橋本さとしインタビュー『キオスク』「自分自身そこに携わる人間として“エンターテインメント”というものを信じている」

2020.12.22

INTERVIEW

――「キオスク」というタイトルにかけて、橋本さんが今一番欲しいものはなんでしょうか？

僕が今一番欲しいものですか……やっぱり健康ですね。この仕事って、自分の身体を使うじゃないですか。どんな状況でも100％で臨むんですけど、その代わりどんどんダメージが大きくなってくるんですよね。だから、「どこも疲れていない」といった、毎回ぴかぴかのまっさらな状態で思い切り表現したいんです。

僕自身が50歳をこえて思うんですけど、20代や30代の頃って「若さって何？　あんまり寝なくても大丈夫」みたいな感じだったんですけど。今は、できるだけ良い睡眠をとって万全の体制でお客様に観ていただきたいですし、日常生活においても、ちょっと筋肉のどこかが痛いなと思ったら気になってしょうがないんですよね。かといってちゃんとメンテナンスをしている訳でもないんですけど（笑）。でも、やっぱり自分の身体の信号というか、そういうものには敏感になりますし、健康がどれだけ大切なのかということを今は感じています。

――トレーニング以外でも健康に気を付けていらっしゃることはありますか？

炭水化物をとりすぎないとか、美容やダイエットについても心掛けてはいるんですけど。色々な衣裳を着ますし、キャラクターに合わない体型も嫌なので、そこは気を使っていますね。あとは、ウォ―キングをしています。色々なことを考えたり、走るよりもゆっくり脳みそが活性化されていくので、セリフも入ったりするんです。

ぶつぶつ言いながら歩くのも、怪しいおじさんなんですけど（笑）。おかげさまで、今はマスクをしているので、ぶつぶつ言いながら歩いてます。でも、やっぱりそれが自分の仕事柄、すごくいい影響を与えてくれるし、かつ健康でもいれる。有酸素運動ってとても大切なので、とにかくウォ―キングですね。

――健康にも良く、台本も覚えられてウォ―キングは一石二鳥ですね。

走っていると、膝が痛いとかしんどいっていう意識がバーッと脳みそを制覇して、セリフが全く出て来なくなっちゃうんです（笑）。走っているときよりも、ゆっくり景色が見られるのも好きですし。「ここはよく車で通るけど、こういう風に見えるんだ」とか、また違う角度から自分の日常を見られるのもいいですよね。

――最後に、改めて今作に対する意気込みを聞かせてください。

やっぱり、自分自身そこに携わる人間として“エンターテインメント”というものを信じています。今の状況というのは、僕たちの存在する位置というものを見直すというか、すごく深く考えさせられる機会でもあったと思うんです。僕たちって所詮は娯楽の分野なので、いらないと言われればそれまでなんですけど。

だけども、そこは皆さまの意識というか、観たいと思えば観たらいいし、今は観られる状況じゃないと思うのであれば、観なくてもいいと思うんです。でも、今だからこそ観てもらいたいと僕たちは感じていて。

やっぱり生身の人間が舞台に立って違う世界を観せるというのが演劇の醍醐味ですし、直接的に人の感情を動かせることが出来る分野だと思うんです。それで、「明日も強く生きていこう」って思えるのが娯楽だと思うし。

娯楽に携われる心の余裕というものを、僕たちがお届けしたいなという気持ちもあります。お客様がこの状況の中、劇場に観にきてくれるのも、やっぱり「観たい」という意識だと思いますし、僕たちも、作品を「観てもらいたい」という意識だと思うんです。そこには利益とかそういうものを超えた、無償の愛が存在していて、それが一つのエンターテインメントを創っていく。僕はそれを信じているので、皆様と一緒に、客席、カンパニー、劇場が一つになって潤いを与え合いたいなと思っています。