加藤和樹インタビュー『裸足で散歩』「シーン毎の会話を楽しんでもらえたら」（前編）

2022.09.11

INTERVIEW

――加藤さんの思う、コメディ作品の魅力はどんなところだと思いますか？

幸せな気持ちになれるところですね。今まで僕が出演した作品は、誰かが死んだり、結構暗い話が多いので（笑）。久々にハッピーな作品に出られるっていうのは僕としても心が軽くなりますし、観ている方にとっても、観終わった後にあったかい気持ちになってもらえると思うのでいいなと思います。人の心を豊かにすることができるというか、そういう作品にできるように頑張ります。

僕はあまり芝居や作品に引きずられるタイプではないんですけど、誰かを愛して裏切って、殺したり殺されたりとかは、しばらくはいいかなって（笑）。

――加藤さんがコメディに挑戦したいと思ったのは、そういった魅力を感じていたからなのでしょうか？

それもありますし、単純に僕はコメディを観るのが好きなんです。もし自分がそういうところに入ったら、どういう芝居になるのかなっていう純粋な楽しみもあります。

――他の作品を観る時は「自分だったら、こう演じる」とか「自分だったら、この役柄だな」などと考えながら観られるのでしょうか？

コメディ以外はそういう目線で観ることもありますが、お笑い番組が好きなので、コメディ作品を観に行く時は、笑いに行っているようなものなんです。人を笑わせるって、やっぱりすごく難しいことだと思うんですよね。人を笑わせるだけのエネルギー量がないと難しいと思いますし、だから芸人さんはすごいなって。

天性で元から面白いっていう方も、もちろんいるかもしれないですが、喋りって人を笑わせる要因の一つじゃないですか。それを芝居に置き換えた時に、我々も会話でそれができると思うので。脚本自体の面白さがあって、それを生かすも殺すも役者次第なので、今回のこの作品では生かせるように稽古で積み上げていきたいなと思います。

動き一つひとつに気を遣っていかないといけない

――今の時点で、コメディ作品の難しさを感じているのはどんなところでしょうか？

セリフ回しというか、”会話劇”がずっと続いていく作品なので、ほぼワンシチュエーションで場面が変わらないんです。そうすると、お客様がどこにこの作品の面白さを見出すかというと、やっぱり会話なんですよね。そこが面白くないと一気につまらないものになるので。飽きさせないセリフ回しだったり、芝居の運び方だったり、動き一つひとつに気を遣っていかないといけないと感じています。

「この会話面白くないな」とお客様が一度でも思ってしまったら、そこからお客様の心を取り戻すのってやっぱり難しいと思うんです。自分が観て感じることもありますし、しっかり計算することも必要なのかなと。あとはやっていくうちにコミュニケーションをとることでどんどん良くなっていくと思うので、思いもよらない楽しさや新たな発見もどんどん稽古で見つけられたらいいなと思います。

――台本を読ませていただいたのですが、本当にセリフ量が多いですよね。加藤さんはセリフを覚えるのが得意なタイプでしょうか？

早い方だとは思います。ストレートプレイで台本の半分以上は僕が喋っているような作品もあったのですが、そっちの方が覚えやすかったりするんです。短いセリフだと、会話をしないと覚えていかないのでそっちの方が結構難しいかもしれません。

途中でとてつもない一人喋りがあって、そこはどう演じようかなというのは今からちょっと考えています。セリフとテンポ感を覚えて、体に沁み付かせていかなきゃいけないので。セリフとして覚えるというよりは会話で覚えていくしかないですね。