加藤和樹インタビュー ミュージカル『BARNUM』「今だからこそ、この作品の良さが強く届く」(前編)
――加藤さんの中のバーナム像について、もう少し踏み込んで伺わせてください。彼は夢を追いかける行動力と、リーダーシップを持ったキラキラとした魅力のある人物ですよね。同時に、パートナーであるチャイリーの目線に立つと少々大変そうだなと感じる部分もあって……。
まぁまぁ、どちらかと言うと、そちらのほうが多いでしょうね(苦笑)。
――とても人間味の溢れるスターのように思いますが、演じ手としては、彼の魅力をどのように伝えたいですか?
僕が考える彼の魅力は、やはり行動力やものの考え方ですね。彼自身がそれをきちんと功績として残していますし。もちろん全て成功してきたわけじゃないですけど、それでも前を向いて諦めない姿勢があるから、きっとチャイリーも「しょうがないな」と許すことができる。彼女が彼に惚れた理由も、自分の夢へとまっすぐに向かっていく、その創造力や才能にあると思うんですよね。
時代(のちがい)もあるでしょうが、今の現代で彼のような人に付いて行くかといったら、多分大半の女性はノーだと思います。それでも、男ってやっぱり夢を追いかけ続けたい人が多いですし、そういう時が一番キラキラしているように感じるんですよ。で、それは決して楽な道じゃないということも、バーナム自身が分かっている。彼は決して楽をしようとしているわけではないんです。あの手この手を尽くして努力をし、「どうしたら人を楽しませることができるのか」を考えている。
――あぁ、そうなんですよね。キラキラしているだけじゃなく、バーナムからは真剣さを感じます。
彼のエンターテイナーとしての根底に「人々を幸せにしたい、楽しませたい、喜ばせたい」という思いがあるから、彼は人間として魅力的なんですよね。それがただのイカサマや詐欺師とはちがう点だと僕は思っています。
――人への愛があるから、人からも愛されるんでしょうね。
周りの人を幸せにすれば、自分自身も心が豊かになる。チャイリーにとっても、犠牲にするものはあるかもしれないですが、心の豊かさは得られると思うんです。何が幸せなのかは人それぞれちがうし、お金があれば幸福になれるのかというと――これはもう永遠のテーマだと思うんですけれども――僕は「そうではない」と思います。
サーカスを観に来る人にもそれぞれの生活がある中で、サーカスに喜びや感動があるからこそ、それを求める。バーナムが残した名言に「至高の芸術とは見る者を幸福にするものだ(THE NOBLEST ART IS THAT OF MAKING OTHERS HAPPY)」というものがあるんですが、ひとりの表現者としてものすごく感銘を受けました。彼の魅力はこの一言に詰まっているように僕は思います。
取材・文:古原孝子
Photo:青木早霞(PROGRESS-M)
公演概要
ミュージカル『BARNUM』
Music by CY COLEMAN / Lyrics by MICHAEL STEWART / Book by MARK BRAMBLE
【会場/日程】
◆東京
東京芸術劇場 プレイハウス
2021年3月6日(土)~3月23日(火)
◆兵庫
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
3月26日(金)~3月28日(日)
◆神奈川
相模女子大学グリーンホール
4月2日(金)14:00
【出演】
加藤和樹 朝夏まなと ・ 矢田悠祐
フランク莉奈・綿引さやか(ダブルキャスト) 原 嘉孝・内海啓貴(ダブルキャスト)
章平 工藤広夢 斎藤准一郎 泰智 福田えり 咲良 米島史子 廣瀬水美
藤岡正明 中尾ミエ
【映像出演】
フィリップ・エマール/石田純一(Performer Ai)
【翻訳・訳詞】高橋亜子
【演出】荻田浩一
【音楽監督】荻野清子
【チケット料金】
東京・神奈川:S席 10,500円(税込) A席 7,000円(税込)全席指定
兵庫:全席指定 10,500円(税込)
【公式HP】musical-barnum.jp