木村達成×須賀健太インタビュー 『血の婚礼』「常に最高を更新し続ける二人でなければいけない」(前編)
――ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」のときはバディのような関係性でしたが、今回は一人の女性を奪い合う間柄になりますね。
須賀:一人の女性を奪い合うって考えた人凄いな。よく考えたら凄い文言ですよね(笑)。
木村:言ってみたら、星の数ほどいますからね。
須賀:何でドラマティックにしようとしてるんだよ!(笑)でも、やっぱりこの日本でこれだけ人数がいる中で、一緒の作品をやるってことがそもそも奇跡なのに、再共演する作品が一人の女性を取り合うって。僕は彼にはないものでアプローチするしかないかなと思っています。でも、クサくはなりたくないんですよ。「アイツより俺の方が素敵だ」とか、そういう台詞はあまり言いたくないので。
多分ベクトルが違うというか、達成と僕って割と何から何まで違うと思うんですよね。だからこそ「ハイキュー!!」では、2人で1つみたいな部分があって。それは大前提として、お互い、自分にないものを持ってる感覚があるからこそいいというか。
同じ雰囲気を持ってる人同士が、一人の女性を取り合っても、あまり魅力的に映らないのかなと思うんです。違いが多ければ多いほどそこで揺れ動く女性がいて……という構図になると思うので。そこは、達成なのがしっくりきましたね。
情報整理として一度寝かせることも大切
――本作はスペインの劇作家、 フェデリコ・ガルシーア・ロルカによる3大悲劇の1作ですが、台本を読んだ印象はいかがですか?
木村:読めば読むほど、シンプルな印象ですね。
須賀:ほんとそう。
木村:それでいて、すごく人間的で。さっき健太も話してたんですけど、血で血は争えないというか。今回安蘭けいさんが健太の母親役なんですけど、彼女の血も流れている分、それが根付いていると思うんです。僕にもまた別の血が流れてる分、戦うことは必然という感覚になっていくというか、そういうところが説得力を持たせてやらなきゃいけない部分だと思っています。多分、僕と健太がやる意味ってそこにあると思うので。
そういうことを追求していく過程で、健太となら同じ考えではない分、あまり履き違えずに別々の方向から一点に当てることは可能なのかなって。そう考えるとすごく面白そうだと感じます。でも、早く稽古したいとはあまり思わないんですよね(笑)。
須賀:えっ?(笑)
木村:一回寝かせることも大切だなって。僕、こうやってインタビューを受けさせてもらうことで、自分の考えがまとまることが多いんです。喋りながら自分の頭の中で整理をしていて。今喋ってる言葉が活字になって写真と一緒に記事になって読者の方に届く訳じゃないですか。
さらに、原作を読んでから、このインタビュー記事を読むと、かなりの違いも生まれてくると思いますし。今は僕も皆さんと同じ気持ちなので、情報整理というか、一度寝かせた方がいいのかなと感じていますね。
――須賀さんはいかがでしょうか?
須賀:現代人として理解しがたい部分がありましたね。時代背景や全てを含めて120%戯曲を理解することは難しいなと。当時の人たちの感情表現やよしとされていたもの、それこそ浮気とか女性を奪い合うことって、今僕たちが生きている中ではアウトなことだと思うんです。
でも、今って割と見え方が変わってきているとも思うんですよ。僕はこの作品に限らずどの作品でも、「今やること」にどんな意味があるのか、というのをすごく考えるようになっていて。そういう観点から言うと、正直この『血の婚礼』を現代でやる意味って何なんだろうって、答えがまだ見つけられていないんですよね。なので、これから“そこ”を見つける作業になってくるのかなと思っています。
今って愛情に関して、けっこうナイーブというか、今の時代だとけっこう難しいテーマだと思うんです。ただ、この作品を上演することで「綺麗だ」というような、プラスなだけに伝わってほしくないなと思っていて。戯曲的には難しいので深い感情になってもらえるとは思うんですけど、美しい形式的な形として伝わらないようにしたいですね。なので、ちゃんと泥臭くしていきたいなと思います。
木村:健太の役が可哀想に思われるかもって話してたんですよ。
須賀:改めて読んだらめっちゃ可哀想だけどね(笑)。
木村:最終的な展開は分からないけど、どう提示できるかは自分たちでいろいろといじれるというか。やり方によっては伝え方も全然変えられると思うんです。健太の言葉に乗っかるのであれば、 僕も悪者でありたくないしそれが正義として貫いた方向性だと思うので。なので、お客さんがどっちの目線で見るかによって捉え方も変わってくると思います。
お互いがお互いの正義を貫いた結果が、血の争いだったのか、言葉で解決できない世界線だったのか、当時より今の方がコミュニケーションツールがたくさんあるような状態の中、言葉では伝えられない何かを伝えなきゃいけない選択をとるんだったら、それが殺し合いだったのかもしれないし。それこそ健太が言った泥臭い方向で何かを取らなきゃいけなかったかもしれないので。もちろん、綺麗である必要も一切ないと思うので、魂と魂のぶつかり合いをするしかないと思っています。
インタビュー後編はこちら
取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:くさかべまき
<木村達成>
ヘアメイク/齊藤沙織
スタイリスト/部坂尚吾(江東衣裳)
衣裳協力/ジャケット¥151,800(BOGLIOLI)、シャツ¥35,200(FINAMORE)、トラウザーズ¥96,800(BERWICH) 以上すべてAMAN 03-6418-6035
<須賀健太>
ヘアメイク/齊藤沙織
スタイリスト/立山功
ブルゾン¥49,500-、シャツ ¥38,500-、パンツ¥39,600-(DIET BUTCHER/Sakas PR tel 03-6447-2762)、その他スタイリスト私物
公演概要
『血の婚礼』
2022年9月15日(木)~10月2日(日)
Bunkamura シアターコクーン
2022年10月15日(土)〜16日(日)
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
原作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ
翻訳:田尻陽一
演出:杉原邦生
出演:
木村達成
須賀健太
早見あかり
南沢奈央
吉見一豊
内田淳子
大西多摩恵
出口稚子
皆藤空良
安蘭けい
<演奏>
古川麦
HAMA
巌裕美子
公式サイト:https://horipro-stage.jp/stage/chinokonrei2022/