松下優也インタビュー ミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』「バドは物語にドラマ性を持たせられる役」
――では作品にちなみまして、バドは出世を狙うという野心のある人物ですが、松下さん自身にとっての野望はありますか?
うーん……野望しかないですね(笑)。怖いぐらいに。
――たくさんありそうですね(笑)。少しだけ聞かせていただけたりは……?
そうですね……。コロナによるこういう状況で、以前には自分が考えていたこと、思っていたことを、人前でのパフォーマンスであったりというエンターテインメントの形で昇華していたんですが、それができなくなって。まぁこれは僕に限らず、全員が、なんですけど。2、3ヶ月止まっていた分、インプットにも時間を使えたし、何より考える時間がすごく増えました。それで、これからこのコロナが収束したとしても、またこういうことが全然あり得る世の中になるなと思ったんですよ。そう考えた時に、自分が今やってることは全く当たり前のことではないし、安心できるものじゃないなと。
もちろん、音楽であってもお芝居であっても、作品に対して全力で取り組むというのは絶対に欠かせないことなんですが、そのやり方の部分を、自分としてはちゃんとひとつ築き上げたいと思っています。“今まで通り”のあり方に、甘えていたら危うくなってくる時代だと思うし、「ここにいたら安心」というものもない。だから今、すごく考えているところなんです。そこで確実なものを築き上げられたら、自分にとって一番いいなって思うので。
――たしかに……。今までの前提に乗っかって、そのまま進み続けていくことが困難な状況ですよね。
事務所であったりという周りのサポートがないと僕らは活動できないけど、自分でちゃんと意識を持って、自分の活動の仕方についてのレールを敷きたいなと思います。そういうことを考えてる、考えてないに関わらず、やれちゃう時にはやれちゃうけど、それはけっこう危ないなと思うので。だから何をやるべきなのか、考えているところです。
「この時期だからこそ楽しんでもらいたい」作品に込める思い
――では、2020年というこの年にミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』という作品を上演するにあたって、この作品でどんなものを届けたいですか?
今の状況とは真逆をいく作品だと思うので、この時期に上演するのはすごく意味のあることだと思うんですよね。コロナのあるこの時代に沿った作品やエンターテインメントは、今、いろんな人が考えて、世の中にたくさん出ています。一方でミュージカル『ハウ・トゥー・サクシード』は、ハッピーで少しバブリーな時代の雰囲気も感じるし、とても明るい作品なんですよ。それくらい真逆なので、観に来てくださった方には「私たち、何に悩んでるんだろう?」って、その瞬間だけは今の大変なことについて忘れて、明るく楽しい気持ちになってもらえる内容かなと思います。
もともとこの時期に公演が予定されていたんですけど、タイミングって何かあるのかなって感じましたね。やりがいも十分ですし、この時期だからこそお客さんに楽しんでもらいたいと、より一層思います。