岸本勇太が抱く芝居への情熱「稽古中に“見えた”瞬間が一番楽しい」【シアダン vol.03】(前編)
2019年上半期、舞台での活躍を支えた努力
――2019年も折り返しましたが、上半期はかなりの数のお仕事をこなされてますよね。
舞台も含め、コラボやイベントと、本当にいろいろやらせてもらいました。共通して言えるのは、どれも僕が「やりたい」って言ってやっているので、毎回みなさんに自信作をお届けしているというところです。スケジュールの都合や、僕の性格上、手を抜けなくて一つ一つに全力なので、なかなかタフな場面もありましたけど、イヤだとか苦しいっていう感覚はなくて、それぞれが楽しかったです。むしろ、僕を応援してくれているみなさんが大変だったんじゃないかなと……。
――いわゆる現場が多い状態だったわけですね(笑)。
舞台に立たせてもらっていると、中身の人間が分かりにくい部分もあると思うので、自分自身を知ってもらいたい思いもあってトークイベントなどもやってみたりして。そういう意味ではやりたいようにやらせてもらいましたね。――いやでも、改めて振り返ってみると、けっこう出てるな。「アニドル」(※2)、次が「K」(※3)で「薄桜鬼」「REBORN!」と。
(※2 舞台「アニドルカラーズ!キュアステージ」不知火 颯役)(※3 舞台『K -RETURN OF KINGS-』夜刀神 狗朗役)
――役ごとにカラーもちがいますしね。
そうなんですよ。今回本当に、外見的な部分の役作りの難しさをしみじみ味わいました。音楽グループをやっていたら、身体づくりを変えなきゃなんてそうそうないことなんですけど、せっかく演らせていただくなら外見も寄せたいと思って。難しさはありましたけど、結局全て経験に繋がっていくんですよね。
――フィジカルという目に見える部分での役作りもされていたとなると、細身の夜刀神 狗朗と、肉体派の永倉新八のギャップがなかなかありますよね?
まさにそれなんです。夜刀神 狗朗の衣装は、僕の前に狗朗を演じてらした荒牧(慶彦)さんの衣装を着させてもらったんですが、そのままのサイズだと背中が入らなくて……。僕、ぱっと見は細く見られたりするんですけど、着ているシャツとか全部Lサイズ以上なんです。肩幅がわりとあるのと、胸板もけっこうあったりして。だから衣装さんに「これ以上鍛えるのはやめてね」ってストップをかけられまして(苦笑)。「K」が終わって「薄桜鬼」に合流してからの2週間くらいで、永倉新八の身体を作りました。
――2週間、それも稽古の合間に自力でやるのはすごいですね!
もうその期間は、いっしょに合流した原田左之助役の(水石)亜飛夢と二人で、ずーっと筋トレしてました。局長・近藤 勇を演じる井俣(太良)さんの筋トレ道具をお借りしつつ、毎日待ち時間はひたすら楽屋でやって、公演中も出番以外は袖で……。サラダチキンを飽きながらも毎日食べていたら、(椎名)鯛造さん(山崎 烝役)に「お前ら、また食ってんのか」と何度言われたことか(笑)。
――飽きるほどのチキンとは……(笑)。大変そうですが、周りの応援もあると励みになりそうです。
「薄桜鬼」はダンスも多いんですが、今回から新しい振付師さんが加わるということで、新しくなったダンスの動画が「K」の本番期間中に送られてきたんですけど。見てみたら、みんなどんどん先に進んでるんですよ。「K」でも八田 美咲役でいっしょだった鯛造さんと「これヤバくね!?」ってなって、二人でマチソワ間にロビーで練習したりして。
一番思い出深いのは、鯛造さんと夜のカラオケに行って、そこでダンス練習をしたことですね。パーティールームを使わせてもらって、そこで二人でヤイサを踊るっていう。「K」の本番が終わった後にみんなでご飯にいった時にも「俺ら、ヤイサが待ってるんで」って途中で抜けて、2時間くらい二人して汗だくになりながらやってました。カラオケに行ってマイクを使わなかったのは人生で初めてです!(笑)
――忙しい合間を縫って自主練とは素晴らしいです。成果は出ましたか?
出ました。稽古に合流した時に、みんな「なんで覚えてんの!?」ってびっくりしてましたから(笑)。大先輩の鯛造さんが練習を「やる」って言ってるのに、僕がやらない訳にはいかない。だから「やりましょう!」って食らいついていったんですが、鯛造さんがいてくれたからこそ頑張れたなって思います。それに、スケジュールが詰まっていても、工夫次第で意外とやれるなっていうのも分かりました。
稽古中に“見えた”瞬間が一番楽しい
――これまで演じてこられた役柄の中で、特に自分が大きく変わるきっかけとなった役柄はどれですか?
どの役でもそれぞれ成長できた部分はあるんですけど……難しいな。でも、変われたってことで言うなら、やっぱり一番最初に演じた金城剛士だと思います。剛士がいたから全てがスタートしたと、常々思ってます。あの役じゃなかったら、お芝居は続けずに音楽一本でやっていこうと思っていたかもしれないですし、本当にいろんなことを教わりました。
――金城役が岸本さんとお芝居を出会わせ、結び付けてくれたんですね。
そうですね。それまでとちがう景色を僕に教えてくれたのは、間違いなく彼なので、僕がお芝居について語る上では一番欠かせない存在なんじゃないかと思います。以前はお芝居に興味のなかった僕が、そこで誰かを演じることの楽しさを知りましたし。
――役者として活動をしていて、喜びを感じる瞬間ってどんなときですか?
やっぱり、稽古ってキツいんですよ。演出家が求めているもの、自分がやりたいこと、原作の役の姿。その全部が合致するところって相当ピンポイントなんですけど、さっきも言ったように、そのポイントを探すせめぎ合いを稽古でやるんです。しかも、ピンポイントに持っていくための期間は約1ヶ月……むしろ、歌稽古やダンス稽古、殺陣の稽古もあるとなったら、実質1ヶ月もない。さらにはそれらの要素の集合体を「初めまして」から間もない相手もいるメンバーで、形にしていかなくてはならない。中には過去に共演したことのある方もいましたけど、例えば今回のリボステ(=『家庭教師ヒットマンREBORN!』the STAGE)では4分の3くらいが初対面の人でしたね。
そういう状況で1ヶ月後には物語を作ってみなさんに提示するって、そうそう容易なことではないんですけど、難しいがゆえに楽しさもたくさんあって。なかでも一番楽しさを感じるのが、稽古中に“見えた”瞬間なんです。自分なりにお芝居をやっていて「ここだな」ってストンと落ちる時があるんですよ。
――その3要素のせめぎ合いが重なった、ピンポイントの部分が見えると。
そうです。「あ、これ絶対オッケー出るわ」って時と、自分の中で満足がいった部分と、キャラクターに見えてるっていう部分が合致する時があって。それができたタイミングが一番、お芝居をやっていてゾーンみたいなものに入れる瞬間ですね。
あとは、きっとみなさんが言っていると思うんですけど、お客さんの声をいただいた時。いくら自己満足で作り込んでいても、やっぱりお客さんありきなので。稽古で作り上げてきたものをお客さんが受け入れてくれた瞬間や、カーテンコールの時には、(お芝居を)やっててよかったなって思います。