舞台「脳内ポイズンベリー」出演市原隼人さん特別インタビュー

2020.03.21

INTERVIEW

――本作は、脳内の思考がぶつかり合う話です。市原さんご自身は「ネガティブ思考に勝てなかった」など、今までの役者人生のなかで後悔したエピソードはありますか？

しょっちゅうありますよ（笑）。心配性なので20代半ばくらいまで迷いもすごくあったし、だからこそがむしゃらにやってました。誰にも負けたくない、渡したくない、自分以上に役と向き合える人はいないって。

映像の仕事でクランクインが迫ってくると、吐き気が止まらなかったり、2時間走っても寝られなかったりしたんです。実際に現場に入っても、「あれでよかったのかな」「自分がこの役やっていいのかな」「もっと頑張んなきゃいけないんじゃないか」って、いろんなことを考えてましたね。

今はだんだんと「自分がやるべきこと」「やらなければいけないこと」が明確になってきたんですけど、それでも「誰にも負けたくない」って気持ちはあります。ただ、さすがに30超えて迷走してるのも大変なので（苦笑）。少年のような気持ちを抱えながら、積み木を重ねるように愚直に成長していけたらと思ってます。役者って唯一自分が長く続けられたものなので、大事にしたいですね。

――市原さんの誠実さが伝わってくるようです。反対に役者人生のなかで、とくに嬉しかった「ポジティブ」なエピソードがあれば教えてください。

やっぱりファンの方の声ですね。素直に嬉しいなって思います。作品を見て「親と話すきっかけになりました」」「学校に行く勇気をもらいました」「座右の銘になりました」って言葉をいただいたり、「今日、目の手術なんですけど、もし目が見えなくなったら怖いんです。力ください！」っていう方もいらっしゃいました。

そんなふうにいろんな方と向き合うなかで、涙が止まらなくなったことがあって。それからは、「こんなに力をいただいてるんだから、恩返しという気持ちを含めて役者を誠心誠意やらなきゃいけない」って思いが常にあります。ファンの方のおかげで、目の前の壁が小さく見えてくる。本当にポジティブになりますね。

――ファンの方との信頼関係を感じるお話ですね。最後に今回はじめて劇場に足を運ぶ方のためにも、本作の見どころを伺えますか？

女性は、頭のなかで人には見せられないような葛藤が渦巻いている。そして、精一杯向き合って生きているんだなってところに注目していただきたいですね。

恋をすると、現実では人に言えないことも脳内ではウワァ～っていろんなことを考えてる。今回の舞台では、その思考が擬人化されていて、人前では見せない涙、恥部や羞恥心、怒りとか逡巡する迷いとかがぶつかり合います。

ただ、見終わったときに「人って自分のために、こんなにいろんなことを考えてくれてるんだ」って感じられるような作品です。男女問わず、より人を好きになってもらえるような舞台なので、ぜひ当日を楽しみにしていただけたらと思います！

取材・文：鈴木旭
Photo：比留川義一

公演概要

舞台「脳内ポイズンベリー」

東京都新国立劇場中劇場
2020年3月29日（日）まで

原作：「脳内ポイズンベリー」水城せとな（集英社クイーンズコミックス刊）
脚本：新井友香今奈良孝行
演出：佐藤祐市（共同テレビジョン）

［出演］
市原隼人　蓮佛美沙子
早霧せいな　グァンス（SUPERNOVA）　本髙克樹（7 MEN 侍/ジャニーズJr.）　斉藤優里
白石隼也　渡辺碧斗　河西智美

舞台『脳内ポイズンベリー』公式サイト

あらすじ

吉田（市原隼人）は、議長として、優柔不断ながら日々紛糾する会議をまとめ上げようと、奮闘する毎日を送っていた。ただし、ちょっと普通と違うのは、彼が携帯小説家・櫻井いちこ（蓮佛美沙子）の脳内で存在しているということだ。
いちこの脳内は、吉田をはじめ、5つの思考が擬人化されている。＜ネガティブ思考＞の池田（早霧せいな）、＜ポジティブ思考＞の石橋（本髙克樹）、＜瞬間の感情＞のハトコ（斉藤優里）、＜記憶＞の書記を務める岸（グァンス）が、それぞれ別の人格として議論を戦わせ、いちこの言動や思考回路を司っていた。
ある日いちこは、飲み会で顔を合わせてから気になっていた年下男子・早乙女に偶然遭遇する。「運命の再会」に脳内会議はたちまちパニック状態に。さらに、いちこの担当編集者である越智も、いちこに恋心を寄せはじめ……。