塩野瑛久×藤岡真威人インタビュー 『髑髏城の七人 LAST STAND』「輝く場所がきっとそれぞれにある」(前編)
1990年の初演以来、劇団☆新感線の代表作として、キャストや演出を変えながら進化を重ねてきた『髑髏城の七人』。その集大成となる、いのうえ歌舞伎『髑髏城の七人 LAST STAND』が、2026年11月14日より東京・新橋演舞場を皮切りに上演されます。
戦国時代を舞台に、アクション、ロマン、笑いを盛り込んだ壮大な物語が展開する本作。先日行われた製作発表会見では、出演者たちが公演に懸ける思いや作品の見どころを語りました。
THEATER GIRLは無界屋蘭兵衛役をWキャストで演じる塩野瑛久さんと藤岡真威人さんにインタビュー。前編では、キャストが一堂に会した製作発表を終えての率直な思いをはじめ、二人が感じる蘭兵衛の魅力、殺陣への期待、互いの蘭兵衛に見いだした個性などについて伺いました。
本格始動を前に感じた、座組への信頼と期待
――製作発表では、お二人の作品に懸ける熱い思いが伝わってきました。あらためてキャストの皆さんと顔を合わせた今、どのようなお気持ちですか?
藤岡:皆さんとお会いするのは本読み以来で、少し間が空いていたんです。本読みのときにも感じたのですが、皆さん芸達者な方たちなので、お芝居がとても面白くて。また、役を離れても、一人ひとりのキャラクターがはっきりしているんですよね。
本日、会見のお話を聞いているだけでも、『髑髏城』の世界観や、これから作られていく座組の雰囲気が見えてくる感覚がありました。僕自身はこれから稽古に入るので、より楽しみな気持ちです。
塩野:真威人くんが言ってくれたように、僕らはまだ本読みだけで本格的な稽古はこれからなんです(取材時)。僕自身は再共演の方も多いので、またご一緒できる喜びがありますし、信頼もあります。共演者の皆さんが持つ力を『髑髏城の七人』という舞台で一つにし、作品を紡いでいけることにワクワクしています。
また、先日、捨之介役の(早乙女)太一さんが音頭を取ってくださって、何人かでご飯に行きました。早い段階から太一さんを中心に座組の空気を作ってくださったことで、皆さんの人柄にも触れられたので、これから一緒に作品を作っていくのが楽しみです。

塩野瑛久が惹かれる「影」、藤岡真威人が感じる「二面性」
――お二人が感じる、無界屋蘭兵衛の魅力をぜひ教えてください。
塩野:やっぱり、「影」があるところですかね。
蘭兵衛は、最初は「無界の里」の主として登場しますが、物語が進むにつれて背景が見えてくる人物。かつては織田信長に仕え、彼を強く崇拝していました。そんな蘭兵衛のどうしても消えない根っこの部分。そこが一つの魅力です。
その思いによって、周りを悲しませてしまうこともあります。でも、どうしようもない、ほかの誰にも揺るがすことができない大事な芯なんですよね。
そんな蘭兵衛の影を自分なりに見つけて、役に寄り添えたらと考えています。
藤岡:僕は、蘭兵衛には「二面性」があると思っています。表面はクールで優雅。でも、ちょっと冷酷にも見える。塩野さんも「影」とおっしゃっていましたけれど、どこか冷めたような部分を持っていると思うんです。
一方、その内側には、表面とは相反するような熱さや情熱が隠れている。そこが蘭兵衛というキャラクターの大きな魅力だと感じています。
歴代の俳優さんによって、その二面性のバランスが一人ひとり違うのも面白くて。だからこそ、演じるのはとても難しいだろうなと。僕自身、どちらに寄るのかもまだ未知数です。でも、自分なりに落とし込んで、そのギャップを出すことができれば、役が立ち上がってくるはず。僕らしい蘭兵衛をどうつくれるか。今からワクワクしています。
あとは、殺陣。『髑髏城の七人』は殺陣が見どころの一つですが、ただの殺し合いではなく、斬り合うこと自体に意味がある。ある意味、台詞ではない“思いのやりとり”なんですよね。過去作を観ていて、それをとても感じました。
蘭兵衛、天魔王、捨之介は、それぞれの過去と思いを背負って剣を振るっています。言葉ではない部分で、蘭兵衛の葛藤や悩み、その人らしさを出していきたい。そう頭では考えていますが、実際にどう表現するかは……ここからの自分との戦いですね。

憧れを超えるのではなく、“自分らしい蘭兵衛”を
――今回のキャストの皆さんには、どんな印象を持っていますか?
塩野:キャスト陣を見たときに、「身体が動く方たちばかりだ。絶対に意図して集めたんだろうな」と思いました(笑)。
僕自身も殺陣の経験はありますが、舞台で磨き続けてきた方たちに着いていかなければいけないというプレッシャーがあります。ただ、今回は(早乙女)太一さん、友貴さんのお二人がいらっしゃるので、たくさん学ばせていただける機会でもあると思っています。
僕は以前から、太一さんと友貴さんの映像を何度も見返していまして。『髑髏城の七人』以外の舞台でも、お二人のどちらかが出ていたら、巻き戻して観て、また巻き戻して観て、と何度もリピートしながら参考にさせていただいていました。
今回はお二人の近くで学びながら、蘭兵衛の殺陣はもちろん、物語の切なさまで一緒に表現できるところまで、絶対に持っていきたいと思っています。

――藤岡さんが過去作で観た蘭兵衛役は、早乙女太一さんだったとのこと。どんな印象が残っていますか?
藤岡:僕が初めて観た『髑髏城の七人』は、2011年の小栗旬さん主演作でした。そのときの太一さんの蘭兵衛が、もう、かっこよすぎて! 観た瞬間に「うわ、かっけぇ! これやりたい!」と思ったんですよ。今思えば、我ながら単純というか(苦笑)。
登場の仕方もそうですし、突然バッと現れて敵をなぎ倒すところ、笛を持っている姿も、めちゃくちゃかっこいい。同時に美しさもあるじゃないですか。
でも、それだけではないんです。「なぜこんなに圧倒されて、強く印象に残るんだろう」と考えたら、単純にスピードや技術だけではなくて、太一さんらしさがあるからだと。役を完全に自分のものにしているという印象を受けました。だから、より際立って見えるし、観ている人の心に残るんだと思います。
蘭兵衛のお話をいただいたときは、自分にとって大きな挑戦だと感じました。ただ、僕も太一さんや歴代の皆さんと同じように、自分らしい魅せ方や動きを模索し、研究していくことが一番なのかなと思っています。
今まで僕自身、時代劇の本格的な殺陣が多かったんです。武道家でもある父から剣を習っていたので、正統派のものが自分には染みついていると思います。でも、本作の殺陣には、美しさや振付的な要素もある。そこがすごく楽しみですし、それをどう自分らしく表現できるのか挑戦したいですね。
塩野:皆さん実力者揃いなので、僕もこの座組のなかで「殺陣が得意です」と言うのはちょっと遠慮しちゃいます(笑)。
ただ、僕には僕の、これまで積み重ねてきたものがある。そこには自負をもって、自分なりの蘭兵衛を見つけていきたいです。
あと、どうしても捨之介、天魔王との関係に目が行きがちだと思いますが、蘭兵衛にとっては極楽太夫の存在もとても大きい。太夫との関係性や、太夫に対する思いも大事にしながら演じていけたらと思っています。

気品と儚さ、まっすぐな凛々しさ。異なる蘭兵衛の予感
――今までご自身の蘭兵衛に対する印象を伺ってきましたが、今回Wキャストとして自分とは異なる“相手らしい蘭兵衛”はどんな部分だと思いますか?
藤岡:蘭兵衛の最初の台詞に「いい月夜ですな」という言葉があるんです。本読みしたとき、その第一声から塩野さんのお声が素敵すぎて!
僕のなかで蘭兵衛には、儚さや声、佇まいからあふれる気品が、強い要素だと思っていて、塩野さんの声を聞いた瞬間にそれをとても感じたんです。「絶対、素敵な蘭兵衛を作り上げてくださるだろうな」と。
もちろん、これから役を作っていく段階ではありますが、すでに蘭兵衛に近しいものを持っていらっしゃるので、僕自身、参考にさせていただきたいと思いました。
塩野:(ほほ笑みを浮かべながら)その言葉はとてもありがたいです。ただ、僕自身はまだまだ蘭兵衛を模索中でして。キャラクターも、本読みのときとはガラッと変わる可能性があります。現段階ではあまり決め切らず、これからいろいろなアプローチを試したいと思っています。
一方で、藤岡くんの蘭兵衛は、まっすぐで凛としている印象でした。本読みでは、二人でシーンごとに交代して担当しました。自分が読んでいない場面もあるので、そこはお互い楽しみにしていると思います。
おそらく僕たちの蘭兵衛では、重要になるポイントもそれぞれ変わってくる。それぞれで蘭兵衛が輝く瞬間、観る人にとって魅力的に映るシーンも異なりそうだなと、台本を読んでいて感じました。
藤岡:(塩野さんの言葉に、何度も大きく頷く)
――お二人は以前、映画『八犬伝』で共演されていますよね。
塩野:そうですね。でも、実は今回がほぼ初対面なんです。
藤岡:あのとき初めての時代物で、もう僕はビックビクしていて(笑)。いろいろ苦い思い出もあるんですけど、その後、何作品か経験させていただき、少しずつ積み重ねてきたので、今回あらためてちゃんと、しかも同じ役でご一緒できることが光栄です。
塩野:ちなみに、演出のいのうえひでのりさんによると、Wキャストによってミザンス(舞台上での役者の立ち位置)も変えるらしいと。ちらっと人づてに聞きました(笑)。まだどうなるかは分かりませんが、同じ役を演じていても別々の場所で台詞を発する可能性もあるみたいです。
逆に言うと、関わる皆さんが大変ですよね。僕らは身長や手足の長さも違うので、殺陣の間合いもかなり変わってしまうと思います。先に「ご苦労をおかけします」と謝りました(笑)。
藤岡:あーっ、確かに! 僕も謝っておかないと(笑)。

取材・文:矢内あや
撮影:遥南 碧
【塩野瑛久】
ヘアメイク:奥平正芳
スタイリング:能城 匠(TRON)
【藤岡真威人】
ヘアメイク:藤井まどか
スタイリング:YOHEI SHIBAYAMA
公演概要
2026年劇団☆新感線46周年興行・冬公演
いのうえ歌舞伎『髑髏城の七人 LAST STAND』
作: 中島かずき
演出: いのうえひでのり
出演:
早乙女太一 塩野瑛久・藤岡真威人(Wキャスト) 早乙女友貴 /
柚香 光 / 片岡千之助 桜井日奈子 近藤頌利 河野まさと /
木村 了 浜中文一 粟根まこと / 山口馬木也
右近健一 逆木圭一郎 村木よし子 インディ高橋 山本カナコ
礒野慎吾 吉田メタル 中谷さとみ 保坂エマ
川原正嗣 武田浩二 横山一敏
藤家 剛 川島弘之 菊地雄人 あきつ来野良 藤田修平
北川裕貴 寺田遥平 竹之内景樹 石倉和樹 永易大空 古見時夢
山崎朱菜 おくつようこ 乾 ライム 大内美里沙 岡山玲奈 高野 渚 日比野愛柚
【東京公演】
2026年11月14日(土)~12月25日(金)
新橋演舞場
【長野公演】
2027年1月21日(木)~24日(日)
ホクト文化ホール
【金沢公演】
2027年2月8日(月)~14日(日)
金沢歌劇座
【大阪公演】
2027年2月25日(木)~3月11日(木)
フェスティバルホール
企画・製作:ヴィレッヂ 劇団☆新感線
