横山由依インタビュー『三十郎大活劇』「今の時代で自分はどう生きるか、考えてもらうきっかけに」（後編）

2022.04.02

INTERVIEW

――先ほど横山さんも触れられた通り、今はコロナ禍でさまざまな制限があったり、直接戦火を目にする状況ではないとはいえ、日々戦争に関する報道を目にするような状態です。今作に込められた“LOVE & PEACE”というメッセージの大切さをしみじみ感じてしまうこの時代に、この作品へ関わるにあたって、どういった思いで臨まれていますか？

やっぱり特別な思いがありますよね。きっと、コロナ禍に入る前だったりしたら、またちがった解釈があったように思うんですけど。自分としても考え方が変わってきている中で、この作品のラストシーンがすごくいいなって思ったんです。昔は、どんなにボロボロになっても一生懸命やる、頑張るっていうのが、カッコよさだったり強さだったりだとされていたと思うんですけど。それだけじゃないんだよって伝えることは、この時代にすごく意味のあることだと私は思うので。そのシーンに至るまでの物語の中で、自分が演じるおやつにはどんな役割が果たせるだろうと考えたりします。

――同意の気持ちでいっぱいなのですが、ネタバレになってしまうので詳しくは書けないのが歯痒いです。

そうですよね。観ていただいて、メッセージを受け取ってもらいたいなって思います。昔と感覚が変わってきている部分が、いい意味であると思うので。今の時代にフィットする作品なのかなって、個人的には思いますね。

シンプルだけど、全部がうまくいっていないとできないこと

――次は少し柔らかめの質問になるのですが。主題の“LOVE & PEACE”にちなみまして、横山さんが日常生活で“LOVE & PEACE”を感じるのはどんな時でしょうか？

これはけっこういろいろとあるんですけど。おいしいご飯を食べている時と寝る時、ですかね。それが幸せかなって思います。ご飯を食べる、寝るってシンプルなことではあるんですけど、例えばすごく深刻な悩み事があったりしたら、どちらも満足にできなくなることじゃないですか。

――考え過ぎて寝付きが悪くなったり、食欲が落ちてしまったりというのはよくありますよね。

だから、ご飯をおいしく食べることや、よく寝ることって、わりと全部のことがうまくいってないとできないことだと思うんです。そのふたつがあるということ――好きな人と共にご飯を食べたりしながら、自分で満足な睡眠がとれるっていうのが、私にとっての“LOVE & PEACE”というか。好きなことでもあり、平和の象徴でもあるのかなって感じますね。

――たしかに。コロナの影響で、誰かとご飯を食べたりするのもなかなか難しい状況ですし。

そうなんですよ！　前は全然当たり前のことだったのに、もう当たり前じゃなくなっちゃいましたからね。ひとりでご飯に行くのですら、めちゃくちゃ躊躇しますし。だから、おいしいご飯を外食することや、好きな人たちとご飯を食べられることって、特別なことだったんだなって気付きました。

――では最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

まだ全然油断できない日々が続いているので、劇場に足を運ぶのを躊躇してしまわれる方もいると思うんですが、笑っていただけたり、少し泣けるところもあったりと楽しんでいただけると思っています。私たちも先が見えない中で、ひとつのものを作るためにみんなで集まってお稽古をしたりしながら、一生懸命作品作りをしているので、よりたくさんの方に観ていただいて、この作品の持つメッセージをお届けできたら幸せです。お時間がありましたら、是非劇場までお越しいただけたら嬉しいです。