平間壮一×大東立樹インタビュー 「また新しい『無伴奏ソナタ』を好きになって楽しんでもらいたい」（前編）
2024年7月26日（金）、東京・サンシャイン劇場にて『無伴奏ソナタ-The Musical-』が開幕します。
2012年に舞台作品として演劇集団キャラメルボックスが初演し、これまでのべ5万人以上を動員するなど圧倒的な支持を得てきた名作が、今回、初のミュージカル化。原作は、アメリカの作家・オースン・スコット・カードの短編小説で、すべての人間の職業が幼児期のテストで決定される時代を舞台に、音楽の天才として見出されたクリスチャン・ハロルドセンの壮絶な人生が描かれます。舞台版も手掛け、数多の演劇作品を生み出してきた成井 豊さんが脚本・演出・作詞を務めることでも話題を呼んでいます。
主人公・クリスチャンを演じるのは平間壮一さん。クリスチャンの生活を監視するウォッチャー役に、舞台版でクリスチャンを演じた多田直人さん、ギター弾きの作業員・ギレルモ役に大東立樹さん。ほか、熊谷彩春さん、藤岡正明さん、霧矢大夢さんなど、ミュージカル界を牽引する豪華キャストとキャラメルボックスの人気俳優の共演が実現しました。
THEATER GIRLは、平間壮一さんと大東立樹さんにインタビュー。前編では、本作に出演が決まったときのお気持ちや、ご自身のなかでの課題などをお聞きしました。作品の内容にちなんだ質問の回答は、お二人の個性が溢れる内容となっているのでお楽しみに。
お客さんが納得できる芝居の流れにしなきゃいけない
――『無伴奏ソナタ』は、過去にストレートプレイで3回上演されている作品ですが、今回ミュージカル化され、出演が決まったときはどんな気持ちでしたか？
平間：この作品に限らず、劇中であまり伝えすぎないほうがいいこともあったりするじゃないですか。見ている人に“ホントはこういうことを思っているんじゃないかな”と想像させるというか。でも、ミュージカルでは“僕はこう思っています”と歌にして伝えなければいけない場面もあるので。お客さんが納得できる芝居の流れにしなきゃいけないなと思いました。
大東：……僕が歌ったことによって、お客さんに“あれ？ この子、発声がイマイチだな”と感じさせてしまったらストーリーに集中できなくなってしまうので。そんなことが絶対にないように練習しなくちゃ！ と思いました。
平間：でも、リッキー（大東）の演じるギレルモは作業員という役どころだから、あえて“町工場で働くお兄ちゃんが一生懸命歌ってます”みたいな歌い方をするっていうのもありだよね。
大東：わっ、僕のなかにはそういう考え方はありませんでした。すごくありがたいです！
平間：だって、作業員が急にミュージカル発声で歌い始めてもね（笑）。だから、あくまでも街の兄ちゃんがギターを弾いて歌って～みたいな感じでもいいのかなって思うけど。
大東：そうですね。ありがとうございます！
平間：いえいえ（笑）。
演じるキャラクターをちゃんと自分のなかに落とし込むことを大事にしていきたい
――本作の脚本を読んだ感想を教えてください。
平間：実際にやってみないとわからないことがたくさんあるなと思いました。本作の舞台になっている国には、この世界ならではのルールがありますよね。だから、“こういうとき、この国ではどうなっているんだろう”みたいな、台本にも書かれていない要素がたくさん出てくると思うんです。そういうところをみんなで話し合いながら、この国を完成させていくのかなって。
大東：……あっ、すみません！ 今の壮一さんの言葉を噛み砕いて、一生懸命理解しようとしていました（笑）。
平間：あはは！ メイカーに音楽を聞かせちゃいけないというルールも、クリスチャンの周りの人みんなが知っているのかどうかも気になる部分だよね。
大東：そういうのも詰めないとですね。
平間：ね！ それがわかっているとわかっていないのとでは、音楽をやる気持ちも変わってくるから。
大東：そうですね。僕は脚本を読んだとき、ホントにいろんな感情がうごめいたんです。これを自分がどうやって演じようか考えたのですが、“こういうお芝居ができている自分を見せたい”とか“こういうキャラクターを考えてきました”みたいな部分が出たらダメだなって思いました。
平間：フフフ。
大東：そこがちょっとでも出ちゃったら、作品の世界が崩れちゃうような気がして。テクニックで見せようという気持ちは全部捨てて、演じるキャラクターをちゃんと自分のなかに落とし込むことを大事にしていきたいです。
例えるなら、サスペンスドラマのストーリーと主題歌にあるような違和感
――現在、劇中歌のうち3曲がお手元にあるそうですが（取材時）、お聴きになっての感想はいかがでしょうか？
平間：既にすごく好きな曲なんです！ 違和感というか……温かい歌だったりやさしい歌だったりするのに、聞こえてくる音は寂しさなのか怖さなのか、ちょっと暗い雰囲気があったり。歌詞の内容と音楽の雰囲気が違う曲があったり。例えるなら、サスペンスドラマのストーリーと主題歌にあるような違和感というか（笑）。
大東：あはは！ でも、やっぱり壮一さんはスゴいなー。僕は聴いた瞬間、“うぇーい！ってテンション上がっちゃいました。
平間：わははは！
大東：僕、カントリーミュージックとか好きなんですよ。だからもう、家で一人で盛り上がってました（笑）。
平間：うんうん、その気持ちはわかるよ。
――歌唱に関して、ご自身のなかで課題に感じていることはありますか？
大東：僕は、やっぱり発声ですね。日頃、アーティスト活動で歌っている歌とは違うと思うので、そこはまた切り替えて。100％学ぶ姿勢でお稽古に励みたいと思います。
平間：僕は、ポソッと歌うことが課題ですかね。舞台作品だから、バーッと盛り上げるように歌う場面もあると思うんですけど、そこで“俺はこう思ってまっせー！”みたいには歌いたくなくて。ポソッと歌っているように見えるのに、ちゃんとお客さんに届くような歌にするにはどうすればいいんだろうって。自分なりにいろいろ考えてはいるんですが、これから歌唱指導の先生と相談しながらがんばります。
――大東さんはギターを演奏する場面もあります。練習中とのことですが、現状はいかがですか？
大東：今、先生について練習中なんですが、なんとか食らいついてます。さっき壮一さんが、工場のお兄ちゃんがそんなに上手に歌い上げなくていいんじゃないかと言ってくださいましたけど、ギターもたぶん、本番では上手に弾こうと思わなくていいと思うんです。でもそれって、完璧に弾けるようになってこそできることだから。本番までに完璧にしておかないと！
平間：リッキーのギターに引っ張っていってもらうぞ～(笑)
大東：やめてくださいよ～。プレッシャーが……。
平間：あははは！
――平間さんは、普段ギターを弾いたりするのですか？
平間：コードをちょろっと押さえたりぐらいはできますけど、普段からよく触ったりはしないですね。どちらかというと、ベースのほうが好きです。
大東：へー！
平間：俺、昔、ONE OK ROCKと一緒に生活してたんだよ。
大東：えっ!?
平間：事務所の寮に住んでるとき、彼らも一緒だったのよ。
大東：そうなんですか！
平間：だから、常に楽器が周りにいっぱいあったの。彼らは毎日楽器に触っていたから、一緒に遊んだりしましたよ。
大東：へー！ スゴい世界だ。
――パフォーマンス面では、本作でどんなことを大切にしたいと思っていますか？
平間：今の時点では、どんなステージングになるのかわからないんですよね。
大東：そうですよね。ダンスがどの程度あるのかとか。
平間：リッキーはダンスがありそうだけど、僕はそんなにないんじゃないかな。
大東：もし僕にダンスシーンがあるとしたら、カッコつけないことがテーマの一つになると思います。見せるダンスというよりは、“感情が思わずダンスになってしまった”という表現方法というか。歌と同じように、あくまでも自然体を追求していきたいです。
平間：でも俺、めっちゃカッコつけキャラで踊るバージョンも見てみたいな。
大東：あはは！ けど、まだその可能性もありますもんね。
平間：そうそう。
大東：でも……さすがにそのバージョンはない気がします（笑）。
平間：（笑）。まぁ、そういったところも含めて、いろいろと新しいことをやっていきたいね！
お二人が、禁止されたら一番困るものとは……!?
――本作は、音楽の天才・クリスチャンが音楽を禁じられてしまう物語。という内容にちなんで……ご自身にとって、禁止されたら一番困るものは何でしょうか。
平間：お風呂禁止はキツいですね。フツーに。
大東：うわっ、お風呂はヤバいですね。
平間：ね！ 4日がガマンの限界かな。
――お風呂好きなのですか？
平間：けっこうな頻度で入りますね。湯船に浸からなくても、家に帰ったらすぐにシャワーを浴びるし。一度お風呂に入っても、また出かける用事があると、その前に入ってから行くとか。気持ちの切り替え的な意味が大きいかもしれません。スッキリして“よし、やるぞ！”みたいな。
――劇中と同じようにペナルティがあっても、お風呂はやめられない？
平間：あっ、そうだ！ ペナルティがあるんですもんね……でも、待ち合わせに遅刻しそうでも絶対にシャワーだけは浴びたいから、やっぱり僕にとってお風呂は大事ですね。
大東：僕は太陽です。日が出ている時間にカーテンを開けちゃダメとか、外出禁止とか言われたら、ペナルティがあってもやぶると思います。メンタル的に、日を浴びないとダメなんですよ。
――普段から、外に出るのが好きなのですか？
大東：はい。前に風邪で寝込んだときに、ずーっと家で寝ていたら精神状態が大変なことになっちゃって。風邪が治ってひさしぶりに外に出たら、もうホントに幸せだなーって感じたんですよ。
平間：へー！
大東：僕は太陽に助けられているんだなって実感しました。
――また、本作は、すべての人間の職業が幼児期のテストで決定されるという時代が舞台になっています。もしもご自身がこの時代に生まれたら、どんな職業に就いていると思いますか？
平間：何だろうなぁ……ちょっと想像してみます。
――難しければ、お互いの職業を想像していただいても。
平間：実は僕たち、今日がはじめましてなんですよ（取材時）。あっ、でもさっき、（大東が）自分で「アホなので」と言ってたからなー（笑）。
大東：はい、そうなんですよ（笑）。
平間：俺もアホなのよ。
大東：えっ!?
平間：だって今、僕34歳なんですけど、九九をスラスラ言えるように練習をしているんですよ。ヤバいですよね。
大東：ホントですか!? でも、それができればいいってわけじゃないですもんね。もっと大事なことがあるし。
平間：うん、そうなんだけどね。最近は、そういう勉強も大事だなと思い始めた。
大東：そうですね、たしかに。
平間：だから、僕はきっと身体能力を活かせる仕事に就くと思うんですけど……何だろう？
大東：スポーツトレーナーさん！
平間：あー。でも、スポーツトレーナーは人に指示する仕事でしょ？ 俺、「何でもいいよ」って言っちゃうからなー。「そのやり方でいいんじゃない？」って。だから、指導者には向いてないかも。
大東：なるほど。
平間：となると、やっぱりダンサーになるのかな。
大東：でも、ダンサーはピッタリだと思います。僕は何だろう……あっ、新聞配達！
平間：なんで（笑）？
大東：僕、自転車がうまいんですよ。
平間：2リットルのペットボトルが入った袋を、ハンドルの片側にかけて運転できる？
大東：たぶんできます。
平間：えっ、両方のハンドルにかけなくても大丈夫？
大東：はい、重心はとれると思います。
平間：そうなんだ！ じゃあ、彼は自転車うまいです（笑）。
取材・文：林桃
Photo：野村雄治
公演概要
『無伴奏ソナタ -The Musical-』
【原作】 オースン・スコット・カード 【翻訳】 金子 司
【脚本・演出・作詞】 成井 豊 【音楽】 杉本雄治
【出演】
平間壮一 多田直人(キャラメルボックス) 大東立樹 熊谷彩春 / 藤岡正明
畑中智行(キャラメルボックス) 原田樹里(キャラメルボックス) 染谷洸太 西野 誠 町屋美咲 / 霧矢大夢
【東京公演】 2024 年 7 月 26 日(金)～8 月 4 日(日) サンシャイン劇場
【大阪公演】 2024 年 8 月 10 日（土）～8 月 11 日（日） 森ノ宮ピロティホール
企画・製作：ナッポスユナイテッド アミューズ
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京【芸術文化魅力創出助成】
公式サイト：https://napposunited.com/sonatathemusical/
公式 SNS（X）：@mubansoumusical
