平野良インタビュー 『忠臣蔵 討入・る祭』 「観ている人に生きていることを実感してもらう、それが俳優のやりどころ」
――先ほども触れられていましたが、2020年はコロナ禍に翻弄された年となりました。今作で締めくくるにあたっての思いを聞かせてください。
もう、思いが乗りまくっちゃってます。僕は一度芸能の仕事を辞めているんですけど、通算でだいたい20年くらいだとして、その半分にあたる10年の集大成を、この10周年公演で見せるわけです。コバカツさんと出会ってからも10年と少し。しかもこの年始にやった二人芝居を経て、またいっしょにやる。いろいろな思いが乗っかって、ぜひ成功させたいという気持ちがひとしおですね。なんなら、これができるかどうかで役者人生が左右するんじゃないかと感じるくらい、思いが込もってます。本当に、ぜひ成功させたい。
来年になって、コロナウイルスへのワクチンも多少は日本に入ってくるでしょうけど、接種にも優先順位があったりしますし。来年も演劇が今まで通りに復活するのは厳しいだろうなと思ってるんです。ただ、その厳しい中で、もうちょっと踏ん張って頑張っていこうよっていう、決意をいっしょに持てるような公演になったらいいなって。つらいことのあった2020年だけど笑って年を越して、「新しい年も演劇を楽しんで行こうね」と感じられる元旦を迎えられたら、僕的にはすごく幸せなことだなと思います。
――シリーズ名にもなっている“祭”という言葉には、楽しく賑やかに騒ぐイベント的な側面ももちろんあると思うんですけど、元の意味を考えると、祈りに通じる側面もありますよね。
そういうふうに、僕は今、思っちゃってますね。さらに「忠臣蔵」ですから。笑いだけには絶対収まらないし、そこにある絆に心動かされたり、胸が熱くなったりするものになるだろうなと。
コロナ禍で、きっと全俳優が「役者ってなんだろう?」って考えたと思うんです。僕が自粛期間で痛感したのは、心を動かすことの大切さでした。人と会わずにテレビだけ見ていると、いつの間にか心が動かなくなって、気付いたら笑顔が少なくなっていたり、感情や出来事に無頓着になって不感症気味になってしまう。そうなったらやっぱり味気ないですよね。
――全くその通りだと思います。
「生きるってどういうことなんだろう?」と考えた時に、食べて、寝てだけじゃ、生きるっていうことにはならない気がして。やっぱり喜怒哀楽、笑ったり泣いたり怒ったりすることが、振り返った時に生きていたってことになるんだろうと思ったんです。そして、それを提供するのがエンターテインメントだと、僕は結論づけたんですけど。
観ている人に生きていることを実感していただくのが、俳優のやりどころなんじゃないかと思うので。今作では、第一部のお芝居でさまざまな方向に心を動かしてもらって、第二部では笑いにのみ特化した感じになるんじゃないかと考えてます。