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輝馬が持つ役者としてのまなざし「日常すべてが役作りのヒント」【シアダン vol.04】(前編)

INTERVIEW

輝馬が悪役の魅力に目覚めた役とは

――これまでに相当な数の作品に出演されてきていますが、数々の役柄のうち、特に思い入れの深い役を挙げるならどれでしょうか?

それこそ、初めて演らせていただいたミュージカル『テニスの王子様』の乾 貞治役ですね。2年間同じ役をずっと演じ続けたので、すごく思い出深いです。半年くらい前に当時のDVDを見返したんですけど、まぁ恥ずかしかったですね!(笑) 引きずり出して怒りたい気分でしたけど、あの頃なりに一生懸命やっていた自分がいるので、特別な役であり特別な作品です。

今でも舞台作品として続いていて、今年で16周年ということなので、自分もその中に参加できたことに思い入れがありますし、今も同じ役を演っている役者さんがいるというのは僕にとってとても大きなことで。役がまだ生きている、それが嬉しいです。

――それだけの時間、ひとつの作品が続くのはすごいことですよね。では、この役で大きく変われた、ステップアップできたという、ターニングポイントとなった役を教えてください。

一昨年出演させていただいた「錆色のアーマ」(顕如役)で、初めて“THE 悪役”っていう感じの役を演ったんですが、それが「悪役っていいな」と思うきっかけを与えてくれました。それまでは正義側の純情だったり、誠実で堅物だったりする役が多かったんですが、悪を演じることが快感で「意外と好きかも」って思えたんです。

――そこで悪役を演じる楽しさに目覚めたと。

そうなんです。これは僕の勝手な思い込みかもしれないんですけど、エンジョイする役って天井が近い気がするんですよね。舞台上からでも楽しさが伝わるように、もっと楽しく、もっと楽しくと思っても、限界値が近い気がするというか。

でも、悪役のマイナスの感情って底がなくて、どこまでもいけちゃうんです。例えば殺人鬼の役だとして、人を殺して喜ぶのと、人を殺して自分も死のうとするのでは、それぞれちがった殺人鬼像だし、それってすごく面白いなと。悲しいことにも底がなくて、落ちるところまで落ち続けるし、浮上するのにもきっかけがないと上がれないから、(悪意も)それに近いのかもしれないと思った作品でした。

――悲しみにしろ、悪意にしろ、マイナスの気持ちには囚われやすいというのは分かる気がします。

お芝居で表現する上でも、悪い役って何をやってもいいんだなと思ったんですよ。楽しい役の場合は、演出家さんから「楽しそうに見えない」「それは楽しいの種類がちがう」ってよく言われるんですけど。悪い役だと、人を殺して笑っていても、悲しんでいても「あ、それいいね!」って言ってもらえることが多いので。「よし!」って思いますね(笑)。いろんな含みを持たせたりと、表現の仕方にいくつも道があるのが奥深いです。

舞台「文スト」の現場は「人に恵まれていたと思う」

――先日まで舞台「文豪ストレイドッグス 三社鼎立」に国木田独歩役で出演されていましたが、公演期間中の印象に残っているエピソードを聞かせてください。

岩手、福岡、愛知、大阪といろいろな場所を回らせていただいて、最後が東京だったんですが。今回の公演で本番中にかなり体力を使う役回りの役者さんが3人いたんです。鳥越裕貴(中島 敦役)と、橋本祥平くん(芥川龍之介役)、君沢ユウキくん(フランシス・F役)なんですが、恐ろしく体力を消耗する役なのに、生命力をめちゃくちゃ使って、汗の流し過ぎで脱水症状になりながらも、それを恐れず常に全力でやるんですよ。しかも、3人とも現場を盛り上げてくれて。

普通は疲れたら、口数が減ったり、げっそりしたり、寝たりしちゃうと思う……というか、僕がまぁそのタイプなんですけど(苦笑)。絶対に疲れているはずの3人が「いやいや大丈夫だよ」って言いながら、率先してガンガン現場を盛り上げて「みんなで楽しくやろう」って空気を作ろうとしてくれる。板の上のお芝居の面でももちろんしっかりされているし、そういう姿を見ていて、尊敬できる人たちだなって思いました。そんな人が集まった現場にいられて、僕はすごく楽しかったですし、人に恵まれていたなと思います。

――30人以上と大所帯のカンパニーが、そのお三方を中心にまとまっていたんですね。

みんなもすごくためになったと思うし、役者もしっかりやって現場も盛り上げようとしてくれる、そんな人のいるところで、手を抜いたことなんて何もできないです。だから常にみんなが全力で向き合った作品になったなと思いますね。

――メンバー全員が全力になれるのは、すばらしい環境だと思います。舞台「文豪ストレイドッグス」シリーズを振り返って、今作の国木田役を演じる上で意識したことはありましたか?

30人以上という1クラス分の人間がいたので、今回は出番が多くはなかったんですが、出番の多少ではないですし、その中でどれだけ残せるかだと思っているので。かと言って、残そうと意識しすぎると粒が立ち過ぎて、見ていてツラいものになってしまう。だから、出しゃばり過ぎずに自分の与えられたことを、与えられた通りに、ちゃんとしたクオリティでやる――それを意識しました。ステージに出る場面が少ない人はほかにもけっこういたんですけど、みんな同じことを考えていたんじゃないかなと思いますね。

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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