中村守里インタビュー「新しいタイプの役柄に挑戦している自分を見てほしい」
――演劇部の田宮ひかるが「わりと園田のこと好き」と口にしてから、はじめて宮下が笑顔を見せますよね。とてもいいシーンでしたが、無表情から心を開くというとても難しい場面だったように感じました。
話しかけてくれること自体がうれしくて、「人とつながった」っていう気持ちが宮下にあったと思うんです。「園田が好き」っていう共通の話題ができて、少し打ち解けられた感じ。「わりと」っていう言葉の軽さが、宮下を変えたんだろうなって気がします。
「自分は(園田を)見てるだけでいいかな」って思っていたのが、たまたま“アルプススタンドのはし”にいた生徒たちによって感化されていって。田宮さんもそうですけど、元野球部の藤野(富士夫)くんから「もっと応援しろ」って声をかけられたりすることで、宮下は気持ちを表に出すようになる。
試合に勝つ可能性はないかもしれないけど、見てるだけじゃ伝わらないし、なによりも「園田くんのためになにかしてあげたい」って感情が湧き出てきて。映画の最後のほうで、宮下が大声を出すシーンがあるんですけど、その時は「やっと大声出せた!」って解放感がありました。
――あのシーンは見ているこちらも清々しかったです。映画の中で、ご自身がもっとも印象的に残っているシーンがあれば伺えますか?
けっこういろんなシーンが印象的なんですけど……。私は厚木先生のキャラクターが普通に好きなんです(笑)。「もっと応援しろ!」って生徒にずっと言ってるし、暑苦しいタイプなんですけど、本当に優しいし情熱があっていいなって。
宮下が厚木先生に言い返しちゃうシーンがあるんですけど、あそこも自分がストレートに一歩を踏み込めないから、傷つけてしまったと思うんです。「なんでそんなに前向きになれるの?」「落ち込んだりしないの?」って。そういう心の揺れも含めて、厚木先生とのシーンがやっていて楽しかったですね。
負けず嫌いなところ、内に秘めた部分が似てる
――中村さん自身が、映画で演じられた宮下と重なる部分はありますか?
宮下は、勉強しか取り柄がないのに、テストの成績で久住に負けちゃう。でも、それを表に出さないじゃないですか。そういう負けず嫌いなところ、内に秘めた部分が似てるなって思いました。自分と重なる部分も多かったので、わりと演じやすかったですね。
――映画の最後で、大人になった宮下たちは「野球は下手だけど、練習だけは人一倍頑張る矢野」がプロで活躍する試合を応援しに行きます。あのエンディングは痛快でした。
矢野くんはすごいですよね。努力家だし、カッコいいなって。逆に言うと、今順調にいっている人でも、将来的にはどうなるかわかんないってことですよね。だからこそ、ひたむきに頑張る矢野くんみたいな人が報われるのは、気持ちいいラストだなって思いました。