筧美和子インタビュー 『オオムタアツシの青春』「観る人それぞれに違った響き方をするはず」（後編）
2025年9月26日（金）より映画『オオムタアツシの青春』が公開中です。
映画の舞台となるのは、炭坑節で知られる福岡県大牟田市。昭和の風情と 炭坑労働者が愛した庶民的なグルメの宝庫であり、リノベーションによるまちづくりで注目を集めている、かつて賑わった炭鉱町。
人生につまずいた大人たちと、病気を抱えながらも前向きに生きる少女の偶然の出会いから生まれる、かけがえのない絆の物語です。
主人公の五十嵐亜美を演じるのは、本作が映画初主演となる筧美和子さん。さらに、過去を隠して見知らぬ土地に来た青年・高杉司役に福山翔大さん、糖尿病を患う娘の母親・古賀沙緒里役に林田麻里さん、人知れず車上生活を送る男性・樋渡静男役に陣内孝則さんなど、実力派俳優が脇を固めます。
THEATER GIRLは、主演の筧美和子さんにインタビュー。後編では、瀬木直貴監督との撮影時のコミュニケーションや本作にちなみ「人や物との出会いで自分が変わったと感じたエピソード」、今後挑戦してみたい役柄など、俳優観についてのお話もお聞きしました。
役者に余白を残しつつ、必要な部分ではしっかり支えてくださる
――瀬木直貴監督とは、撮影の際どのようにコミュニケーションを取られたのでしょうか。
撮影前に、監督が私の役・亜美のプロフィールを用意してくださいました。台本には描かれていない過去や背景が書かれていて、それを手がかりに役作りを進めることができました。ただ、実際に現場に入ってからは自由に演じさせていただけて、不安になって「大丈夫でしょうか」と尋ねたときも、「いいと思うよ」と声をかけてくださったので、とても安心して臨むことができました。
撮影前の本読みでは、「亜美は考える前に体が先に動くタイプだから、その点を大事にしてほしい」とだけ伝えられて。それ以外はほとんど任せていただき、プロフィールもあくまで参考資料として自由に膨らませたり調整したりしてよい、というスタンスだったんです。監督は役者に余白を残しつつ、必要な部分ではしっかり支えてくださる方だと感じました。
――監督の意図として、役者に解釈の余地を残してくださっていたのですね。
はい。提示されたプロフィールはあくまで補助的なもので、私自身の解釈で自由に膨らませていいと言っていただいて。その配慮のおかげで、安心して役に向き合うことができたと思います。
――本作には「この場所からやり直せる」というメッセージが込められていますが、ご自身にとって、人や物との出会いで自分が変わったと感じたエピソードはありますか。
いろいろありますが、一つ面白い経験を挙げると、お酒との出会いですね。私はもともと内向的なところがあってなかなか殻を破れずにいたんです。ただ、人との時間やお酒の場をきっかけに、自然体で人と向き合える瞬間が増えました。そうした経験が、自分をよりオープンにしてくれたと思います。
経験としてお酒を通じて、新しい自分を知ることができ、人と話すことにも積極的になれました。決して酒豪というわけではありませんが、（笑）そういう経験が演技でも殻を破るフックになったような気がしていて、自分を前に進めるきっかけの一つになったと思います。
歴史ある演技表現や独特の背景に触れてみたい
――今回、映画で主演を務められましたが、今後俳優として挑戦したい役柄はありますか。
具体的には、時代劇に挑戦してみたいです。経験はまだ多くありませんが、歴史ある演技表現や独特の背景に触れてみたいなと。やはり、選ばれた人が出演する特別なジャンルだと思いますので、そういった作品に呼ばれる俳優になれるよう、努力を重ねていきたいです。
――夢が広がりますね。現在はどのような準備をされているのでしょうか。
2年ほど前から茶道のお稽古を始めました。所作はなかなか難しいですが、続けることで自然と身につきますし、リラクゼーションの時間にもなっています。
――俳優として活動を続ける中で、特に好きだと感じる瞬間はどんなときでしょうか。
言葉にするのは難しいのですが、作品を一緒に作っていると実感できる瞬間ですね。相手役の方と目に見えない反応を交わして、自分が役に深く入り込んでいく感覚や、台本を超えた何かが生まれる瞬間は特にやりがいを感じます。そういう体験は、意図していなくてもふっと訪れることが多いんです。
――仕事以外でリラックスするためにしていることはありますか。
もともとリラックス重視の人間なのですが（笑）、最近は「シャクティマット」というインドのトゲトゲしたマットにハマっています。最初は痛いのですが、深呼吸しながら使っていると次第に心地よくなり、腰の痛みも和らぐ感覚があるんです。寝る前のリラックス法として取り入れています。
――最後に、本作を楽しみにされている皆様へメッセージをお願いします。
本作はとても温かい映画です。観終わったあとも心に残り、いつかもしつらいことがあったときでも寄り添ってくれるような存在になるのではないかと思います。ぜひ劇場でご覧いただき、その温かさを感じていただけたらうれしいです。
取材・文：THEATER GIRL編集部
撮影：野田涼
公演概要
映画『オオムタアツシの青春』
9月26日（金）全国公開
監督：瀬木直貴 脚本：松本稔
出演：筧美和子 福山翔大 林田麻里 ／ 陣内孝則
プロデューサー：宮崎逸郎 瀬木直貴 脚本：松本稔 音楽：田上和由
製作：「オオムタアツシの青春」製作委員会
無限フィルムズ ソウルボート 渡辺商会 西日本新聞社 九州朝日放送 テレビ西日本 TVQ九州放送
ホンダカーズ博多 スタッフ・アンド・ブレーン ピークスマインド
後援：福岡県 大牟田市 大牟田商工会議所 大牟田医師会 大牟田観光協会
制作プロダクション：ソウルボート 配給：フリック
ⓒ2025「オオムタアツシの青春」製作委員会
