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水田航生インタビュー 『ロボット』 「人間の生き方や労働のことを考えるきっかけになったら」(前編)

INTERVIEW

2024年11月より東京・シアタートラムにて上演される、世田谷パブリックシアター主催公演『ロボット』。

チェコの国民的作家、劇作家カレル・チャペックが100年前に描いたSF戯曲の金字塔が、ロボット社会が現実味を帯びつつある現代、ノゾエ征爾さんの演出によって上演されます。出演には水田航生さん、朝夏まなとさん、渡辺いっけいさんらが名を連ね、初共演となる3人の化学反応が起きる2024年冬が待ち遠しいというファンは多いでしょう。

今回THEATER GIRLでは、ロボットによる人類抹殺計画後にただ1人生き残るロボット研究者・アルキスト役を演じる水田航生さんにインタビュー。前編では、水田さんにとっての“生きる意味”や“働く意味”をお聞きするとともに、文明の発展を問う本作の魅力や役作りについてお聞きしました。

インタビュー後編はこちら

「この作品がノンフィクションになるのではないかという恐怖心」水田航生と『ロボット』との邂逅

――公式サイト掲載のコメントにもありましたが、『ロボット』を読んでいろいろと考えを巡らせたとのこと。最初に読んでから少し時間が経ったと思いますが、今胸に残っている作品への印象はどんなものですか。

最初に原作を読んだのは今年入ってすぐの頃でした。そこから準備稿をいただいて読んでみて、原作からは若干、印象が変わりましたね。自分の役に注目して読んだというのもあるのですが、役がより人間味を帯びて、近くに感じたというか。

原作の印象では、アルキストは悟った人間で、最後の方は神々しさすら感じさせる雰囲気だったのですが、(準備稿では)割と地続きで、人間的な揺らぎが見え隠れしていて、共感できる部分が増えたという印象です。

――100年前の作品とは思えないくらい、現代社会に通じるものがあって驚くと同時に、ちょっとした怖さも感じました。

そうなんですよね。しかも、100年後の今から、さらにちょっと先の未来まで描いている感じもありますよね。今の時代が、この作品でいうロボットが出始めた時代で、作品の中ではそこからどんどんロボットが普及していって、当たり前のように人間に混じってロボットがいる世界になっていく。

今ではまだありえないけど、ちょっとした未来では、この作品の内容がノンフィクションになるのではないかという恐怖心もありました。ここまで作品の内容通りになっているので、このままいくと本当に人間が必要じゃなくなっていくのではという怖さも感じます。

「幸せになるために生きる」コロナ禍を通して見つけた“生きる意味”

――作中ではロボットが普及していく過程で、人類から“生きる喜び”や“働く意味”が失われていきましたが、水田さんにとっての“生きる喜び”や“働く意味”とは?

この『ロボット』を読んだときに、コロナという危機に直面したことに思いを馳せたんですよね。この仕事をしている人って、生きていく上で必要じゃないと言われれば必要じゃない仕事をしている。だから、この作品に触れる前に、コロナ禍で似たようなことを考えていたなと思ったんです。

当時はこの仕事を、「正直続けられるのか、続けられないかもしれない」というところまで考えていました。そのとき考えて行き着いた“生きる意味”は、「幸せになるために生きる」というシンプルなものでした。その日レベルで考えて、寝る前に「今日も1日幸せだったな」と思えるような。

“働く意味”にもつながるのですが、働いてお金がほしい、じゃあそのお金でなにをしたいのかというと、どこかに行きたいとか美味しいご飯を食べたいとか、その人が幸せだと感じることにつながるじゃないですか。そういうことをコロナ禍でぐるぐると考えて、結局人間って、その人が思う幸せに身を置きたいから生きているんだろうなと思うようになりました。

『ロボット』を読んで改めてぐるぐる思考を巡らせましたが、最後はやっぱりシンプルに、僕が幸せだと思えたら、生きる意味があるって言えるのではないかというところに行き着きました。 この仕事はありがたいことに、自分が幸せだと思ったことを、観て、幸せになってくださる人がいるじゃないですか。それって、「なんてやりがいのある素敵な仕事なんだろうな」と思います。

本作を読み解くキーワードの1つは「見た目は人間のロボット」

――役作りについてもお聞かせください。準備稿を読んでアルキストに親しみが持てたとのことですが、とはいえ、1人だけロボット社会に残される人間というところで、かなり難しい役柄かと思います。この役をどう捉えて、どう臨んでいこうと思っていますか。

自分1人だけが人間って、考えたらめちゃめちゃ怖いことじゃないですか。しかもこの作品のロボットって、見た目は人間そのものっていうのがすごく大きな要素だと思っていて。

アルキストは銀色のロボット相手じゃなくて、見た目が同じ人間の姿をしているロボットを相手にしているから、疎外感や恐怖を感じたんじゃないかなと思いました。周りが銀色のメカっぽいロボットだったら、もっと冷徹になれたのではと。

――確かに見た目が近いと、相手はロボットとわかっていても、通じ合えるかもしれないという期待が芽生えてしまいそうな気がしますね。

それも今回の作品のポイントですよね。1番最初にヘレナが「ロボットにも人権を」と声高に主張するわけですが、やっぱり見た目が同じだからこそ、彼らが笑わないことや恋をしないことが当たり前になっていること自体がおかしいじゃないかと考えるようになる。見た目は同じなのに中身や感覚が違うというところも、大事なポイントとして深めていきたいですね。

ゼロからの模索に意気込み。共演者は全員初共演

――今回一緒に作品を作っていくノゾエ征爾さんをはじめ、渡辺いっけいさん、朝夏まなとさん等、全員と初共演だと伺いました。

そうなんです。まさかのどなたともご一緒したことがなくて。ビジュアル撮影で少し挨拶をさせてもらったのですが、人見知りが発動しないか心配です(笑)。

――キャリア的にも、全員が初めましてという現場は久々ではないですか?

最近はなかったですね。なので、初心に立ちかえるような気持ちです。もともと人見知りする方なのですが、30歳を超えてそういうことを言っていられる年齢でもないですし、座組の中では最年少になるかと思うので、ガツガツいこうと思っています。

取材・文:双海しお
撮影:野田涼
ヘアメイク:菅井彩佳
スタイリスト:山本隆司(style³)

インタビュー後編はこちら

公演概要

『ロボット』

【作】 カレル・チャペック「ロボット」 (海山社・栗栖茜訳)
【潤色・演出】 ノゾエ征爾

【出演】
水田航生 朝夏まなと / 菅原永二 加治将樹 坂田聡
山本圭祐 小林きな子 内田健司 柴田鷹雄 根本大介 / 渡辺いっけい

【日程】2024 年 11 月 16 日(土)~12 月 1 日(日) 【会場】 シアタートラム

【チケット料金】 (全席指定・税込)
一般 8,500 円 / 高校生以下 4,250 円
※劇場友の会、アーツカード、U24 割引あり ※託児サービスあり ※車椅子スペース取扱あり

【チケット一般発売】 2024 年 9 月 15 日(日)10:00~

<兵庫公演>
【日程】 2024 年 12 月 14 日(土)15:00、12 月 15 日(日)13:00
【会場】 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【チケット料金】 9,500 円(全席指定・税込)
【チケット一般発売】 2024 年 9 月 15 日(日)

【お問合せ】 世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515 https://setagaya-pt.jp/

【主催】 公益財団法人せたがや文化財団(東京公演)/兵庫県、兵庫県立芸術文化センター(兵庫公演)
【企画制作】 世田谷パブリックシアター

<SNS・HP>
【『ロボット』公式 X(旧 twitter)】 @robot_sept2024
【世田谷パブリックシアター公式 X(旧 twitter)】 @SetagayaTheatre
【『ロボット』公式ホームページ】 https://setagaya-pt.jp/stage/15694/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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