荒牧慶彦、瀬戸祐介、糸川耀士郎インタビュー 舞台『憂国のモリアーティ』case 2 「今の空間を支配する機微みたいなものを伝えたい」
――前作から引き続き脚本・演出を手掛ける西田大輔さんに対してはどんな印象をお持ちですか。
荒牧:やっぱりすごい天才肌ですね。僕が出てないシーンの演出って、その稽古に立ち会ってないから後から通しで知ることになるんです。自分なりに台本を読み込んで、「こういう感じのシーンになるのかな?」と想像して臨むんですけど、それをはるかに超える演出をされていて視覚的にすごく面白いんですよね。目で見ても面白いですし、そこに人の感情を乗せたところの化学反応も計算されている。「素晴らしい天才肌だ、この人は」っていうのは前作から感じていました。
瀬戸:今回は、セットがけっこうすごいんですよ。飛んで回って、いろんな見せ方があるんですけど、西田さんのすごいところってアイデアの量っていうか、僕らの思いつかないアイデアが豊富なんです。かつ、役者が納得できるアイデアをくださる。今回はセットが複雑で、僕らも初めて立つようなセットばかりなので、西田さんの存在は本当に頼もしいですね。
糸川:お二人がおっしゃったこともそうなんですけど、本当に人を惹きつける魅力があって「この人の頭の中のイメージを表現したい」って思わせるカリスマ性みたいなものがありますね。この舞台に限らず、「西田さんの舞台は絶対面白いものになるから出たい」っていう役者はたくさんいると思います。
――ミュージカル版を含む舞台の上演後にアニメ化されたりと原作のメディアミックスも進んでいます。その中、舞台版ならではの「憂国のモリアーティ」の見どころはどんなところにあると思いますか?
荒牧:アニメーションとステージとの違いは、目の前でリアルな人間が演じているということだと思います。感情の豊かさ、全身を使っての表現とかっていうのは、人間にしか生み出せないものなのかなと。それとアニメーションは、画角が映っている部分でしかその世界が表現されないんですけど、舞台上はスポットライトが当たっていない部分でもキャラクターたちが生きている。そこが面白い部分だと思います。
ミュージカルとステージの違いは、単純に言ってしまえば歌があるかないかですよね。ミュージカルは感情を歌に乗せて表現することでいろんな演技の幅ができるんですけど、舞台版は芝居だけというものなので、「会話劇としての面白さ」や「よりテンポよく見られる」っていう部分が持ち味なのかなと思います。
糸川:それこそ西田さんの演出だから、舞台版「憂国のモリアーティ」の魅力が存分に出てるっていうのもあると思うんですよ。今回も、いろんな仕掛けがあって、馬車をどう見せるかとか、そういう舞台演出の面白さみたいなところに西田さんのスパイスがふんだんに仕組まれていますからね。
瀬戸:西田イズムはステージを観るうえで、伝える価値があるものなんじゃないかなって。キャストがこう言ってるわけですから、観劇するお客さんたちはもっと驚くことになると思いますよ。