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濱田めぐみ×柚希礼音インタビュー ミュージカル『COLOR』「この作品が舞台になるのはすごく革新的なこと」(前編)

INTERVIEW

――お二人が演じられる“母”役は、記憶喪失で一度全てがリセットになってしまった“ぼく”を導くような存在になるかと思うのですが、役に対してはどのように向き合おうと考えていらっしゃいますか?

柚希:これは難しいぞと思っています。美化して「愛の深い母を……」と、言っているだけでは演じられないものだと思いますので。実際にはどれほどの思いだったのか、それを本当には分からないけれど、「こうだったんじゃないかな」とどんどん想像して感じていく。そうして自分の(身の上に起きた)ことのようになっていく部分が多ければ多いほど、それだけリアルなものが生まれていくと思っています。

濱田:原作を読んだ段階で、私はこの舞台でのお母さん……というか、母親と呼ばれるべき存在の立ち位置がすごく奇異だな、難しいなと感じていて。この作品の中では“母”という役ですけど、“ぼく”は記憶がないから、お母さんとは思っていないわけじゃないですか。となると、観ている側からは“ぼく”とその母親でも、実際の関係性は、“ぼく”からしてみたら「自分にいちばん優しく寄り添ってくれる女の人」と「“ぼく”のことを息子だと思っている女性」というくくりなんですよね。本当の意味でお互いが母と息子だと認識しあっている二人ではない、と言いますか。

お母さんにとっては「私の息子だけど、今までと同じ息子じゃない」。それに対して“ぼく”は「“お母さん”と言っているからぼくはこの人をそう呼ぶけれども、“お母さん”っていったいなんだろう?」という状況。形式としてはそういう関係性なので。だからすごく難しいなと思うし、こういう状況で“ぼく”と言われているこの少年に対して、我々が単なる母性だけで向き合うわけにはいかず……。そこが、混乱するし、難しくて。

柚希:そうなんですよ。

濱田:親子だけど親子じゃない二人の関係性なので、母親として臨むというのがイマイチまだぴんと来ないというか。そこも考えなきゃいけないなと思っているんですよね、

――親子というより、人間同士になっている感じですよね。

濱田:そうそう! そうなんですよね。うーん、……深い! ってなります。

稽古場での4人の化学反応、そのセッションを楽しみたい

――先ほどもおっしゃっていましたが、今作は少しユニークな形での役がわりとなっていますが、稽古など作品作りをしていく上で、期待を寄せているのはどういった部分ですか?

柚希:本当に共演させていただきたいと思っていた方々ばかりなので、メグさん(=濱田さん)とはいっしょに舞台には立てないけれど、稽古場でどうやって(お芝居を)作っていかれるのかを見られるのが、とても楽しみです。浦井さんと成河さんのお二人も、いつも舞台を拝見していて「どうやって作っているんだろう?」と思っていたので、学びの多い機会になるだろうなと思っています。

――ご自分が演じられる時と、濱田さんが演じられる時の2パターンを見られるわけですもんね。

柚希:そうですね!

――濱田さんはいかがですか?

濱田:やっぱり稽古場の雰囲気ってすごく大事で。どれだけクオリティの高い空気感の中で、いい緊張感を持ちつつ、集中して短期間でやれるかがキーだと思います。みんな大人だしキャリアがあるので、そこはもうリスペクトし合いながら、いい空気感のまま舞台に行けたら、とってもいい状態のものができ上がると思うんですよね。全く毛色や才能の違った4人の、いろいろなものが化学反応を起こしていく様っていうのはすごく刺激的だと思うし。本番になったら多分、それをずーっと持続させなきゃいけないっていう責任感が出てくるんですけど、稽古場だといろいろ試せるし、和気藹々と話をすることもできるから。みんなの変わっていく様を見るのは楽しいです。

「あ、なるほど! そうきたか!」とか、少人数だからこそできることってあると思うので。いろいろ試したり、セッションしたりしながらやっていくのが醍醐味かなと。それがどう本番に繋がるのかが楽しみですね。

――稽古の過程での変化って、ご自身たちにしか見られないですもんね。

濱田:そうなんですよね。

柚希:本当に。

――演劇ファンだったら、すごく見たい部分だと思います。

濱田:見たいでしょうねぇ(笑)。

舞台上で時折訪れる「魂が喜ぶ瞬間」とは

――原作では坪倉さんの「絵があって良かった」という言葉が印象的でした。お二人にとって、坪倉さんの絵に当たるものは何だと思われますか?

柚希:舞台上でこう、魂が喜ぶ瞬間があるんですけど。それですね。

――どんな時にその感覚は訪れるんですか?

柚希:何というか、いつも一生懸命演じているのは同じなんですが、なぜだか今日は自然に舞台に立っていられて、普通に息が吸えて、お客様に何かを伝えようとしているわけでもない感じになる時があって。役として舞台の上にぽーんと自然にいられる、何だか風景もそう見えてきて、客席ではないものが見えてくる。そういう時がときどき訪れるんです。それって、ベストコンディションでもいけるわけではないんですよね。舞台はみんなと作っているものだから。そして、そうなれた時をなぞろうとしてもなれなくて。

――いろいろな条件が揃った時に扉が開くような感じなんでしょうか。

柚希:そうなんです。

濱田:私もチエちゃん(=柚希さん)といっしょかもしれないですね。それって本当に不思議な感覚で。舞台上って、普通の私生活とは次元が違うんですよ。よく“神聖な舞台”みたいな言い方をしますけどまさにそうで。自分の周波数とか波動とかってものがあるとすれば、それもパンッと変わるし。そのちょっと普段の自分とは違う波動になったところで、私の場合はその時演じている人物が持っていってくれて、自分は操縦している感覚になるというか。「これは多分、客席からは役そのままに見えているんだろうな」という瞬間があるので、自分はそれにはまった時がそうかなって思いますね。坪倉さんの絵に当たるものは。舞台上で自分が役者でいられているこの感覚があってよかったなと思います。

取材・文:古原孝子
Photo:野村雄治

インタビュー後編はこちら

公演概要

ミュージカル『COLOR』

2022/9/5(月)~9/25(日)
新国立劇場 小劇場

キャスト (五十音順):
浦井健治  ぼく/大切な人たち
成河     ぼく/大切な人たち
濱田めぐみ 母
柚希礼音  母

スタッフ:
原作:坪倉優介「記憶喪失になったぼくが見た世界」
音楽・歌詞:植村花菜
脚本・歌詞:高橋知伽江
演出:小山ゆうな
編曲・音楽監督:木原健太郎
振付:川崎悦子
美術:乘峯雅寛
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一
映像:上田大樹
衣裳:半田悦子
ヘアメイク:林みゆき
ボーカルスーパーバイザー:ちあきしん
演出助手:守屋由貴/野田麻衣
舞台監督:加藤高

公式サイト:https://horipro-stage.jp/stage/color2022/

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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