市村正親インタビュー ミュージカル『生きる』 「公演1回1回の渡辺勘治を丁寧に、深いものにしたい」

――前回と同様に、主演は鹿賀丈史さんと市村さんのダブルキャストです。市村さんから見て、鹿賀さんはどんな俳優だと思われますか?
なんとなく(鹿賀)丈史は、市民課長より重役っぽい感じがしませんか? 外見で言うと、オレのほうが課長っぽいかな。
丈史は若い頃から歌がうまかったし、僕は這い上がってここまできた人間ですからね。丈史の芝居を見て、「なるほどな」「いいな」と思ったら僕は盗めるところは盗む。丈史は、オレの芝居は一切見ない。人の芝居を見るのがあんまり好きじゃないのかな(笑)。
要するに、自分で自分のスタイルをやりたいから、同じような役の時は「見る必要がない」みたいな感じだと思う。僕はどこかにヒントがあるかもしれないから、いろんなところを見るほうなんですけどね。

――同世代のお二人ですが、市村さんは年齢を重ねてよかったと感じる瞬間はありますか?
悔しいのとまんざらでもないのと両方だね(笑)。やっぱり前できたことができなくなっていくのは悔しいよ。もし膝が悪くなかったら、今でもバレエのレッスンに行きたいと思うからね。
まんざらでもないと感じるのは、今回の『生きる』の渡辺勘治もそうだけど、『屋根の上のヴァイオリン弾き』のテヴィエとか『スクルージ』の主人公なんかは、やっぱりある年齢に達していないとできない。若い人にはできない役っていうのがあるんですよ。
僕は、若い時にはロミオもハムレットもやれたし、中年になったら『ミス・サイゴン』のエンジニアだとか40代ぐらいの役もやれた。ありがたいことに、年齢にふさわしい役を総ナメしてるなって感じがするんですよ。しまいには一人芝居で全役やっちゃうかもしれない(笑)。僕は限りなくやりたいんですよね、死んだらやれないから。