一路真輝インタビュー 『キオスク』 「今は舞台に立っているだけで幸せ」
――今作でも演出を務める石丸さち子さんの演出を受けられてみての印象はいかがですか?
リーディング版のときも、朗読劇とは思えないくらい活き活きした舞台だったんです。影絵を使ったり、朗読劇なのにフランツが全力疾走したりして 。私も、 石丸演出のいちファンですし、いくつか舞台を拝見してますが、やっぱり稽古場からすごく元気やパワーがあるなと再確認できました。ついていきたいと思わせてくださる方ですね。
――本当にお稽古のときからパワフルに演出をされる方なんですね。今回、戯曲版は日本初上演となります。ストレートプレイ版として上演されることへの意気込みを聞かせていただけますでしょうか。
ヒトラーの時代は、いろいろな映画にもなってると思うんですが、今作は、田舎から出てきた17歳の少年から見た、ナチスが台頭していくオーストリアということで、そこがすごく新鮮だと思うんです。それを舞台で初めて上演することの意味というか、奇しくも今コロナ禍で不自由を強いられてる中、何か拠りどころを見つけて頑張る方の姿と、どうしても重なってしまうといいますか。
私も昨年末 、ベートーヴェン生誕250周年としての作品で、その時代に翻弄されたウィーンに生きる女性を演じていて、今回はその150年後くらいになるんですかね、ヒトラーによって人々が翻弄されて、今はコロナという見えない敵に翻弄されている。そういった時代や世情が違っても、翻弄されている人たちの苦しみから立ち上がっていく姿みたいなものを、今回もきっと石丸さんが全力で描いてくださると思うので、それがとても楽しみです。
――偶然ではありますが、このコロナ禍の時代に作品を上演することの意義というものも感じてしまいますね。
後付けではあるんですけどね。舞台によっていろいろとメッセージ性ってあるし、時代に翻弄されたり、窮屈だったりを描いている舞台ってわりと多いと思うので。ただ、今までだったらこんな時代があったんだなと思うくらいだったのが、今はよりリアルにこのお芝居を観ていただけるとは思います。
この時期にやれてよかったっていう言葉は絶対使いたくないんですけど、この時期だからこそ、何か別のメッセージが伝わるのではというのと、演じる私たちも命がけといったら大袈裟ですけど。やっぱり今までの公演の何倍も神経を使って生活をしながら、稽古をしながら本番に向けて作品を創っているので。
一つ前の作品もそうだったんですけど、コロナ禍の中で舞台を創るというのはやっぱり今まで以上に相当な覚悟がいるんですね。それと、今回の『キオスク』の、第二次世界大戦に突入していく時代とユダヤ人が次々と囚われていってしまうという怖い空気と似通った部分をすごく感じています。