ウエンツ瑛士インタビュー 『てなもんや三文オペラ』「舞台はひとりじゃないことをいちばん感じられる場所」(後編)
――ウエンツさんはお芝居からバラエティまで幅広く活躍されていて、映像作品への出演も数多く経験されていますよね。その中でも舞台作品でステージに立つ理由や、舞台の魅力について聞かせてください。
キャストの方々、スタッフさん、みんながいっしょに同じチームの仲間として舞台に立つというのが、やっぱり大きな魅力だと感じます。芸能界にはさまざまなジャンルがあると思うんですけど、ひとりじゃないっていうことをいちばん感じられるのが舞台の現場かなって。それに、舞台上では毎日本当にいろいろなことが起こるし、お客様の反応によって変わっていくこともたくさんある。そういうナマの魅力についても、舞台がいちばんだなと思います。
イギリス留学を経て「周りが自分を見る目が変わった」
――2018年から1年半、イギリスへ渡って演劇留学をされていましたが、その経験を経て、ミュージカルや舞台に対する思いに変化はありましたか?
思いについてはあまり変わっていないと思います。ただ面白いのが、友人が変わったり、声を掛けてくれる人が変わったりしましたね。悪い意味じゃなく、今までいっしょにいた人がいなくなったりというのもありましたし。だから、周りが変わったというか、周りの見る目が変わったのかなと。(留学を経て自分の中に)いろいろと残っているものはありますけど、僕自身では自分で気付けるような変化はないと思っているので。なんだか不思議だなと思いながら、この2年間くらいは過ごしていました。
――役作りや歌唱であったりという演技の技術的な部分に関しては、ご自身の中でステップアップできたなという手応えは感じますか?
いやー、分かんないですねぇ。僕がそれをいいと思っていても、周りがいいと思っていなかったら意味がないですし。究極はお客さんが楽しんでくれることが大事なので。もちろんその中でもスタイルの違いのようなものはあると思います。作品の性質にもよると思うんですが、お客さんに迎合することがいいものもあれば、お客さんを舞台に呼び込む――こっちが舞台から降りるんじゃなく、呼び込むようにする――のがいいものもある。そういう意味では、選択肢は増えたと思いますけど、常にそれをチョイスするのがいいとは限らないなと思っています。
コロナ禍による思わぬ影響「真相が分からない(笑)」
――今作もコロナ禍の中での上演となると思われますが、こういった状況で演劇に携わってみて、コロナ禍ならではだなと感じたことがあったら聞かせてください。
これはコロナ禍のせいなのか言い訳なのか分からないんですけど、ウケるシーンで笑い声が聞こえないんですよね。どっちか分からないですけど、コロナ禍のせいだと言いたい。
――スベっているわけではない、と(笑)。
だって上演前に「おしゃべりは控えてください」だったり「なるべく声は出さないように」って言われた後で舞台上でボケられても、お客さんとしては「どっち?」「笑っていいのかな?」ってなりますよね。でもそれって舞台上にいる人間にとっては「あれ? 俺、スベり倒してるのかな……?」って本当に感じるんですよ。
――(一同爆笑)。
マスクをしてるから笑顔なのかどうかも分からないし。それは、もう……スベってるのか、コロナ禍だからなのかは判断が付かないです。真相が分からない(笑)。だから、いいことでもあり、悪いことでもあって、どちらかだけということはないのかなって。むしろ、僕らよりもきっとお客さんのほうが大変だと思います。対策をしっかりして来られて、会場では検温していただき、消毒もして、じゃあ連絡先も……って。そういう煩わしいことが増えているのは、きっとお客さんなんですよね。それでも来ていただけることがありがたいし、そういう意味では、僕ら自身がコロナ禍でしんどいなと思うことはないと思います。
――なんという言葉……。それでも観る側の方も、キャストはもちろん、スタッフも含めたみなさんが感染症が広がらないように尽力されているのを感じていると思いますよ。
でも、僕らステージに出る側より、スタッフさんのほうがキツイと思いますよ。マスクもして、外食も控えて、現場を掛け持ちでやっている方も多いですし。僕らは舞台が途切れなく続くようなことはあまりないですけど、スタッフさんはずーっと外食ができなかったり、一度でも罹ったら上演中止があり得たりするので。本当に、僕より周りの方が全然大変だなって、いつも思ってます。例え誰かが罹っても、それで「やれなかった!」っていうことじゃなく、いくら気をつけていても罹ってしまうことはあるので。それは誰も悪くないです。