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成河インタビュー 舞台『検察側の証人』 「自分が陪審員として座らされてしまっている、そんな作品になる」

INTERVIEW

――成河さんは舞台に立っていてどんなところに喜びを感じますか?

喜びね……喜びにもいろんな質がありますよね。ただ僕が昔から言っていることって変わらないんですよ。そもそも2年に1回ぐらいしかない感覚なんですけど、格好良く言えば「永遠の1秒」ってヤツです(笑)。

お客さんが100人でも500人でも1000人でも、衣ずれの音ってコントロールしようのないものですし、呼吸音や咳って生理現象じゃないですか。そういう音っていくらでもあるし、あっていいものなんですよ。それが2時間~4時間っていうお芝居の中で、ほんの1秒、全員が止まる瞬間があるんですよね。

劇がうまくいくと、“みんなが黙ってそこを向いちゃう瞬間”っていうのがある。ちょっと言い方が難しいですけど、ショッキングな事故現場だったり、すごい勢いで真上に飛行機が飛んでいたりしたら、全員がバッて何も考えずにそれを見ちゃうじゃないですか。あの瞬間のことですね。そういう瞬間って、衣ずれの音も、呼吸音も咳の音も、一切しない。うるさいほどのビリビリした静寂っていうのがあるんです。それって劇がうまくいってなきゃあり得ないし、滅多なことでは起きない。

でも、コロナ禍になってから増えましたね。非常にお客さんの能動性が増したんだと思います。その場の永遠の1秒みたいなのが喜びです。僕はそれに取り憑かれて演劇を続けています。

――舞台だからこそ味わえる感覚なんでしょうね。今作では、レナードにとって唯一の希望であった妻が不利な証言をしますが、ここ最近で成河さんがちょっとした出来事にハッとしたようなことはありますか?

昨日、すごい大雨が降ったんですよ。稽古場でも夏の大雨でゴーゴーゴーゴー音が鳴っていて。なんとなくすごく久しぶりな感じで外に出たら、もう本当にシャワーというような感じだった。その時、ちょっと疲れてたんですけど、外に出て雨の中を走り回りたいと思ったんですね。

そんな子どもじみた自分を発見して感傷に浸りました(笑)。年甲斐もなく大雨に興奮して、静かに上がりましたね。そんなふうに思うのって何年ぶりだろう……やっぱり何かに飢えてるんですかね。

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THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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