

小林:撮影中だし、どういう顔してたらいいんだろうなって思ってました。

普光院:ちょっと、言ってよ! 

來河:亮太くんには今から謝っておくけど、もう本当にポンコツ揃いなんですよ。

栗田:確かに。Allen suwaruはいろんなところが欠如した人の集まり。

小林:いやいやいや……僕だって全然、欠如してるところはいっぱいありますから!

普光院:例えば自分の欠如してるところってどこだと思う?

小林:(しばし考えて)優柔不断。ご飯に行った時のメニューとか、すごく迷います。友達が「これにしたら?」って言ってくれたりするんですけど、そこは自分で選びたい……(笑)。

栗田:じゃあ今度は、僕らから見た亮太くんの印象の話を。ちなみに、お客さんからはどう見られてるの?

小林:それが分からないんですよ。普段はこういうフランクな感じなんですけど、前作の「ヒロステ」では爆豪としてけっこう怒ってるわけで。この時から僕を知ってくれたお客さんから見たら「あの子、どういう性格してるのかしら?」って思われてるんじゃないかなって……。

一同:(笑)

小林:だから、今回の「積チノカベ」もみなさんに観ていただいて、アフタートークもあったりしますし、それで改めて「こういう人なんだ」って思ってもらえたら。

栗田:「怒ってるばっかりじゃないんだな」って(笑)。

來河:僕は、亮太くんは繊細な人っていうイメージを持ってる。ガラスのように繊細で、顔がきれい。あと、語り口から光と闇をすごく感じる。

小林:ないですないです、闇なんてないですからね!(ニッコリ)

栗田:いやね、悪い意味じゃないんだよ。役者としての闇って。

來河:話していて、奥行きを感じるっていうのかな。20歳でこんなに奥行きがある人はあんまり見たことがないから、亮太くんが何を考えているのか、今のところあんまり分からない。

小林:うーん……初対面の方には26歳って言われたりします。

來河:そうだね。見た目は20歳なんだけどね。

栗田:俺は初めて直接会った時のオーラがすごくてびっくりした。事前に写真も観てたし「ヒロステ」も観に行ってたんだけど、いざ顔を合わせてみたら、パッとした華があるなと思って。

來河:でも、明るいだけじゃないんだよね。ものすごく光と影があって、多面性を感じる。

栗田:そうそう! 僕らは台本で亮太くんの演じる役を知っているわけですけど、それをどうやって表現してくれるのか、今からとても楽しみで。

小林: 僕自身は一人っ子なんですけど、劇中では妹がいる設定だったりもして。お芝居には、顔を合わせて稽古をして、時間を共にしていく中で生まれてくるものもたくさんある気がするので、それを大切にしたいなと思っています。

普光院:僕はこれまでの話し方なんかから受ける印象としては……可憐? 気高いというか、儚い? 美しい? なんとなくそういう、花っぽいイメージがあります。

來河:そうなんや。今はそんな感じだけど、1ヶ月も稽古場に通って、いっしょに飯を食えば……。

栗田:優柔不断なところもきっと見えてくるし(笑)。

普光院:そうだね。僕は役柄的に亮太くんといっしょのシーンが多いんじゃないかなと思うので、どんな感じなのか楽しみにしてます。

栗田:ちょっと話は変わるんですけど、今回、実は舞台の形が特殊なんですよ。客席がコの字型になっていて、両サイドからも見ていただけるという。

來河:そういう劇場で演ったことはある?

小林:初めてです。座席によっていろんな角度から観られるから、同じシーンでも時にはある人の背中が見えたり、時には顔が見えたりして、何度か足を運んでもらっても楽しんでもらえるんじゃないかなと。そういうところが演出でどうなっていくのかが、すごく楽しみです。

栗田:僕らは対面客席やコの字型の客席での舞台は何度かやったことがあるんですけど、すごく難しいようでいて、実は自由だなって思うところもあるんですよ。

來河:見せ方は確かに難しくなるね。特に演出家はすごく悩む。

栗田:前回の本公演の「空行」は対面客席で、両サイドからお客さんが観ているから、2人の人物が向かい合って会話をすると、2人ともが客席に背中を見せることになってしまう。だから、逆を向いてやったりという演出があったんですよ。今回はコの字型で三方向に客席があるから、どうしても誰かは背中を向けることになるわけだし、そういう意味では舞台の上という空間に居やすい気がするなって。

來河:たしかにコの字は楽しみだね。舞台美術もヤバいから、お客さんにも楽しみにしててほしいな。

普光院:ストーリーの面でも、あらすじを見るとなんとなく「日常の話なんだろうな」って感じはしつつも、作品の内容にはあまり触れられていないから「いったいどんな作品なんだろう?」っていうのが、みなさんの正直な気持ちだと思うんですよ。

來河:日常といっても「数値を計るところから始まる」だし、近しさはありつつも、微妙にぐっとズレているという感覚があるあらすじだよね。

普光院:この前ラジオに出演させていただいた時に「物語上で起こるいろいろなことを経験して成長していく一人の少年、その姿を通して伝えたいものがある」と茉美さんが言っていて。今回初座長の亮太くんがどんな座組みを作っていくのかが楽しみですし、この作品自体が亮太くんというフィルターを通して伝わっていくものになるだろうなと思います。

來河:この作品の主人公は、僕の中では“ザ・主人公”なんですよ。物語の中で成長していって、その姿を見て周りが変わっていく……それってめちゃくちゃ王道の主人公だと思うんです。普通の少年なんだけど、そういったプロセスを持っている役なので、そういった意味では「作品=小林亮太」になっていく空気はかなりある気がしています。それから、今作を作るにあたって出会ってきた方々、その人たちの思いはちゃんともらいながら、生かしていけたらと思っています。

小林:ある事故から20年後というところから話が始まるんですが、僕が今ちょうど20歳で。実際に自分が生まれた頃の話はよく知らないし、「平成を振り返る」みたいな番組で初めて知ったことがたくさんあったんです。そういう身を以て味わった感覚がお芝居に結びついていったらいいなと思います。それに、今回20歳で初めて主演をやらせていただくこともそうですし、僕がこの作品に参加することでまた新たな色が加わって、ほかのキャストのみなさんと触れ合っていく中で何かが生み出せたらいいなって。観た人が前向きになれたり、明日からのものの見方が変わったりする、そういう作品を届けたいなと思います。

栗田:そう、気付きになる作品になるかなって気はするよね。ではそろそろまとめに……。

普光院:今回、アレン座としては初の北九州への進出もあって、本公演を地方でやるっていうのは初めてなんです。なんで、僕は個人的に、みんなでおいしいものを食べたい!

栗田:そこかい!(笑)

和気藹々とした賑やかな座談会で、愉快な印象トークから、真面目なお芝居の話まで聞かせてくれた4名のキャストのみなさん。さらに個性豊かなメンバーが加わった座組みで、どんな物語を紡いで見せてくれるのでしょうか。期待が高まりますね。

取材・文:古原孝子
編集:桑原梨沙(THEATER GIRL編集部)
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)
ヘアメイク:YUZUKI合同会社

劇団アレン座第3回本公演 舞台『積チノカベ』

北九州芸術劇場 小劇場
2019年7月4日(木)~7月7日(日)
すみだパークスタジオ倉
2019年7月11日(木)~7月14日(日)
公式サイト:http://allen-co.com/the-wall/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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