平野良インタビュー『忠臣蔵討入・る祭』「観ている人に生きていることを実感してもらう、それが俳優のやりどころ」

2020.12.26

INTERVIEW

――では少しラフな質問も交えまして。今作で描かれる「忠臣蔵」は年末の風物詩のひとつですが、平野さんにとっての年末年始の風物詩、おなじみとなっているものがあったら聞かせてください。

毎年初詣に行って、だるまを買ってたんです。だるまって、少しずつ大きいのを買うようにするものじゃないですか。18号くらいの小さくて赤いだるまから始めたら、こんなに大きくなっちゃったので（人の頭より少し大きいくらいのジェスチャー）、さすがにこのサイズを家に置くのはキツいなと。

それで、黄色い金運のだるまの小さいものを買ってみたんですよ。それからここ2年ほどは初詣に行けていなくて、その小さいだるまのままなので、今年はそれをひと回り大きな黄色いだるまにしたいなと思ってます。

――このご時世ですし、担げる験は担ぎたいですよね。では、今作では“背負う男たちの物語”が描かれますよね。平野さんが「これなら背負える」と自負できることはなんでしょうか？

この（芸能の）世界で生きていくって決めた瞬間から、関わった人を幸せにできるような人間でいないといけないなと思ってます。尊敬している演出家さんはたくさんいるんですが、その中のおひとりが「きっと演劇って、お客さんがいなくても、なんだったら自分一人がいれば完結すると思うんだよね」っていう話をしてくださったことがあって。役者である自分も、自分でありながら一観客であるべきだし、その一観客の自分が心から楽しめないものは、隣にいる人にとっても楽しくないと思う、と。それを聞いて、確かにそうだなと思いましたね。

だから我々役者は稽古をしてお客様に届けるんですけど。僕の中では、いっしょにやっているスタッフやキャストも、お客様と変わらない“大切な他人”というか、“大切な僕ではない人”なので。僕の周りにいる人に、いっしょにお仕事をする上で少しでも幸せになってもらえるよう、お芝居をしていかねばというのが……うん、僕が背負わなければいけないと思っていることです。

――では最後にあらためて、本作に臨むにあたっての意気込みをお願いします。

もう、祈りに似た意気込みになりますが。いつ何が起きるか分からないですけど、一日一日切磋琢磨して、本当にいいものを届けたいという熱意を持って臨みたいと思います。それは俳優だけでなく、明治座さんや衣裳さん、舞台照明さんなど、スタッフみんながきっと「成功させたい」という強い思いを持って戦っていくと思いますので、ぜひその目で見ていただきたいです。全公演、配信もございます。事情があって劇場に来られない方もたくさんいると思うので、そういう方にもご自宅で楽しんでいただけたら嬉しいですね。僕も例年はジャニーズの放送で年越ししてたんですけど、今年は煮汁プロジェクトもありますから！　みなさんいっしょに年越ししていただけたらと思います。

取材・文：古原孝子
Photo：青木早霞（PROGRESS-M）