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ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』脚本・演出 西川大貴さん特別インタビュー

INTERVIEW

ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』が、11月15日(金)より12月15日(日)まで、DDD青山クロスシアターにて上演されます。今作は、オフ・シアター(小劇場)からオン・シアター(大劇場)への進出を視野に入れた、世界にも通用する日本発のオリジナルミュージカルを創造しようという試みのもと、二度のプレビュー公演ののちに本公演が行われる、日本では珍しいかたちでの公演となっています。

脚本・演出を担当するのは西川大貴さん。自身も『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』などに出演し、ミュージカルを中心に俳優として活躍するほか、脚本・演出として、さらにはアーティストとして幅広い活動をされています。

今回のインタビューでは、立て込みの音とタップダンスのリズムが響く稽古場にお邪魔して、役者と演出家、双方の視点を持つ西川さんに、作品の見どころなどをじっくりうかがってきました。

今作のみどころ

――まずは今作の見どころについて聞かせてください。

ミュージカルにはお芝居とダンスと歌という要素がありますが、この作品ではそれぞれを楽しめるシーンがしっかりあるので、どれをとっても見どころがあるのではと思います。ただミュージカルにおいて僕が特に大事だと思っているのは音楽ですね。

今回、音楽を担当している桑原あいが挑戦したのは、日本らしい邦楽の要素と、ある意味では“ミュージカルらしさ”とも言える洋楽の要素の融合、そして現代的な音楽とスタンダードナンバーの融合です。2019年らしい曲調を新しく作るということだけでなく、ミュージカルらしい音楽や、ジャズ、ロック、ヒップホップなど、これまで愛されてきた音楽のテイストを十分に含んでいる――そんないい音楽がたくさんできあがってきているので、この作品の一番の要となるのではないかと思っています。

――さまざまな要素が散りばめられた音楽が楽しめそうですね。

今の日本で「日本らしい音楽ってなんだろう?」と考えた時に、みんながみんな演歌やお琴の音色を聴いているわけではないし、世の中に溢れているJ-POPというものがある。J-POPは、海外からのR&Bだったり、ロックだったりを取り入れて“ニホンナイズ”して生まれたものだと思うので、そもそも日本の文化がそうやってさまざまなものを取り入れていく文化だと感じたんです。

だから今回、日本オリジナルのミュージカルを作るにあたって、ミュージカル自体が海外の文化で、それを日本人がやろうとしているという部分を素直に受け入れた上で作っていくことが大事だし、そうすることが今っぽくもあり、日本っぽくもあるんじゃないかなと。振付の加賀谷一肇とも、桑原とも、それについてはいつも話をしています。

現代的な音楽とスタンダードの音楽の関係については、今巷でも、70年代〜80年代あたりの音楽をリスペクトしたものがポピュラーになっている気がするんですよ。音楽以外でもレトロなものが好きっていう若者も多いですし。TikTokにしても、オリジナルのダンスを考えることより、誰かの真似をするということが重要視されていますよね。何かを新しく生み出すというよりも、再認識することや、再認識した上で生まれ変わらせることが今の流れのように思うので、そういうところは意識しながら作っています。

「日本人のための日本語で書かれたミュージカル」にかける思い

――作品の大きな柱として“日本人のための日本語で書かれたミュージカルの創造”がありますが、そこにかける西川さんの思いを聞かせてください。

僕が海外のミュージカル作品に関わる中で感じていたことなんですが。歌詞を日本語に直すと、セリフの内容が物理的にもとの3分の1しか入らなくて、泣く泣くカットしなければならないニュアンスが出てくるんです。

――単にセリフを言うのではなく、歌うとなると、入れられる単語の数に制限がかかりますよね。

音楽や元々のセリフが素晴らしいからこそ、役者としては「伝わるかどうかは分からないけれど、カットされてしまったニュアンスを含んだ演技プランにした方が良いだろうか」というような、葛藤を抱えていたりします。

それに、セリフにアメリカンジョークが入っていたりすると、演者もお客さんも、現地の人と同じようには分からないですよね。でも、もう台本には含まれてしまっている。かといって、そこで日本のギャグに置き換えるのも違う。じゃあどうしたらいいんだ、と(笑)こういったギャグの問題だけじゃなく、例えば人種差別など、調べたりしただけでは理解しきれない題材を扱った作品に関わった時もジレンマを感じます。つまり自分がミュージカルに出演するにあたり、まずは「外国人にならなければいけない」。それが最低条件に含まれているのは、かなり負荷がかかるんです。

だから、その葛藤や負荷がない状態でミュージカルをやれたら、もっと可能性があるんじゃないかと役者同士でよく話をしていて。「日本発の作品が1本でも多く生まれていけばいいな」と思っていたところに、今回のお話をいただいたので「ぜひやらせていただきたい」とお受けしました。

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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