• HOME
  • topic
  • REPORT
  • 川﨑皇輝ミュージカル初主演、ウォーリー木下演出。ミュージカル『町田くんの世界』ゲネプロレポート!

川﨑皇輝ミュージカル初主演、ウォーリー木下演出。ミュージカル『町田くんの世界』ゲネプロレポート!

REPORT

2024年3月29日より日比谷・シアタークリエにて、ミュージカル『町田くんの世界』が開幕した。

「町田くんの世界」は、安藤ゆきにより 2015 年~2018 年に別冊マーガレット(集英社刊)にて連載された、累計 140 万部の人気作。

物静かでメガネ。そんな外見とは裏腹に成績は中の下。アナログ人間で不器用…なのに運動神経は見た目どおりの町田くん。そんな町田くんが周りのみんなを変え、みんなに愛されていく新感覚人間ドラマが、今回初めてミュージカルとなった。

演出は 1993 年に劇団☆世界一団(現 sunday)を結成。デジタル技術とアナログな演劇技巧を融合させた演出で東京 2020 パラリンピック開会式やミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』、演劇『ハイキュー!!』等の他、幅広いジャンルを手がける実力と柔軟性を備えたウォーリー木下が手掛ける。

また、脚本・作詞は、『華指 1832』等で数々の戯曲賞に輝く新進気鋭の劇作家・ピンク地底人 3 号、音楽・歌詞・演奏は、舞台『鬼滅の刃其ノ肆 遊郭潜入』などの和田俊輔が担当。

主人公の「町田くん」には、 2023 年のテレビ朝日ドラマ「拝啓、奇妙なお隣さま」でも主演を果たした、少年忍者の川﨑皇輝。本作がシアタークリエ、及び、ミュージカル公演初主演となる。ヒロインの猪原奈々役は、今月 3 月公開の映画「愛のゆくえ」主演で注目を集める長澤樹。

町田くんの友人となる氷室雄役は舞台『キングダム』ほか、数多くの人気作に出演する神里優希が演じる。また、斎藤瑠希、礒部花凜らフレッシュな若手実力派も結集。

元・宝塚歌劇団星組トップスターの湖月わたる、ミュージカルを中心に唯一無二の存在感を放つ吉野圭吾と、各界で活躍する豪華キャストで届けられる。

今回は、ゲネプロレポートと舞台写真をお届けする。

※作品内容に一部触れています。

会場に足を踏み入れた瞬間、最初に目に飛び込んできたのは舞台装置だった。盆の上に、ボックス状の空間やバルコニー、階段などが立体的に規則性なく組み合わさっている。ここからどのように物語が紡がれていくのか、開演前からワクワクが止まらない。

ストーリーは、勉強も運動も苦手で不器用だが、周りの人間から愛される“人たらし”の主人公・町田くん(川﨑皇輝)と、人に期待することをやめてしまった孤独な猪原さん(長澤樹)を中心に、町田くんに影響を受けて変わっていく人たちのエピソードを描く形で進んでいく。

クラスメイトの氷室くん(神里優希)、栄さん(斎藤瑠希)、周囲からイジられまくり、女の子からはフラれてばかりの西野くん(鶴岡政希)、彼氏と別れたばかりのさくら(礒部花凜)、家庭に複雑な事情を抱えるひかり(浜崎香帆)といった学校生活を共にする人たちだけでなく、街で遭遇するたこ焼き屋の健一(吉野圭吾)、幼稚園生の町田くんとある約束をした英子先生(大月さゆ)……友達、家族、結婚など様々な悩みを抱える人たちに、町田くんは惜しみなく愛を注いで救っていく。さらに、同じ電車に乗り合わせただけの吉高(岩橋大)のことも、何気ない行動で気づきを与える。

一方で町田くん自身も、西野くんの言動から今まで知らなかった感情を知ったり。息子の成長を温かく見守る母さん(湖月わたる)の助言によって、自身の本心に気づいたりと、周りから影響を受け、変わっていく。

町田くんは、人間が好きで、誰に対しても正直に気持ちを伝える姿が人の心を動かすという、内からのパワーを持つ人物だ。そのまっすぐさ故に、猪原さんに「大切な人だよ」と、本人的には他意のない言葉を放って意識させてしまったり、女友達の頭をポンポンしたり。だけど、そんな不器用さも愛しく感じられるという絶妙な温度感を、川﨑は完璧に表現。登場した瞬間から町田くんだった。

そして、そんな町田くんに翻弄されながらも、次第に心が解けていく猪原さんの様子を、繊細に見せる長澤。序盤にある、自身の心情を吐露する楽曲を歌うシーンでは、悲痛な叫びにも聞こえる歌声だったが、だんだんとセリフのトーンや表情が柔らかくなっていく。そんな二人の、距離は縮まりながらもなかなか進展しない様子にヤキモキしながら、自然と応援していた。

そうした心境の変化やストーリーを音によって表現し盛り上げているのが、音楽・歌詞・演奏担当の和田俊輔をはじめとするバンドメンバーだ。常時舞台上にスタンバイし、BGMだけでなく、効果音なども適宜奏でていく。

その音色と共鳴するように、キャストたちが自身の声でSEを表現するのもユニークな演出だ。特に、あるキャストが口にしたセリフからひと言を抜粋し、ほかのキャストたちがリフレインする場面はとても印象的だった。

公演中、キャストは出番以外もサイドに置かれたイスで待機し、様々な役をこなす。時には裏方のように盆を回したり、数人が傘を開いて影絵を映すスクリーンを作ったり。すべてが融合することで、一つひとつのシーンが成立している。

また、デジタル技術を使った演出には定評のあるウォーリー木下らしく、要所要所でのプロジェクションマッピングを使った演出も。場面に合わせた映像はもちろん、歌詞やセリフの一部が映し出されたりと、スペースに限界のある舞台上で最大限に効果を発揮している。

本作に登場するのは、どこにでもいる普通の人たち。そして、誰もが直面するであろう問題ばかりだ。それだけに、胸の奥に閉じ込めていた感情に触れられたようで、何度も涙をこらえるのに苦労した。

相手の目を見て、自分の伝えたいことをまっすぐに伝えること。たとえすれ違ってしまっても、逃げ出さずに人と向き合うこと……当たり前のことだが、その当たり前の大切さを町田くんは教えてくれた。多くの人が息苦しさや生きづらさを感じている昨今、“町田くんの世界”がみんなの世界になることを願ってやまない。

文:林桃
撮影:THEATER GIRL編集部

公演概要

ミュージカル『町田くんの世界』

<スタッフ>
原作 安藤ゆき「町田くんの世界」(集英社マーガレットコミックス DIGITAL 刊)
演出 ウォーリー木下
脚本 ピンク地底人 3 号
音楽 和田俊輔

<キャスト>
川﨑皇輝 長澤樹
神里優希 斎藤瑠希 礒部花凜
大月さゆ 浜崎香帆 岩橋大 鶴岡政希
湖月わたる 吉野圭吾

期 間・会 場:
2024年3月29日~4月14日 シアタークリエ
2024年4月19日~4月21日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

料 金: 11,500円(全席指定・税込)

製 作: 東宝

公式サイト: https://www.tohostage.com/machidakun

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

プロフィール

PICK UP

関連記事一覧