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笹森裕貴の芯にあるニュートラルさ「お芝居にはその役者の人生が表れる」【シアダン vol.11】(前編)

INTERVIEW

――昨年から今年にかけ、ミュージカル『刀剣乱舞』 歌合 乱舞狂乱 2019、ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~に松井江役で出演されましたね。ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』(水野 祐役)、『あんさんぶるスターズ!エクストラ・ステージ』~Memory of Marionette~(天祥院英智役)、MANKAI STAGE『A3!』〜SPRING 2019〜(水野 茅役)と、いくつもの人気作品の現場を経験して、役やお芝居への向き合い方に変化はありましたか?

そうですね……中でも大きかったのが、今回の刀ミュ(ミュージカル『刀剣乱舞』の略称)でした。演出家の茅野(イサム)さんに、本当に一からお芝居を教えていただきました。それまでは、自分が役のキャラクターになることを心がけていましたが、そういう概念が全部一気に吹き飛びました。これまでの自分はお芝居の仕方や、舞台の基本などをまるで分かっていなかったんだなと痛感しました。

キャラクターとして演じるのはもちろん大前提ですが、役とはだんだん降りてくるものであって、最初から型を決めてしまうと、そのお芝居しかできなくなってしまう。相手との掛け合いがあって、相手のやりたいことを汲むことでお芝居は成り立っていくので。そう思うと、それまでは「僕を見てください!」というお芝居をしてきてたんだなと気付きました。

――かなり意識の変化があったんですね。

お芝居の中でも“今どうしてこちらに動いたのか?”、“なぜ今この人に近付いたのか?”って、ひとつの動きにも過程があって、その結果なんだと思うんです。それを、ただ単に”近付いてから、しゃべる”みたいに順序として決めてしまうと、型だけの誰でもできるお芝居になってしまうなって。

だから、稽古中は茅野さんが「それいいね」と言ってくださるまで、毎回ちがう動きをしてました。自分がちがうアプローチをしていくことで、共演している仲間も違ったアンサーを出してくれたりしたので、こうやって(芝居が)どんどん深まっていくんだなと実感できましたね。

――型があるものをなぞるのではなくて、その時の感情や、相手との空気感をお芝居に織り込んでいくような感覚なのでしょうか。「役として生きる」と言いますか。

そうかもしれないです。前の日と同じ芝居をしていると「お前は昨日の自分をなぞっているだけだ」って怒られるんですよ。本当にその通りで、同じことの反復じゃ稽古をしている意味がないですから。

相手のしたことに、自分がどう自然に返すか……お芝居をしているという前提はありますけど、人間として、キャラクターとして、どうアプローチしたらそのキャラクターがより引き立って、相手にとってもやりやすいのか、すごく考えました。コンマ数秒の間の使い方から、わずかな動きの違いまで、相当苦労はしましたけど充実した時間でしたね。

――稽古期間の濃密さが伝わってきます。

一瞬たりとも気が抜けなくて、ずっと集中していましたね。刀ミュは歌、ダンス、芝居と要素が多いので稽古がみっちり2ヶ月ありました。運よく初日から7公演まではできましたが、それ以降がこの情勢下で中止になってしまって。濃蜜過ぎた分、最初は全く抜けなくて、毎日夢で刀を振ってました(苦笑)。

僕は殺陣が今回初めてだったので、新しいことへの挑戦をこんな大きな作品ですることができて、とても嬉しかったです。松井江は貴族っぽくスッとしているイメージなので、そういう彼ならどんな殺陣をするだろうと結構考えましたね。歌合(=ミュージカル『刀剣乱舞』 歌合 乱舞狂乱 2019)で登場させていただいてからの新作公演だったので、もっとやりたかったという思いはありますけど、また来年演じられるのを楽しみにしたいと思います。

(※ミュージカル『刀剣乱舞』 ~静かの海のパライソ~は2021年秋に上演予定で現在調整中)

ステージから目にした、笹森さんの一生忘れられない光景とは

――ミュージカル『刀剣乱舞』 歌合 乱舞狂乱 2019では、松井江は愛知公演からの出演でしたが、深みのある歌声と共に登場するシーンがとても印象的でした。

ボイトレに行ったりして、めちゃくちゃ練習しました(笑)。あのシーンは、何かが生まれる瞬間の感じを出したくて、どうするか悩んだんです。それまでお母さんのおなかの中で守られていた存在が、初めて空気に触れる瞬間の怖さのような、そういう美しいだけじゃないものを体現したくて。かなり緊張もしたので難しかったですね。

――緊張はしますよね。広大な会場を埋め尽くす観客の前ですし。

そうなんですよ。最初の緊張は本当にすごくて、トイレと楽屋を意味もなく往復していました。自分でもびっくりするくらいソワソワしてしまって。いざステージに出る瞬間にも「自分、こんなに震えるんだ!?」ってくらい、脚がブルブルしていました。大勢のお客さんの前にシークレットで初めて登場した、あの愛知公演でみた光景は忘れられないです。死ぬまで絶対に覚えてると思います。

――どんな光景でしたか?

一瞬静まり返って、「あれ? 全然反応がないのかな?」と思った途端に、ドーンと歓声が上がって。ゼロから100でしたね。僕はイヤモニが片方だったので、片耳では直で聞こえたんですけど、もうすごかったです。貴重な体験をさせていただきました。

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THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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