橋本さとしインタビュー 『キオスク』 「自分自身そこに携わる人間として“エンターテインメント”というものを信じている」
――出演者の皆さんの印象はいかがですか?
まだ、顔を合わせる機会はこれからなんですけど(※取材時)。山路(和弘)さんや一路(真輝)さんは以前共演したことがあるんです。当然、吉田メタルも(劇団☆新感線にて)。僕、すごく人見知りなので知ってる人がいないと緊張しちゃうんですよね(笑)。やっぱり自分のポジション的にはムードメーカーになると思うので、いい空気の流れるカンパニーにしたいなと思っています。
若人たちも出ますから、その人たちからもいい刺激をもらって、いいエキスを吸って、僕も若々しくいたいなと(笑)。がっつりストレートプレイをやるからには、それぞれが骨太な生きざまをぶつけ合う場所になると思うので、そういった意味では本当に頼りになる人たちが集まっているなと思います。
――今回、戯曲版は日本初上演となりますが、意気込みを聞かせていただけますか。
今作は、一度朗読劇で上演されているのですが、朗読劇ってお客様には主に、耳から入ってくるじゃないですか。だけど今回は、視覚的にも、より立体的に表現される。それを表現する武器というのは、役者がこの身ひとつで演じるところだと思うんです。
今回、第二次世界大戦という近い時代の戦争が起こる直前の話でもあって、ナチスドイツとユダヤ人の関係性は、映画や書籍でも皆さんが知っているテーマかと思いますし。その時代に委ねざるをえなかった人々の苦悩を、残酷な物語としてではなく、ちゃんとしたテーマで皆さんに伝えられる作品だと思っています。
明日への活力になってもらいたい
――稽古でカンパニーの皆さんと一緒に取り組みたいことや、期待されることはありますか?
この状況で、みんなと一緒に飯を食いに行くこともできなくなっちゃってるんでね。本当は同じ釜の飯を食って、その人の人となりを知って、そこでより関係性が深くなって、信頼関係が出来上がる場所だったんですけど、今はそれができないので。
だからこそ、稽古場で本気でみんなと当たり合って、集中力を高めてそれぞれのキャラクターを作り上げていくことが、とても大事になると思うんです。僕も先日まで、ミュージカル『ビリー・エリオット』という作品に出ていて、この状況下ですが無事に完走できたんですけど、やっぱり、稽古場でも細心の注意をはらいながら、感染予防や、今までは考えなくてもよかったことが行われていました。
その中でみんなが、「いい舞台を作る」というだけではなく、「この作品を最後まで届ける」という、より太いベクトルに向かって団結できたので、今回も、「いい作品をお客様に届けたい」という一心で、稽古に臨んでいきたいなと思います。
――今は、カンパニーの皆さんとご飯には行けないですし、稽古場で信頼関係を深めていくことが大事ですよね。
まさか、こんな時代が来るとは夢にも思っていなかったですよね。だからこそ、今まで当たり前だったことがどれだけありがたくて、自分たちがどれだけ好きなことをして生きてきたのかとも思いますし。でも、好きだけじゃ済まされないし、だからこその責任もあります。やっぱり、お客様に心の潤いを与えて、明日への活力になってもらいたいし、とにかく観て何かを感じていただきたい。これが演劇の原点なんじゃないかと考えられた機会でもありましたね。