塩野瑛久×藤岡真威人インタビュー 『髑髏城の七人 LAST STAND』「輝く場所がきっとそれぞれにある」(後編)
1990年の初演以来、劇団☆新感線の代表作として、キャストや演出を変えながら進化を重ねてきた『髑髏城の七人』。その集大成となる、いのうえ歌舞伎『髑髏城の七人 LAST STAND』が、2026年11月14日より東京・新橋演舞場を皮切りに上演されます。
無界屋蘭兵衛役をWキャストで演じるのは、塩野瑛久さんと藤岡真威人さん。塩野さんにとって本作は、17歳の頃に真剣に俳優を志すきっかけとなった特別な作品。一方の藤岡さんも、過去作で早乙女太一さんが演じた蘭兵衛に心を奪われ、いつか挑戦したいと憧れていたそう。それぞれ異なる経験を重ねてきた二人が、思い入れの深い役に挑みます。
THEATER GIRLは、無界屋蘭兵衛役をWキャストで演じる塩野瑛久さんと藤岡真威人さんにインタビュー。後編では、お互いの魅力をはじめ、経験を重ねた今だからこそ語れる表現への向き合い方や、作品にちなんだ“譲れないこだわり”について伺いました。
作品を通して感じていた、お互いの俳優としての魅力
――共演歴はあるものの、お二人はほとんど初対面だと伺いました。これまでの作品、お芝居をご覧になっていたら、お互いの印象をお聞かせください。
塩野:僕、ドラマ『君とゆきて咲く ~新選組青春録~』を観てましたよ。
藤岡:えっ、そうなんですか! わぁ、ありがとうございます。
塩野:刀を振るう姿も、立ち姿もとても美しくて。実は、最初はお名前が分からない状態で観ていたんですが、あまりにも美しいから調べたら、なんと、藤岡弘、さんの息子さんで!
それを知って「あ、なるほど」と思いました。これはある意味、自分の見る目があるなって(笑)。めちゃくちゃ合点がいきました。
藤岡:(笑)。
そのときは沖田総司役だったので、佇まいは蘭兵衛と少し近いかもしれません。あの経験も、今回生かせる部分があるといいなと思います。
――藤岡さんから見た塩野さんの印象はいかがですか?
藤岡:もうずっと前から塩野さんを知っていて、さまざまな作品を観てきました。イメージとしては大人で余裕があるといいますか。
僕はわりと等身大で子どもっぽいんですけど(笑)、塩野さんはもう真逆! 僕のなかにも「こう演じたい」という理想があるのですが、「まだちょっと難しいかも」と諦めることも少なくありません。でも、塩野さんだったら絶対できる、みたいな。そういう憧れがすごくあります。なので、今回、本当に僕がんばらなきゃ……。
塩野:いやいやいや。そんなふうに言ってくれてうれしいです。けれど、きっとそれぞれに輝く場所があると思いますよ。

足し続けることから、引き算で見つける表現へ
――塩野さんは、ゴールデン帯のドラマをはじめ、さまざまな映像作品で物語の中心を担う機会が増えています。そうした経験を重ねたことで、お芝居への向き合い方に変化はありましたか?
塩野:個人的には、常に自分の中心にある思いは、ずっと変わっていないです。
ただ、さまざまな作品に携わり、お芝居や共演者の方々から多くのことを学んできたおかげで、「いいな」「素敵だな」と感じるものを見極める目は、かなり肥えた気がしています。
これまではお芝居をするうえで、自分のなかに何かを足し続ける作業が必要だったと思うんです。でも、これからは引き算もしていかなければ、自分が素敵だと思う表現には近づけない。そういったことを意識する年齢になりましたし、意識するからこそ生まれるものもあると感じています。
――これまでのように多くのものを吸収するだけでなく、自分にとって大切なものや、表現したいものを取捨選択していく、と。
塩野:そうですね。突き詰めていくと、「役者とはどういう生き物なのか」にたどり着くのだと思います。
役者は、自分の身体という器を使って表現します。役によって、その人物に身体を預けなければならない部分はもちろんありますが、器として使っているのは、あくまで自分の身体です。そこには、自分自身の癖や、これまでに染みついたものがある。悪い癖や、その役に合わない癖であれば、当然抜いていかなければなりません。
でも、それを抜いたうえでも残る、自分の身体から自然と染み出るものがある。見る人が見れば、そこに心を震わせる瞬間があるんだなと僕は感じます。そういったことを意識する年代になったのかなと思います。
実力者ぞろいの座組で、貪欲に学び続けたい
――藤岡さんも、さまざまな舞台や時代劇、特撮作品など、多様な経験を重ねていらっしゃいます。俳優デビュー当初に思い描いていた理想像と現在を比べて、何か変化はありましたか?
藤岡:僕も変わっていないですね。というのも、「まだまだだな」と思う部分が、今も変わっていないんです。
いろいろな先輩や作品、役と出会い、少しずつ経験を積ませていただくなかで、理想と現実のギャップを感じることも多くて。今でも「もうちょっとできたな」と悔しい気持ちになることがたくさんあります。
ただ、殺陣に関しては、やっているうちに自信が出てきたり、役に入ることで、そのときの自分の本領を発揮できていると感じたりする瞬間が何度かあって。そういった意味でも、アクションや殺陣は今後も伸ばしていきたい分野の一つです。
本作も、僕にとって新たな挑戦。同じ殺陣でも、誰が振りをつけるのか、誰が演じるのか、そのときにどんな役として刀を振るうのかによって、まったく違うものになります。次はどんな表現との出会いが待っているのか、今からすごく楽しみです。
もちろん大変だとは思いますけれど、そこも含めて、最後には笑って「ああ、成長できたな」と思えたら合格なのかな、と。
――まだ吸収の途中ということなのですね。
藤岡:はい、まだまだこれからです。今回の座組は、実力のある方が粒ぞろいなので、見て学ぶこともあるでしょうし、一緒に演じるなかで「ああ、こうしているんだ」と気づくこともたくさんあると思います。そこを、めちゃくちゃ楽しみにしています!

それぞれの個性が息づく蘭兵衛を、劇場でしか味わえない体験とともに
――ここからは、作品にちなんだお話を伺わせてください。タイトルの「LAST STAND」を和訳すると、「最後の抵抗」という意味になりますが、お二人がどんなときでも「これだけは譲りたくない」と思う、自分なりのこだわりを教えてください。
藤岡:フルーツジュースを飲むなら、果汁100%じゃないと嫌です!
――即答でしたね(笑)。
藤岡:僕が一番ショックなのは、お店に入って「オレンジジュースをください」と注文したときに、100%ではない、薄めのジュースが出てくることです。「うっ、残念!」って(笑)。
――注文する前に、100%か確かめることも?
藤岡:メニューに明記しているお店としていないお店があるんです。書いていなければ聞きますが、状況的に聞けないときは……ギャンブルです(笑)。
だいたいは濃縮還元のおいしいジュースが来るんですけど、時々、そうではないものが来ることもあって。もちろん味の好みはありますが、シンプルに僕は100%のフルーツジュースが好き。そこは譲れないです!
――ちなみに、何ジュースが一番好きですか?
藤岡:オレンジです。差し入れでもよく出します。
塩野:(少し考えて)僕は……何もないかも(笑)。
――ずっと考えていらっしゃるようなお顔でしたが。
塩野:意外と少ないのかな? そこは、自分のなかで変化している部分なのかもしれません。
今までは「こうじゃなきゃ嫌だ」と思っていたことも、「こうしてみよう、ああしてみよう」と考えられるようになってきたのかなと。
――物事に柔軟に向き合えるようになった感覚ですか?
塩野:そうですね。たとえば、もともと僕はとてもインドアで、出かけることもあまり得意ではないんです。でも、これからはもう少し外に出たり、自分から行動を起こしたりしたほうがいいなと思うようになってきました。苦手だとしても、少し挑戦してみようと思うことが増えています。
――柔軟に対応する姿勢が、逆に今のこだわりなのかもしれませんね。
塩野:そうかもしれないです。掘れば、こだわりもきっとたくさんあると思うんですけど(笑)。
藤岡:僕もそうなれるかな? 100%ジュースを譲れる日が来るのかな……(笑)。
――ちなみに、塩野さんはジュースへのこだわりは?
塩野:(即答で)ないですね(笑)。
藤岡:(声を上げて笑う)
――最後に、本作を楽しみしているお客さまに向けてメッセージをお願いいたします。
藤岡:今まさに、作品がどうなっていくのかワクワクしているところです。
劇団☆新感線さんの唯一無二の世界観と、いのうえさんの演出のなかに、僕自身がどこまで、どのように関わっていけるのか。自分なりに模索しながら、皆さんに新しく、フレッシュな蘭兵衛をお届けできたらと思っています。ぜひ楽しみにしていただけたらうれしいです!
塩野:17歳の僕がこの作品を観て、演劇やお芝居に興味を持ったように、今回の舞台をきっかけに、同じような思いを抱いてくれる人が一人でもいたらうれしいです。演劇の素晴らしさを、より多くの方に知っていただけたらと思っています。
エンタテインメントを観に足を運ぶ、一つの行事やイベントのような感覚で劇場に来ていただけたら。デジタルの時代になり、いろいろなことが便利になっているからこそ、劇場でしか味わえない、こういった生の体験をぜひ感じてほしいです。
17歳のあのときの自分が今の状況を聞いたら、きっとびっくりするでしょう。ただ、当時の僕は、もしかしたら「すぐに叶う」と思っていたかもしれない。いろいろなことを知り、経験してきた今だからこそ、この作品をやる意味があると思っています。

取材・文:矢内あや
撮影:遥南 碧
【塩野瑛久】
ヘアメイク:奥平正芳
スタイリング:能城 匠(TRON)
【藤岡真威人】
ヘアメイク:藤井まどか
スタイリング:YOHEI SHIBAYAMA
公演概要
2026年劇団☆新感線46周年興行・冬公演
いのうえ歌舞伎『髑髏城の七人 LAST STAND』
作: 中島かずき
演出: いのうえひでのり
出演:
早乙女太一 塩野瑛久・藤岡真威人(Wキャスト) 早乙女友貴 /
柚香 光 / 片岡千之助 桜井日奈子 近藤頌利 河野まさと /
木村 了 浜中文一 粟根まこと / 山口馬木也
右近健一 逆木圭一郎 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ
礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ
川原正嗣 武田浩二 横山一敏
藤家 剛 川島弘之 菊地雄人 あきつ来野良 藤田修平
北川裕貴 寺田遥平 竹之内景樹 石倉和樹 永易大空 古見時夢
山崎朱菜 おくつようこ 乾 ライム 大内美里沙 岡山玲奈 高野 渚 日比野愛柚
【東京公演】
2026年11月14日(土)~12月25日(金)
新橋演舞場
【長野公演】
2027年1月21日(木)~24日(日)
ホクト文化ホール
【金沢公演】
2027年2月8日(月)~14日(日)
金沢歌劇座
【大阪公演】
2027年2月25日(木)~3月11日(木)
フェスティバルホール
企画・製作:ヴィレッヂ 劇団☆新感線
