新原泰佑インタビュー『球体の球体』「ファンタジーとリアリティが並行しつつも紙一重なところがこの作品の魅力」（前編）

2024.09.09

INTERVIEW

2024年9月14日（土）よりシアタートラムにて『球体の球体』が上演されます。

本作は、第68回岸田國士戯曲賞を受賞するなど注目を集める池田亮さんによる、受賞後初の書き下ろし作となります。造形作家としても活躍する池田亮さんが、「ガチャガチャ（カプセルトイ）」をモチーフに、芸術作品を創作するアーティストの半生を描きます。

第32回読売演劇大賞男優賞上半期ベスト５に選出されるなど注目を集める、主演の新原泰佑さんに加えて、s**t kingzの小栗基裕さん、前原瑞樹さん、相島一之さんが共演者として名を連ねました。出演者が4人という少人数での作品で、新原泰佑さんは主人公の本島幸司を演じます。

THEATER GIRLは、主演の新原泰佑さんにインタビュー。前編では、池田亮さんが手掛ける本作の印象や4人という少人数でのお芝居の魅力についてお聞きしました。

インタビュー後編はこちら

ファンタジーとリアリティが並行しつつも紙一重な世界観

――池田亮さんの手掛ける本作の印象を聞かせていただけますか？

池田さんとご一緒するのは今回が初めてなのですが、池田さんワールド全開だなという印象です。事前にお人柄は知っていましたが、最初に会った印象としては少年心のある方だなって。そんな池田さんの、子供のような無邪気な夢がいっぱい詰まった作品だと感じました。

――シノプシスを先に読まれたとお聞きしています。実際に読んでみていかがでしたか？

とても好きな作品です。“ガチャガチャ”がテーマなんですが、親ガチャや子ガチャなど、自身では選ぶことができない状況って、みんな一度は考えることだと思うんです。それを形に起こすというのも面白かったです。

シノプシスには、脚本だけではなく美術プランなども書かれていて、その世界観の作り方が僕には刺さりました。池田さんは、シアタートラムに入った瞬間からお客様を『球体の球体』の世界に閉じ込めたいんだなって（笑）。脚本の作り方や空間の描き方も相まって早く脚本が読みたくてうずうずしています。

――待ち遠しいですね。

そうですね。ファンタジーとリアリティがずっと並行しつつも紙一重なところがこの作品の目玉であり、面白いところだと思っています。

――ファンタジーとリアリティを明確に分けるのが難しそうな印象があります。

ファンタジーとリアリティの境界線は、跨ぎやすいものにはなっていると思います。というのも、シアタートラムに入った瞬間から『球体の球体』の世界に入り込めるはずですし、普段の生活では結びつかない点と点がこの空間だったらきっと結びつくと思うんです。そんな奇跡的な瞬間を、池田さんとともに作り上げたいです。

――池田さんから、新原さんのこの役への決め手や期待されていることについて、お聞きになりましたか？

僕はずっとダンスをやっていて、自分で何かを作ったり演出したりするのが大好きなんです。それもあって「ものづくりという視点において、現代アーティストという役が新原さんで本当によかった」と池田さんに言っていただいたのはうれしかったです。

池田さんとのお話は共感できて、似ている部分もたくさんあると思っています。池田さんは、多分すごくお喋りなんですよ。僕も話す方なんですけど、僕が相槌をする間もないくらい（笑）。しかも、お互いに深く濃く突き詰めすぎて話が枝分かれしていってしまうんです。一緒にいて楽しい方なので、稽古が今から楽しみです。一緒のベクトルで物事を語れる演出家の方と、どうセッションしてこの世界を作り上げるのかという期待感しかないですね。

――池田さんとは、今までにもお会いされたことはありましたか？

以前お会いしたのは『テラヤマキャバレー』を観劇したときと、僕が出演していた『Amuse Presents SUPER HANDSOME LIVE 2024 “WE AHHHHH！”』を観に来てくださったときで。「ハンサムライブ、すごく楽しかったです。毎年やる理由がわかりますし、また行きたいです」と言ってくださいました。男性にも楽しんでいただけたということもうれしかったです。

――本作は、新原さんの他に小栗基裕さん、前原瑞樹さん、相島一之さんでの4名という少人数かつシアタートラムという客席とも密接な空間のお芝居になります。楽しみにしていることはありますか。

以前、出演した『ラビット・ホール』という作品で5人芝居をさせていただいたのが、僕の人生で初めてのストレートプレイだったんですが、今回は改めて少人数での作品ということで当時を思い出しました。あの時はゲネプロでも足がガクガクでした。月日が経つのは早いですね、ついこの前のような出来事なのに。

でも、今回はさらに少ない4人で、大先輩の方々とで。みなさんが役柄にぴったりすぎて驚きました。池田さんのすごいところって、当て書きで新作を書いていることもあって、僕たちが動いている姿が想像できるんですよね。

この前、池田さんの言葉で面白いなと思ったのが「その場のハプニングをそのままお芝居にしてもらいたくなるときがある」とおっしゃっていて。セリフを噛んで崩れたテンポすらも、そのままお芝居にしてしまうことがあるみたいなんです。今までは、絶対にセリフを噛んではいけないと思っていたんですが、それも前向きにアテンションがかかるような作り方をされるので、自分にどう変化があるのか楽しみです。