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演出家・荻田浩一×元吉庸泰対談インタビュー ミュージカル『EDGES ―エッジズ―』個性の異なる2チームそれぞれの魅力とは(後編)

INTERVIEW

――2020年のこの時期に、この作品を届ける意味についてはどうお感じですか?

荻田:このコロナ禍で、スケジュールがほとんどずれてしまって、それこそブロードウェイは来年5月までクローズしていますし、韓国とかアジアは再開できているところもあるんですけど。コロナの時代に僕らが演劇を続けられることって、ある種の奇跡だと思うんですよね。

なるべく無事に健康に公演を続けるために、稽古場や舞台上での対策も必要ですし。でも、7月くらいは割と舞台上も、コロナを意識したり、距離感を取ったりする演出があったと思うんですが、だんだんと舞台が通常に戻りつつあるじゃないですか。だから、両方ともありだと思うんですよね。

7月に博品館劇場でDramatico-musical『BLUE RAIN』という演目をやったときは、舞台上をビニールの幕で覆って、コロナということをすごく意識しましたけど、次に、演出補という立場で関わらせてもらった、ミュージカル「ハウ・トゥー・サクシード」という作品では、振りがレプリカだったので、2011年にブロードウェイで上演されたバージョンをそのままやる訳で、舞台の中には、“変わらぬ日常”があるという設定で。街中ではコロナに気を付けないといけないけど、舞台の中だけは以前と変わらぬ日常があって、人々の距離も変わらない。これも一つの喜びであり、希望なんだと思いました。

いまは、なるべく気を付けつつも過度に意識したアプローチは取らず、でも袖であったり稽古場であったり楽屋であったりの安全性は忘れず心掛けて、なんとか日本で舞台の上演が続いていけばと思っています。とくに、今回はEDGESがもともとある作品でもあるので、EDGESが作られた魅力ということも考えると、その方がいいかなと思います。

これがまたオリジナルで新作を書くとなると、もうちょっとコロナを意識したものにおのずとなるでしょうけど、少なくともEDGESに関しては、本作が作られた背景やその雰囲気というものを醸し出して、見えないところでの安全策を講じていこうと思っています。

元吉:ハードとソフトの両方の面からちゃんと捉えないとというのは、仕事上とても思うんです。WITHコロナ時代になったことで、ある意味お客様の選択肢ができたと思っているんです。つまり、劇場で観る選択肢しかいままではなかったものが、今回は劇場には行けないから、配信で観るという選択肢ができたり。自分のスタンスに、より正直になってきたと思うんですよね。

今回、新国立劇場 中劇場で座席に余裕はしっかりある状態なので、安全はもちろん確保していますけど。やっぱり行くまでが怖いとか、遠征はできないということも当然ある中だと思います。大事なのは、作品を上演することの火は絶やしていけないということだと思うんです。だからこそ、先ほど荻田さんもおっしゃっていたとおり、今世相を斬ってしまうと、本当にただ、その世相の芝居にしかならない。ただそれは、50年後、60年後に普遍的なものとしてもう一度できるかとなると、ノーだと思うんです。

鈴木裕美さんという僕の大好きな演出家の方がおっしゃっていたことですが、50年後くらいにいまの時代の写真を見て、「マスクをしているからこの時代だ」と未来の人は思うのかなって。ただ、いまここにあるエンターテイメントは普遍的なものなので、10年後、20年後にもまた上演できるものを、作らなければいけないと思うんです。いましか観られないものって、非常に僕らの心を締め付けるじゃないですか。

けれども、そういった選択肢やニーズに応えつつも、劇場という期間芸術の矛盾の中で僕らは芝居を作っていかないといけない。WITHコロナというまだ答えが出ない状況で、どうやって僕らの仕事を守って、世界とを繋いでいくかということをずっと探しているような感じだと思います。

だからこのEDGESが新国立劇場 中劇場っていう当初の予定より大きな劇場でやれる奇跡を大事にしながら、「新しい選択肢もあるんだよ」「劇場的には余裕があるからこういうこともできるんだよ」ということを選択肢として取り入れていけたら面白いなと。DDD青山クロスシアターでやる予定だったものを新国立劇場 中劇場でやる時点で面白いんですけどね。

荻田:この時期に上演がずれたこと自体が、コロナそのものというか。“WITHコロナバージョン”として取り組むという訳ではなく、すでに“WITHコロナの一環”として生まれた公演である、って事かなと思います。その中でできることを僕らはやっているので、無茶をせずに、我慢できるところは我慢して上演をしたいし、いまは耐えるってことですかね。15年後くらいに、このコロナの時代の演劇界の顛末が舞台化もしくは映画化されて(笑)。コロナ3部作みたいな。その中で、「上演時期がずれちゃって、劇場も大きくなっちゃって大変だ」みたいなこともあったねと、笑えるエピソードの一つにできるように無事に終わりたいなと思います。

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THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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