愛希れいかインタビュー ミュージカル『マリー・キュリー』 「好きな仕事に就いている自分も、科学オタクのマリーと同じ」(前編)
2023年3月13日より、東京・天王洲 銀河劇場にてミュージカル『マリー・キュリー』が開幕します。
2018年に韓国で初演され、2021年の韓国ミュージカルアワードで大賞をはじめ5冠を達成した本作。19世紀のヨーロッパで、元素ラジウムの発見をするなど、女性研究者の道を切り拓き、2度のノーベル賞に輝いたマリー・キュリーの物語を描いています。彼女の情熱と苦悩、そして研究者としての強い信念を、Fact(歴史的事実)とFiction(虚構)を織り交ぜ、「ありえたかもしれない」もう一人のマリー・キュリーの物語として表現。今回は、日本初演として鈴木裕美さんによって演出が手がけられます。
主演は、宝塚歌劇団元月組トップ娘役で、退団後はミュージカル『エリザベート』『泥人魚』『マタ・ハリ』といった舞台作品から、大河ドラマ『青天を衝け』など映像作品まで、幅広い活躍を見せる愛希れいかさん。そのほか、『レ・ミゼラブル』『エリザベート』など、大型ミュージカル作品への出演が記憶に残る上山竜治さん、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で鮮烈なデビューを飾り、現在に至るまで多数の舞台、映像作品に出演する清水くるみさん、俳優としてのみならず、振付やLIVEプロデュースなど多方面で活躍する屋良朝幸さんなど、実力派俳優が名を連ねました。
今回THEATER GIRLでは、主演の愛希れいかさんにインタビュー。前編では、出演に向けての気持ち、主人公マリーに対する印象など、たっぷりとうかがいました。
「ありえたかもしれない」要素を加えることで、よりドラマチックな作品に
――本作はFact(歴史的事実)とFiction(虚構)を織り交ぜた“ファクション・ミュージカル”ということで、愛希さんが出演に向けてどんなことを感じているか、お気持ちを伺えますか?
まずは “ファクション・ミュージカル”という言葉を今回初めて聞いて「こういう言葉があるのか!」とびっくりしました。史実を元に「ありえたかもしれない」要素を付け加えることで、よりドラマチックな作品に仕上がっていると思います。
マリー・キュリーは科学者としてノーベル賞を取るような天才で、自分とは思考回路が全く違うので遠い存在に感じていたのですが、“ファクション・ミュージカル”になったことでよりマリーの人間らしさが理解できるようになり、とても共感しやすい人物像になっていると感じます。
たとえば、モーツァルトが実は女だったというフィクションを題材にしたミュージカルもありましたが、いろんなミュージカルでもそうやって作ることがありますよね。それもまた面白さなので、今回も史実にプラスしてより濃い人間ドラマが描かれていると思います。
日本初演というプレッシャー、それでもマリーを演じられるのが嬉しい
――韓国ミュージカルで、さらに日本初演の作品でもありますが、そちらについてはいかがですか?
韓国ミュージカルに出演するのはミュージカル『マタ・ハリ』以来ですね。日本初演はやっぱりどうやったら日本のお客さまに受け入れてもらえるのか、この短い稽古期間中にどれだけできるのか、正直最初は不安な気持ちでした。
でも、マリー・キュリーを題材にしているところがまた面白いなと思って。19世紀末という時代に、女性科学者の道を切り拓き、ノーベル賞を2回も受賞した人物なので、やっぱり女性としても演じられるのが嬉しいといいますか、勇気をもらえますし、背中を押してもらえる作品だな、と。
――実際には存在しない、新たな登場人物が加わっているのも見所ですよね。
清水くるみちゃんが演じるアンヌ、そして屋良朝幸さんが演じるルーベンは実在する人物ではありませんが、その方々によってまたこの物語がより面白くなっています。映画などの「キュリー夫人」を知っている方には、ぜひ違いを楽しんでいただきたいですね。もちろんそういった方々にも受け入れてもらえるように、現在は演出の鈴木裕美さんと話し合って作っている段階です。
好きな仕事に就いている自分も、マリーと同じオタクそのもの
――愛希さんは、エリザベート、マタ・ハリなど、宝塚歌劇団卒業後もさまざまな女性像を演じてこられましたが、今回はマリーに対してどういう印象をお持ちですか?
(鈴木)裕美さんがよく「簡単な言葉で言うと、彼女は科学オタクだよ」とおっしゃるのですが、その言葉が皆さんにも分かってもらいやすくて、私自身もしっくりくるんですよね。科学をやっていないと居ても立っても居られなくて、科学について知りたくて仕方がなくて、科学がないと生きていけない。そんな科学を、ノーベル賞を取るくらいまで突き詰めた人。
物は違っても、私も今好きなことを仕事にさせてもらっていて。そもそも、私は宝塚が大好きで宝塚音楽学校を受験したので、小さい頃の私はオタクそのものだったと思います。今でもミュージカルが好きで、演劇、エンターテインメントが好きなのはずっと変わりません。なので、そういうところは自分に落とし込みやすいかなと思っています。科学のことは全く分からないのですが(笑)、マリーの想いにはとても共感していますね。
歌いこなすのが難しいけれど、前奏を聞くと「もうそこにしか行けない感覚」
――現在は稽古の真っ只中とのことですが、稽古が始まる前と今で印象が変わった部分はありますか?
最初に映像で拝見したときは、音楽がとても素敵という印象がありましたが、実際に譜面を見るとあまりにも難しくて「ちょっとこれはどうなるんだろう。できるかな?」と思ってしまって。でも稽古をしている中で、すぐに曲が入ってくるといいますか、メロディーが頭から離れなくなる感じがあるので、今は改めて音楽の魅力を感じていますね。
とても難しいのに、それが癖になるといったらいいのでしょうか。かなり構造はトリッキーで、歌いこなすのが難解なのですが、気持ち良さを感じるメロディーラインで、前奏を聞いたらもうそこにしか行けない感覚なんです。
ミュージカルは音楽があるからこそ、音楽に助けられすぎてしまうと良くない
――今回、演出の鈴木裕美さんとご一緒するのは初めてだと思いますが、実際に演出を受けられてみて印象はいかがでしょうか?
いろんな役者さんから裕美さんのことはよく聞いていて、作品に対して、役に対して、ストイックにお芝居を考えてくださる印象が元々ありました。なので、最初は「どんな感じかな?」と思って、ドキドキしながら稽古場に行ったのですが、良い意味で予想通りといいますか。
ミュージカルは音楽があるからこそ、お芝居がさらっと流れてしまいがち。そこはもちろん役者がしっかりとやらなければいけないところなのですが、音楽に助けられすぎてしまうと良くないと自分でもいつも思っていまして。そこを裕美さんがきちんと指摘してくださって、「どうやったら、もっとここの辻褄が合うか考えよう」と一緒に考えてくださいます。とても丁寧にやってくださるのがありがたくて、楽しく稽古させていただいていますね。
取材・文:THEATER GIRL編集部
Photo:梁瀬玉実
ミュージカル「マリー・キュリー」ゲネプロ&取材会レポートはこちら
公演概要
ミュージカル「マリー・キュリー」
脚本: チョン・セウン
作曲: チェ・ジョンユン
演出: 鈴木裕美
翻訳・訳詞: 高橋亜子
出演: 愛希れいか 上山竜治 清水くるみ
能條愛未 宇月 颯 清水彩花 石川新太
坂元宏旬 聖司朗 高原紳輔 石井 咲 大泰司桃子 / 屋良朝幸
【東京公演】
日程: 2023年3月13日(月)~3月26日(日)
会場: 天王洲 銀河劇場
【大阪公演】
日程: 2023年4月20日(木)~4月23日(日)
会場: 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
企画製作: アミューズ