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Musical『The Parlor』が開幕! 美弥るりか、花乃まりあ、剣 幸らが紡ぐ“三世代の女性たちの想い”と、自分らしく生きることの大切さをキャスト陣が熱演!

REPORT

2022年4月29日(金・祝)に東京・よみうり大手町ホールにて初日を迎える Musical『The Parlor』 。開幕に先立ち前日の4月28日(木)にゲネプロが公開され、直前に行われた取材会には美弥るりか、花乃まりあ、剣 幸、そして作・演出の小林 香が登壇。作品に込めた想いや稽古中のエピソード、初日に向けての意気込みを語った。

美弥るりかさんのインタビュー(前編)はこちら
美弥るりかさんのインタビュー(後編)はこちら

※公演内容に一部触れています。

本作は、演出家:小林香がジェンダーギャップ指数120位と発表された日本で、生きづらさを抱える人々をテーマ描くオリジナル作品。アメリカで活躍する新進気鋭の作詞・作曲家:アレクサンダー・セージ・オーエンのバラエティに富んだドラマチックな楽曲と共に、過去から現代へと紡がれてきた三世代の女性たちが過ごす「パーラー」を舞台に、彼女たちの生き様と、そこに集う人々の物語を描き出す。

主人公の円山朱里を演じる美弥るりかは、母の死により逃げるように海外で生活するようになった孤高のゲームクリエイターを演じる。「祖母の阿弥莉さんに日本に呼ばれて帰国したことで、これまで遠ざけていた人間関係に向き合うことになります。その中で朱里も少しずついろんなことを感じながら彼女なりに小さな一歩一歩を踏み出していく・・・・・・そんな人物を演じます」とコメント。

演出の小林香から「普段の美弥さんは“この世のものではないような役”を演じることが多いと思いますが(笑)、今回は普通の人の役。砂に水が染みるように朱里の感情を台本の中からどんどん自分の中に吸収して、自分の心をクルンクルンと動かしながら朱里という役を生きてらっしゃるなと思います」と稽古場での様子が語られた。

花乃まりあは「私は剣さん演じる阿弥莉さんの娘で、美弥さんが演じる朱里さんの母にあたる、「パーラー」という喫茶室を作った円山千里と、朱里さんの異父妹でトイッスル社の社長令嬢・草笛灯の二役を演じさせていただきます」と役どころを説明。

小林とは昨年6~7月に上演されたミュージカル『The Last 5 Years』以来の再会となる花乃は「こんなに早いタイミングで、また香さんとお仕事でお会いできると思っていなかったので、また香さんの演出を受けられることが本当に嬉しいです」と笑顔を見せる。

それに対し小林が「花乃さんは芝居・歌・ダンス・容姿と四拍子揃った稀有な方。そこにこの1年で人生の年輪みたいなものが加わって、月日を経て人ってこんなにもいい方へ変わっていくものなんだということを学ばせていただいています。マグカップを渡す芝居の中に相手への思いやりみたいなものがあったり、ご自身の中から出て来るものをお芝居の中に上手く出して演じてくださっているなと感じています」と褒めると、「香さんは“飴と鞭”の使い方がとってもお上手な方だなと思ってて(苦笑)。稽古中に痛いところを突かれた後、一生懸命頑張ってちょっとでも変化があったら、“出来た・出来ない”ではなく“何か変わろうとしたこと”を見逃さずに褒めてくださるので、とてもやりがいのある、頑張りたいと思えるお稽古をしてくださる演出家様だと思っています(笑)」と、悩みながらも充実した稽古だった様子をうかがわせた。

「円山阿弥莉、75歳!」と元気良く自己紹介をしたのは、ベテラン剣 幸。

朱里と灯の祖母である阿弥莉は、美容室「パーラー」を訪れた人の髪をカットすることで、その人が幸せになったら自分も幸せだという人生を歩んできたのだが――。

「交通事故で娘・千里を亡くし、阿弥莉の時計は多分そこで止まってしまったんだと思います。そして自分自身もだんだん年を重ねて、後継者のいない「パーラー」を閉めると決断したところからこのドラマが始まっていきます。私は今回で小林さんとご一緒するのは3作目なのですが、すべておばあさん役(笑)。おばあさん役を演じるのが大好きですけど、今回は回想シーンが大変で「若くなれな~い」って思いながらやっています」と、ユーモアたっぷりのコメントに取材陣からも笑いが起こった。

「剣さんは相手の芝居をしっかりと受けて、それを心の中におとしこんだお芝居をされる方。黙っていても“何”を感じていらっしゃるのか分かるし、それを細やかに表現してくださるので、カンパニーに一人いていただいたらいいなと思う頼もしい俳優さんです」と、絶大な信頼を寄せているのが伝わって来た。

「どの俳優も本当に素晴らしく、細やかな芝居をずっと折り重ねて稽古を積み重ねていってます。この御三方は血のつながった家族を演じられるのですが、同じところ(=宝塚)で育って来られた方々ですので、何かしら空気のに“品”や“知性”であったり、柔らかい雰囲気など共通する部分が多くあるなと感じております。稽古の初期の段階から既に家族のような雰囲気で稽古を進めさせていただきました」と稽古場での様子を振り返る一方で、「今、地球全体が暗い雲に覆われて本当に大変なことになっている状況です。ある国では人口の半分以上の子供たちが国内外に避難して難民として暮らさざるをえない状況を大人が作っているわけですけが、生まれて来た子供たちが「生まないでいてほしかった」と思うような世の中にしないために、今私たちが出来ることは何だろうと考えた時に、一人一人の力で大きな変革は無理だけど、身近にあるささやかな気づきであったり、何かあったら無視せずにしっかり“それ”を見つめること、言葉にして伝える事、考える事が次の大きな自由に繋がっていくんだと伝えられたらいいなと思ってこの作品を書きました。

そこの部分を大切に、作品をしっかり完成させてお客様の前にお披露目したいなと思っています」と静かな口調の中にも力強さが込められた小林の言葉に大きくうなづく美弥、花乃、剣。その表情からも、翌日の初日に向けて残り少ない時間の中でさらに良い作品にしようというキャスト陣の気概が伝わって来たのだった。

そんな作品に大きな力を与えているのが、今アメリカで注目を集める作曲家・アレクサンダー・セージ・オーエンの楽曲の数々。

お気に入りのナンバーについて質問されると、

「今日、Zoomで初めてアレクサンダーさんとお話したのですが「場所は離れてて国も違うけど、いつも気持ちはそっちにいるからね」って言ってくださって・・・・・・。そんな温かくてチャーミングさもある素敵な方でした。彼が歌っている曲のデモテープを聴かせていただけたのですが、どの曲も本当にステキでオシャレで「こんな風にメロディーと自分の声がひとつになって歌えたら、どんなに気持ちいいんだろう」と思いました。彼の魂が自分にも宿ってくれると思って大切に歌いたいと思っています。

お気に入りの曲は・・・・・・どれも「この曲歌い終わったら幕が閉まってしまっていいんじゃないか?」って思うくらい、全部が大曲なんですよ(笑)。1曲1曲が壮大で、物語もあって本当に素敵な曲だらけなのですが、この3人で歌わせていただく「ザ・パーラー」という曲がとてもとても素敵な曲なのでぜひ聴いていただきたいなと思います。朱里のソロ曲の「アナザーワールド」は、ちょっと古い言い方ですけどピコピコとゲームっぽくて(笑)、ゲームクリエイターの朱里らしい世界観を表現している曲なんです。あの曲を聴くと「朱里が見ている世界はこういう感じなんだろうな」って感じさせてもらえるので、お気に入りです」と美弥。

花乃も「どの曲も大好きで悩ましいけれど、やっぱり「ザ・パーラー」ですね。初めてアレクサンダーさんのデモ音源を聞いた時に自然と涙が出てきたくらい、本当に素晴らしい曲だなって思いました。香さんが考えたこの作品の世界を彼が理解して音楽に乗せてくださった・・・・・・「素晴らしいチームだな」という感動と共に日々歌っています。あともう一曲、植原さんと一緒に歌う「Tシャツみたいな自分」という曲は、お互いの存在とかお互いの言葉によって特別な存在になれるかもっていう希望を見出していくっていう歌。「この人とこれからも関わって生きていこう」って思う時の素敵な感情の始まりの一番フレッシュで大切なところをギュッと絞ったみたいな曲に、私も歌いながらいつも勇気をもらえるので、その曲がとても好きです」と、熱く語った。

同じく『ザ・パーラー』を上げた剣だが、もう一曲選んだのは「呼ばない名前」。

「親が子供を亡くすという、そんな悲しい事ないと思うんです。亡くなった娘の名前を呼べないけど、でも孫が二人いる・・・・・・そんな葛藤を、アレクサンダーさんが優しく書いてくださっています。物語の中で描かれる四世代の女性の膨大な時間を、彼の曲がノスタルジックに、時に新しかったり、いろんなバリエーションの曲を出して来てくださって、それがこの作品の壮大なドラマにピッタリだなって思いました。そんな素敵な曲を歌わせていただいて本当に幸せです」とちょっぴり目を潤ませながら語っていたのが印象的だった。

最後に、初日に向けてメッセージを求められ、

美弥「今日まで大切に作り上げてきたこの作品を、皆さんにお届けできるのをとても嬉しく思います。ここまで私たちを導いてくださった香さんを信じて、そしてここには居ませんが植原卓也くん、舘形比呂一さん、北川理恵さん、そして坂元健児さんの7人で生まれる繊細な空気を1日1日1回1回、感情を大切に丁寧にお客様にお届けできたらなと思っています。ちょうどゴールデンウイークなので、一人でも多くの方に劇場でお会い出来たら嬉しいなと思っています。どうぞよろしくお願いします」

花乃「この作品に込められたメッセージはとても一言では語れませんが、私たちが普段生きている日常と同じようにいろいろな個性とか様々な事情を持った人たちが集まって、“名もなき戦士”となって小さな力を重ねて世界を変えようとする・・・・・・奮闘していく物語です。お稽古中に香さんから「私たち自身が本気で世界を変えるんだっていう思いをどこかで持ってほしい」というような言葉をいただいて、私も深い深いこの作品を演じながら世界を変えるつもりで頑張りたいと思いますので、ぜひこのクエストを見届けてください!」

剣「この作品を見た方々が、いろんな感じ方をしてくれると思います。見て見ぬふりをしない、ちゃんと自分で考えてもう一歩先を考える、「しょうがないよ」と思わずに様々な選択枝があるのか、何も打つ手がないのかを考えて自分の人生を自分で決めていけるんだというのをって感じ取っていただけたら嬉しいなと思います。心を込めて演じさせていただいきたいと思っています」

小林「G.W.なので世の中に楽しいことがいっぱいあると思いますが、“劇場に行く”ことも本当に楽しいことだと思います。作品のテーマ的にはいろんなものが組み合わさった深いテーマを持っておりますが、エンターテイメントとして楽しく見ていただける作品になっているので、いろいろな娯楽の中からぜひ観劇を選んでいただき、私たちが繰り広げる『ザ・パーラー』に遊びにいらしていただけたらなと思っております」とアピールし、取材会は終了した。

その後ゲネプロが行われ、帰国した朱里と祖母が経営する「パーラー」に集まる人々との心の交流が描かれる。

パーラーの常連で、幼い娘を育てるシングルファーザーの巧(植原卓也)、クロスドレッサーのザザ(舘形比呂一)、ゲーマーの主婦アリス(北川理恵)。

彼らが抱える様々な葛藤、人生が次々と浮き彫りになる、さらに亡き母にうりふたつの異父妹・灯の登場で朱里の心はかき乱される。

人とのかかわりを望まない朱里に自社の人気ゲーム「トイ・トイ・トイ」のPCゲーム版の制作を依頼する灯。仕事を通じて姉と祖母の「会い」に来た灯を受け入れられない朱里。

彼女の記憶の中に現れる母との幸せな記憶が、あまりにも切ない。

今を生きるクールで人とのかかわりに臆病になっている朱里と、母に髪を切ってもらったり母の淹れたココアを飲んで笑顔を浮かべる幼い朱里を、美弥が自然体で演じる。

花乃の、姉を慕うひたむきな灯と、朱里をはじめ「パーラー」に集う人々を優しく包み込むような包容力あふれる芝居に引き込まれてしまう。

剣が演じる阿弥莉のはつらつとした笑顔の裏にある哀しみ。

娘の気持ちが分からず悩むシングルファーザー巧の葛藤を、植原が軽妙かつ愛情たっぷりに演じる姿も新鮮だ。

千里の旧友で、「パーラー」を訪れたことでザザが“本当の自分”に出会えた時の表情には、思わず胸にこみ上げるものがあった。

夫に逆らえず、大好きなゲームや本当の自分を封印しているアリスの苦しさを想像すると、胸が詰まる。

そして灯の父でトイッスル社の社長・草笛遊史の胸の内にも、ある出来事が重く暗い影を落とし続けていた――。

登場人物の誰に感情移入しても共感できる部分があり、映像技術を駆使した舞台演出、心を揺さぶる音楽と歌声、そしてバーチャル空間にダイブしたキャスト陣の動きは見ているだけでワクワクする。

小林香が作品に込めた想いと、そこに生きる人々と共鳴するキャスト陣の魂の歌声を、ぜひ生で感じてほしい。

東京公演は、5月8日(日)まで、よみうり大手町ホールにて上演。

その後、5月14日(土)、15日(日)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで兵庫公演が上演される。

文・撮影:近藤明子

美弥るりかさんのインタビュー(前編)はこちら
美弥るりかさんのインタビュー(後編)はこちら

STORY

世代を越えて受け継がれ、さまざまな人の思いが交差してきた場所があった。そこは「ザ・パーラー」。L.A.在住のゲームクリエイター・円山朱里(美弥るりか)は、祖母の阿弥莉(剣幸)に呼ばれて数年ぶりに帰国する。朱里は、母の千里(花乃まりあ/二役)がある悲劇によってこの世を去ってから、育ててくれた祖母に複雑な思いを抱えていた。阿弥莉は、パーラーを閉店すると朱里に告げる。しかし、パーラーの常連である、幼い娘を育てるシングルファーザーの巧(植原卓也)、クロスドレッサーのザザ(舘形比呂一)、ゲーマーの主婦アリス(北川理恵)はパーラー閉店に反対する。 そこへ、千里にそっくりな女性が現れる。千里の死後すぐに、大手おもちゃメーカー・トイッスルの社長で父親である草笛遊史(坂元健児)に引き取られた、朱里の妹の灯(花乃/二役)だった。灯は朱里にトイッスルの人気ボードゲーム「トイ・トイ・トイ」のPCゲーム版の制作を依頼するが、事態は思わぬ方向に・・・

公演概要

Musical『The Parlor』

作・演出:小林香
作曲・編曲:アレクサンダー・セージ・オーエン

出演:美弥るりか 花乃まりあ 植原卓也 舘形比呂一 北川理恵 坂元健児 剣幸

<東京公演>
よみうり大手町ホール
2022年4月29日(金・祝)~5月8日(日)

<兵庫公演>
兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
2022年5月14日(土)、15日(日)

企画・製作:株式会社アミューズ

公式ホームページ:https://theparlor.jp/
公式Twitter:@theParlor_jp

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