平間壮一インタビュー ミュージカル「ドン・ジュアン」「少し大人になったことで、内側にある怒りを表現したい」(後編)
――本作で使用される楽曲の印象についてはいかがでしょうか。
いやぁ、本当に難しいです。
――やはり一度やられていても難しい印象があるのでしょうか?
ミュージカルは歌唱指導の方ともたくさん話し合いをするのですが、感情をベースにして歌うので、実際の楽譜通りではなく稽古をしながら変わっていくこともよくあるんです。
でも今回は再演なので一旦冷静になったうえで、楽譜通りに戻って稽古していたら「うわ、こんなリズムになっていたんだ」という難しさがありまして。でも素晴らしい作品だからこそ、楽譜にもう一度立ち返って、そこから表現や感情をフルで入れていけるようにしたら再演をやる意味があるよねという話し合いをして、確かにそうだなと感じました。音楽自体が持っている感情の動きを大事に、現在頑張っている最中です。
たとえば、なぜここは3連符で歌っているのか意味合いを考えて、それを基に感情を作るという初めてのパターンに挑戦しています。音楽のほうに合わせると、自分が台本を読んだときの感情と微妙なずれがあるのですが、それら二つの意見を持ってきて、どうしていけばいいのか試行錯誤していく楽しさも感じていますね。
「ドン・ジュアン」は音楽自身が力を持っている楽曲が多いので、素直に乗ってみることで、新しい作品になるんだなと今回実感しました。
――平間さん自身の感情はもちろん、音楽そのものが持っている表現の力も重要ということですね。
そうですね。実は3連符って、割り切れない数を無理やり割って作っているらしいんです。それがたくさん出てくるのが「殺す、殺す」と言っている『マリア』という題名の曲でして。割り切れない数だからこそ、心が定まらない表現になっているんですよね。なので「殺すと言いつつ、この人揺らいでいるな」という印象になると聞いて、なるほどと感じました。