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岡宮来夢インタビュー ミュージカル『四月は君の嘘』「自分なりのオリジナリティある公生を作れたら」(後編)

INTERVIEW

2025年8月23日より昭和女子大学人見記念講堂を皮切りに、ミュージカル『四月は君の嘘』が上演されます。

ミュージカル『四月は君の嘘』は、新川直司が2011~2015年に講談社・月刊少年マガジンにて連載し、2012年度マンガ大賞ノミネート、フジテレビ「ノイタミナ」枠でのTVアニメ化、実写映画としても大ヒットを記録した同名コミックが原作。単なる青春ラブストーリーではなく、音楽に引き合わされた若き音楽家の卵たちが大切な人との出会いと別れを通してその才能を開花させて行く、多くの人を惹きつけてやまない傑作です。

そのミュージカル版として2022年に日生劇場で初演の幕を開けた本作は、ミュージカル界の巨匠作曲家フランク・ワイルドホーン氏のキャッチーで瑞々しい音楽と、原作の魅力である青春の刹那のきらめきと美しさを巧みに織り込んだ脚本、日本ミュージカル界を牽引する若手実力派キャスト揃い踏みによる存在感あるパフォーマンスが絶賛されました。そんな、世界各国で好評価を受けた日本発の傑作オリジナルミュージカルが、3年の時を経て再演されます。

主人公で元天才ピアニスト・有馬公生役は活躍目覚ましい次世代ミュージカルスターの筆頭・岡宮来夢さんと、20歳の注目の実力派として抜擢された東島 京さんがWキャストで演じます。

圧倒的個性を持つヴァイオリニスト・宮園かをり役には、『レ・ミゼラブル』でコゼット役を好演した加藤梨里香さんと、2020年にハロー!プロジェクト所属女性アイドルグループJuice=Juiceを卒業以降はソロアーティストとして精力的に活動する宮本佳林さん。公生の幼馴染でソフトボール部の主砲・澤部椿役は希水しおさんと山本咲希さん。公生と椿の友人・渡亮太役は吉原雅斗さんと島 太星さんと、オーディションで選出されたフレッシュなキャストが揃いました。

THEATER GIRLは、主人公・有馬公生役の岡宮来夢さんにインタビュー。後編では、本作の魅力やミュージカル出演を続ける中で描いている道筋、歌うことに対して大切にしていることや影響を受けた方など、作品や俳優観についてたっぷりと語っていただきました。

インタビュー前編はこちら

完全にファンとして心から楽しんだ

プロデューサーの方に「ぜひ観てほしい」と言っていただいて、初めて韓国に行く機会をいただきました。正直、韓国語での上演ということで最初は少し不安もあったのですが、実際に観てみたら、本当に楽しくて、最高の時間でした。

韓国に行く前に「カムサハムニダ(ありがとうございます)」「コマウォ(ありがとう)」「チンチャ(本当に)」「ケンチャナ(大丈夫)」の4つの言葉だけ覚えて行ったんですけど、それ以外はまったくわからなかったです(笑)。でも、内容はすでに知っていたので、セリフの意味も自然と伝わってきましたし、曲も全部馴染みのあるものばかりで、すごく楽しめました。

韓国の方々の歌唱力が本当にすごくて、「どうしたらこんなふうに歌えるんだろう?」とびっくりしてしまいました。僕もあんなふうに歌いたいなと思いながら観ていましたし、終演後はマネージャーさんと「何がどう違うんだろう?」と話し込んでしまったくらいです。

劇場を出た後は、外にあった大きな垂れ幕の前で記念に写真を撮って帰りました。

学びになったというよりは、完全にファンとして心から楽しんでいました。でも、韓国の舞台なのに、日本でよく見るようなジャングルジムや桜の演出が出てきて、「今韓国にいるはずなのに、景色が日本っぽい!」と感じて、それがすごくうれしかったです。

あと、韓国版では渡くんのソロ曲が1曲増えていたんです。今回の日本版にはその楽曲はないようなんですが、ファンとしてはとてもうれしいサプライズでした。

特に好きなところは「役者の力量で見せる作品だという点」

魅力はたくさんありますが、特に好きだなと感じるのは、役者の力量で見せる作品だという点です。舞台セット自体はすごくシンプルで、ピアノが真ん中に置かれ、そこにスポットライトがパーンと当たるだけのような演出なんですが、それが逆にとても良くて。余白があるからこそ、観る側が自由に感じ取れる部分が多いと思います。

派手な演出で圧倒されるというよりは、こちらが自然と前のめりになって作品の世界に引き込まれてしまうような、不思議な感覚がありました。それは今までに体験したことのないものでしたし、とても新鮮でした。

やっぱり、フランク・ワイルドホーンさんの楽曲が本当に素晴らしいです。どの曲もすべて良すぎて……。ライティングもまた見事で、モノクロの世界のようにストイックな場面もあれば、一転してカラフルなシーンもあり、とても美しいんです。

たとえば、渡くんが出てくるサッカーシーンなんかは、まるで砂が舞っているかのようで、本当にグラウンドにいるような感覚になりました。とにかく、どのシーンも完成度が高く、圧倒されます。

初演時はまだ演出の(上田)一豪さんとお会いしたことがなかったのですが、初めてご挨拶させていただいたときに、「『四月は君の嘘』、最高でした!」とお伝えしました。

その後、ミュージカル『The Fantasticks』で一豪さんと一緒に作品作りをさせていただいたのですが、稽古場の雰囲気がとても居心地がよくて。一豪さんの持つ、面白くて優しいエネルギーや空気感がすごく印象的でしたし、それが稽古場全体に広がっていました。

その後に(小関)裕太くんとも出会うわけですが、裕太くんの持つ、朗らかで優しい雰囲気が一豪さんの空気感とすごく合うだろうなって。そういうものが合わさった時に、ああいう素敵な座組になるんだろうなと。本当に楽しかっただろうなと、観ていて思いましたね。

今回は自分が座長としてこの座組に立たせていただくので、明るく楽しい雰囲気のカンパニーにしたいと思っています。若いキャストも多いので、自然とそうなっていくとも思いますが、いざというときには自分がしっかり締められるように、座長としての責任をしっかり果たしていきたいです。

日本の作品が世界に羽ばたいていけたら

本当にうれしい経験でした。ロビーでは、調査兵団の服を着た方々などがいて、20か国以上の方々が観に来てくださっていたと聞きました。劇場は満席で、カーテンコールが始まる前からスタンディングオベーションが起こるほどの熱狂で、「日本の作品って、こんなにも待たれているんだ」と心から実感しました。

現地でニューヨーク・タイムズの取材を受けた際には、日本の作品についても話題になりました。『NARUTO』や『SPY×FAMILY』など、いくつかの作品が挙がっていて、「アメリカでもぜひやってほしい」といった声もたくさんいただきました。僕自身も写真を見せながら、「僕、(SPY×FAMILYの)ユーリ役だよ!」みたいな話もして(笑)、皆さんとても興味を持ってくださいました。

ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』を観に行った時にも思いましたが、こうやって日本の作品が世界に羽ばたいていったらいいなと感じました。

自分自身が「日本の作品が世界に待たれているんだ」というのを肌で感じたからこそ、これからもそんな作品を生み出せる一員になれたらうれしいです。そのためにも、トレーニングを怠らず、しっかりと努力していきたいと思います。

夢はいくつかありますが、具体的には、ミュージカル『キンキーブーツ』のローラ役と、ミュージカル『モーツァルト!』のヴォルフガング役は、ぜひ挑戦してみたい役の一つです。また、声優としてディズニー作品に出演することや、新海誠監督の作品に出ることも、自分にとっての夢の一つですね。

そして、大きな目標としては、自分のできることをどんどん増やしていきたいと思っています。初めて舞台に出たときに何もできなくて不安でいっぱいだったのですが、そのときに多くの先輩たちが支えてくれたんです。その経験から、「こんな先輩になりたい」と心から思いましたし、今もそうなれるよう努力を重ねています。

後輩たちがミュージカルを志すうえで、僕が少しでも助けになれるように、今のうちにたくさんの経験を積んで、引き出しを増やしておくことが大切だと感じています。そういう先輩になっていけたらいいなというのは大きな目標ですね。

あとは、いつか「新・帝国劇場」ができたときには、0番を任せてもらえるくらいに成長できていたらいいなと思います。

なるべく自分からいろんな方に話しかけるようにしています。基本的に笑顔を絶やさないよう、挨拶も自分から積極的に行うように心がけています。

クレジットの名前が上にあることで、どこか偉くなったような気がしてしまうこともあるかもしれませんが、実際はそんなことはなくて。現場ではみんなフラットな関係で、全員が一丸となって作品を作っていくべきだと思っています。

自分のことだけでなく、誰かが居づらくならないような環境作りを大切にしていて。「居心地の悪い現場」を作らないというのは、僕の中で強く意識しているポイントです。誰も悲しくならない現場を作ることは、座長としての役割のひとつだと感じています。

ありがとうございます。それを意識してやっているつもりです。これまでの現場でも「来夢が座長で良かった」と言っていただけることが多くて、それを励みに、「このままで間違っていないんだ」と思いながら、これからも続けていきたいと思います。

まずは内面を大切にしたい

これは今の僕の考えなので、もしかしたら3年後にはまた違うことを言っているかもしれませんが、今大事にしているのは「内面」です。たとえ音程が外れてしまっても、発声が多少崩れてしまっても、まずは内面を大切にしたいと思っています。

それから、言葉がしっかり伝わるように意識もしています。歌を“歌”としてだけ捉えてしまうと、それはコンサートのようになってしまう可能性があると思うんです。でもミュージカルはお芝居があるので、そのうえで音楽が感情を引っ張ってくれるものだと思っています。

だからまずはお芝居が土台にあって、その上に音楽が乗る。そういう考え方で歌に向き合っています。

その内面がぶれないように、日々トレーニングをしています。音程やテンポを安定させるのも、感情表現を崩さないための手段だと思っているので。逆に、発声をきれいに整えすぎた結果として、感情や内面が薄れてしまうのは避けたいと思っています。

うまく歌おうとするよりも、役の感情や心の動きを届けることのほうが大切だと思っているんです。うまく言葉にできない部分もありますが、そんな感覚で歌っています。

僕自身、そういう表現をされている先輩方の歌を聴いて育ってきましたし、そういう先輩たちに惹かれてきたのだと思います。だから自然と、自分もそうありたいと思っているのかもしれません。

稽古の時に驚いたのが、ミュージカル『王家の紋章』での新妻聖子さんの二幕のソロでした。本読みの段階から圧倒的で、本当にすごかったんです。

同じくWキャストの朝夏まなとさんもまったく別のアプローチですごくて。お二人の稽古シーンを、演出家さんの机の下のようなところから見させてもらったんです。どうしても近くで見たくて、「ここにいてもいいですか?」とお願いして、特等席のような場所から拝見しました。

その時の光景はいまだに脳裏に焼き付いています。本当に衝撃的で、「こんなふうになりたい」と強く思いました。お二人とも本当に素晴らしかったです。

それから、僕は海宝(直人)さんの歌が大好きで、海宝さんのバンド「CYANOTYPE」の楽曲もすべて聴いています。とても魅力的なんですよね。

最近では、小林唯さんの歌声もすごく好きです。「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート 2025」を観に行かせてもらった時も、「やっぱり小林さんの歌声が好きだな」と思いました。

実はミュージカル『レ・ミゼラブル』で、初めて小林さんの演技を拝見して。その日は木下晴香さんと加藤梨里香さんの回だったのですが、アンジョルラス役が小林さんで、その時も「うわ、すごすぎる…!」と感動しました。公演後、楽屋にご挨拶に行かせていただいた時に、たまたま小林さんが通りかかって。失礼とは思いつつも、「初めまして、岡宮来夢と申します」とご挨拶させていただきました。

その後、「フレンズ・オブ・ディズニー・コンサート 2025」で再び歌声を聴き、「やっぱり好きだな」と改めて思いました。なので、今一番影響を受けているのは、小林唯さんと海宝(直人)さんかもしれません。

でも、なりたい先輩は本当に多くて……。アッキーさん(中川晃教)や(加藤)和樹さん、浦井(健治)さんなど、挙げきれないほどです。

はい。その中でも、今は海宝さんや小林さんのように歌えるようになることが目標です。海宝さんとは『王家の紋章』や『ATTENTION PLEASE!』というコンサートで共演させていただきました。小林さんはまだ舞台を観に行かせていただいただけですが、勝手に勉強させてもらっています。

そうなんです。それから、先日ミュージカル『キンキーブーツ』を観に行った時に、松下優也さんのローラがすごすぎて。あのパフォーマンスには本当に驚かされました。

あと、僕は有澤樟太郎くんも大好きで、ミュージカル『刀剣乱舞』でご一緒させていただいた時から人柄も大好きですし、何もかもが魅力的なんです。チャーリー役も最高でした。いつか別の作品でも共演したいですね。

本当にそう思います。チャーリーとローラとしていつか共演できたらうれしいですね。みんなには「チャーリーだろ」と言われることが多くて、その気持ちもわかるのですが(笑)、僕は絶対にローラをやりたいと思っているので、その気持ちはずっと持っています。言霊だと思うので、これからも目指していきたいです。

背伸びしすぎていた部分もあった

これまでの5〜6年間は、「早く大人にならなきゃ」と急いできた時間だったと感じています。特に座長を務めさせていただく機会が増えたことで、「しっかりしなくちゃ」「頼られる存在でいなきゃ」と思うことが多かったんです。もちろんそれは自分なりの解釈なんですが、ちょっと背伸びしすぎていた部分もあったのかな、と。

なので、これからは“遊び心を忘れない”というのを一つの目標にしています。しっかりするところはもちろんしっかりしながらも、楽しむことを忘れずに、バランスよく30代を過ごしていきたいと思っています。

そうなんです。以前は、「楽しいだけじゃだめだ」「もっときちんとしなきゃ」と思いすぎていたのかもしれません。でも最近は、それだけじゃないとも思えるようになってきて。

たとえば、帝国劇場 CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』の最終日を観に行かせていただいた時に、井上芳雄さんの姿を見て、本当にすごいなと思いました。歌はもちろんですが、トークや場のまとめ方も見事で、それでいてみんなが楽しめる空気を作っていて。遊び心もあって、全体を包み込むようなあたたかさがあったんです。

芳雄さんが司会を務める「はやウタ」の収録のときにも、同じようなことを感じて。芳雄さんって、本当に天才なんだなと。だから、自分もああいう、ちょっとお茶目さのある、余裕を持った先輩のようになっていきたいなと思っています。

有澤樟太郎くんがまさにそういう存在で、大好きなんです。彼のような空気感を大切にしながら、僕も頑張っていきたいなと思います。

この作品は、初演を観たときに、本当に衝撃を受けた大切な作品です。観終わった瞬間、「絶対にいつか出演したい」と強く思ったのを覚えています。

きっとご覧になる皆さんの中にも、大切な人との別れや、挫折を経験された方がいらっしゃると思います。僕自身もその一人です。そういった方々に、少しでも寄り添えるような、背中をそっと支えられるような、そんな作品になっていると思います。

また、学生時代のことをふと思い出したり、観終わった後に不思議とエネルギーが湧いてくるような、そんな力のある作品でもあります。僕自身、この舞台からたくさんの力をもらいました。 だからこそ、今度は僕がそのエネルギーを届ける番だと思っています。明日からも頑張ろうと思ってもらえるように、全力で舞台に立ちますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。

取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:Jumpei Yamada

インタビュー前編はこちら

岡宮来夢・加藤梨里香 ミュージカル『四月は君の嘘』ビジュアル撮影潜入インタビュー

公演概要

ミュージカル『四月は君の嘘』

岡宮来夢/東島 京(Wキャスト)
加藤梨里香/宮本佳林(Wキャスト)
希水しお/山本咲希(Wキャスト)
吉原雅斗/島 太星(Wキャスト)

かをりの父:原 慎一郎 かをりの母:鈴木結加里
審査員:武内 耕・三木麻衣子
相座武士:内海大輔 井川絵見:飯塚萌木

池田航汰 大森未来衣 相樂和希 桜井咲希 佐藤志有 新條月渚 須田拓未
千歳ふみ 千葉海音 鳥居留圭 中野太一 東 倫太朗 深澤悠斗
町田睦季 松村桜李 吉岡花絵 渡辺七海

幼い公生(大介) 
小金輝久 椿ナタニエル 中西 縁 深澤 統

Swing
月山鈴音

(五十音順)

原作:新川直司(講談社「月刊少年マガジン」)
脚本:坂口理子
作詞・作曲:フランク・ワイルドホーン
作詞:トレイシー・ミラー/カーリー・ロビン・グリーン
編曲:ジェイソン・ハウランド
訳詞・演出:上田一豪

2025年8月23日(土)~9月5日(金)昭和女子大学人見記念講堂
協力:学校法人 昭和女子大学

【料金】(全席指定・税込)
S席 14,000円 A席 9,000円

【チケットお問合せ】TEL:03-3201-7777 東宝テレザーブ

公式サイト:https://www.tohostage.com/kimiuso/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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