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市村正親インタビュー ミュージカル『生きる』 「公演1回1回の渡辺勘治を丁寧に、深いものにしたい」

INTERVIEW

2018年10月に上演され、「国産ミュージカルの記念碑」と絶賛されたミュージカル『生きる』。今年10月、その名作が“黒澤明 生誕110年記念作品”として再び日生劇場に帰ってきます。

主演の渡辺勘治役を務めるのは、俳優の「市村正親(いちむら・まさちか)」さん。前回と同じく、ゆかりの深い盟友・鹿賀丈史さんとのダブルキャストです。これまで数々のミュージカル作品に出演してきた市村さんが、コロナ禍の自粛期間を経て、改めて思う『生きる』とは――。

猛暑の続く8月下旬。THEATER GIRL編集部は、市村さんにインタビューを敢行。再演にあたっての思い、役づくりやミュージカルの歌に対するアプローチの仕方、普段のトレーニングやプライベートなお話まで、じっくりと語っていただきました。

コロナ禍の不安「果たしてやれるんだろうか」

――今回の『生きる』は、2018 年に上演されたミュージカルの再演になります。お話があった際の率直なお気持ちを伺えますか?

10月に公演ができるということはよかったなと思います。ただ、コロナ禍なのでいろんな対策を講じてもらいながら、こちらも稽古場以外十分に気をつけないと。この点は乗り切るしかないでしょうね。

――『生きる』の再演が決まったのは、新型コロナウイルスがまん延する前でしたよね。このような状況になって、複雑な思いはありませんでしたか?

果たしてやれるんだろうかという不安はありましたね。また、国のほうから「やらないように」となったら、公演中止もあり得たわけですから。まずはそこに安心した。今回は何か所か地方公演もあるのでぜひ観にきてほしいと思います。

渡辺勘治を丁寧に、深いものにしたい

――今年は、コロナ禍での公演で前回とはだいぶ状況が異なります。今だからこそ、本作が深い意味を持つような気もしますが、再演にあたって市村さんの意気込みにも違いはありますか?

(宮本)亞門ちゃんが「こういう時期だからこそ」というメッセージを書いているんだけど、まだ僕には「今だからこそ」という気持ちはないですね。稽古しているうちに「あれ?」ってなにかを発見することがあるかもしれないけども。どんな時であろうと、『生きる』は『生きる』なんだと今は思ってます。

ただ悔しいのは、みんな観たい舞台なのに客席を空けなくちゃいけないってところだよね。観ているほうだって大勢で笑いたいだろうし泣きたいだろうし。ただ、だからこそ上演できることの喜びは、演者と観客のどちらにもある気がします。そういう意味では僕自身、公演1回1回の渡辺勘治を丁寧に、深いものにしたいと思っています。観にきた人が、隣の人の分まで深く浸透するような芝居ができたらいいですね。

――初演の舞台では、台本が何度も書き換わっていったそうですね。そのことで、やりづらさや不安は感じませんでしたか?

レポートの台本が送られてきて毎日手直しがあってね。ただ、一方で、自分たちも台本づくりに参加しているような感覚もありました。演出家がある言葉を持ってきて、「こっちがいいんじゃない?」って提案すると「あ、そっちがいい!」みたいなね。それはそれで、面白い工程ではありましたよ。

まさに今日、再演の台本が届いたんですけど、それまではテレビで放送していた公演を観て、自分でセリフを文字に起こしたりもしていて(笑)。僕は台本を覚えるのが本当に好きでね。蜷川(幸雄)さんの『ハムレット』『リチャード三世』なんかでも、最後のあと1ページを覚えちゃうのが嫌なの。「もう終わっちゃう」って思うから。

お寿司を食べに行く時も、海苔巻きからはじめて最後にトロを口にするタイプですね。最後に1個しかなくなって、食べちゃうのがもったいなくて。そういう気持ちでいつも台本を読んでいるんです。

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THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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