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和田雅成インタビュー 『月農』「肩の力を抜いて生きる方が、周りのこともよく見える」(前編)

INTERVIEW

2024年10月、東京・シアターサンモールにて宮下貴浩×私オム プロデュース 第8回公演「月農」が上演。主演を務めるのは、私オム作品には今回が初出演となる和田雅成さんです。

舞台「月農」は、畑が広がる地方の村が舞台。そこに暮らすある男性の心の変化を描き出します。前作「愚れノ群れ」が公演前に完売したこともあり、今回の公演への期待も高まっています。

今回、THEATER GIRLは主演の和田雅成さんにインタビューを実施。舞台のみならず、映像作品でも活躍。10月には主演ドラマ「神様のサイコロ」の放送を控える和田さんは、この独特な世界観をどのように解釈し、役に向き合おうとしているのでしょうか。

前編では、以前から旧知の仲である宮下さん・私さんとのエピソードや、役への印象、和田さんの大事にされている“役を生きること”について、じっくりと伺いました。

インタビュー後編はこちら

「泥を舐めるような芝居をしたい」からスタートした「月農」

――本作のお話を聞いて、出演したいと思った決め手はどんなところだったのですか?

もともと、今回プロデュースされている宮オムの2人(宮下貴浩と私オム)と3人で、いつか一緒にやれたらいいねという話をしていて。実際に2人のプロデュース作品を何作品か観させていただいて、僕だったらこういう作品かなということも話していたんです。なので、今回は満を持してというか、ようやくご一緒することが叶ったという感じです。

――一緒にやりたいというお話はいつ頃から?

3年くらい前ですかね。「こういう構想で行きたいんだ」というのを、オムくんから聞いていました。

――かなり前から温めていたわけですね。では、本作の骨格はもともとご存知だったのでしょうか。

今回、農業が一つのテーマとして出てくるのですが、そういう具体的な部分が決まったのは最近です。もともと話していたのは、本当にざっくりとした枠組みだけで。どういう芝居がしたいかと聞かれたので、「普通のかっこいい役じゃなくて、泥臭い芝居というか、泥を舐めるような芝居をしたい」と。

そこからスタートして、オムくんが僕のことを知っていく中で、もっと和田雅成をボロボロに、ドロドロにしたい、というところから生まれたのが今回の作品です。

――実際に脚本を読んでみての印象はいかがでしたか。

最初は新鮮でした。オムくんの完成した作品はいくつも観させてもらいましたが、彼の書いた本を読むのは初めてだったので。へぇ、オムくんってこういう風に文章を書いて、こういう風にト書きを書くんだ、と。

当然、内容も面白いですし。大きな出来事は起きないけど、登場人物たちの心情はめちゃめちゃ渦巻いている。僕が1番好きな、内側で渦巻いているものが最後に表に溢れ出てくるとか、溢れそうになるけどそれを隠したりとか。人間ってそういうものだと思うのですが、そういう部分がリアルに生々しく描かれている。すごく好きな話でした。

「モヤモヤや憤りをこの作品で発散していい」和田雅成が私オムから受け取ったメッセージ

――主人公の人物像としては、「泥を舐めるような芝居をしたい」という部分にもマッチしていた印象ですか?

どうですかね。主人公は文字通りドロドロになるので、そういう意味ではマッチしているかも。それにプラスして、オムくんが“僕の抱えているもの”を反映して書いてくれたんだろうなというのは感じました。

――和田さんの抱えているものを反映、というと具体的にはどんなことでしょうか。

言葉にするのが難しいな……。人それぞれ、大なり小なり、本心を隠していたり我慢したりしていることってあるじゃないですか。でも大人だから、いちいち表に出さない。オムくんは、僕の内側にあるそういうモヤモヤとか憤りを理解したうえで、それをこの作品で発散していいからねと。そういうメッセージを、この作品と役に込めてくれたんじゃないのかなと思っています。

それこそ、僕がオムくんと初めてご一緒した際、オムくんは演出助手のお手伝いとして1日だけある作品の稽古に来ていて。僕はそのことを後から知ったのですが、僕の稽古を見たオムくんは「すごく尖っている人がいるな」という印象を持ったらしいんです。

当時、たしかに尖っていた時期で(笑)。周りに対して、なんでもっと上を目指さないんだろうとか、もっと真摯にお客様に向き合うべきだろうとか、モヤモヤがピークに達していて。当時からのそういう思いとか、ちゃんとした人たちと仕事がしたいという最近の思いとかを、反映してくれているのかなと感じました。

どんなにしんどくても役を生きたい。和田が抱く役者としての矜持

――和田さんは「役を生きる」ことをすごく大切にされています。今回の役を生きる上で、どんなことが挑戦になりそうですか。

毎回そうなのですが、やっぱり役を生きるってすごくしんどい。舞台上の物語である以上、その役のいいところもいっぱい見える世界ではあるんですが、やっていく中で嫌いなところも出てきて、それも自分に取り入れていく。今回はある意味、2役を演じるので、これから稽古の中で、お客様がしっかり受け取れるように2つの役を調整していきたいなと思っています。

――役を生きるということは、プライベートで役に引っ張られてしまうことも?

めっちゃ引っ張られます! 2021年に出演した「2つの『ヒ』キゲキ」では、千穐楽後も多重人格のうちの6歳の男の子が抜けなくなっちゃって……。

――公演期間中だけじゃないんですね。

そうなんですよ。千秋楽が終わって家に帰っても、その子の感情が渦巻いていて。ずっとソファーで、ぼーっとしていました。

――そういうときはどうやってリセットするのでしょう。

時間です。こればっかりは切り替えようと思って切り替えられるものじゃないので。あとは次の役が来るので、ある意味、強制的に切り替える感じです。でも、時間が経っても抜けないときは本当に抜けなくて、定期的にメンタルがぐちゃぐちゃになっています(苦笑)。

――「月農」もしんどくなりそうですか?

どうなんだろう。やってみないとわからないっていうのが正直なところです。ストーリーが重くても、終わった瞬間スッと抜けていく役もあるし。でも、やり終わったときにぐったりすると、やりきったぞという充実感もあるので、今回もいい感じにぐったりできたらと思います(笑)。

取材・文:双海しお
撮影:野田涼

インタビュー後編はこちら

公演概要

宮下貴浩×私オム プロデュース 第 8 回公演
舞台『月農』

【脚本・演出】私オム

【キャスト】
和田雅成
入来茉里
武子直輝
長谷川かすみ
横山涼
福室莉音
宮下貴浩
植木祥平

【公演期間】2024 年 10 月 9 日(水)~10 月 19 日(土)
【劇場】
シアターサンモール
住所:東京都新宿区新宿 1-19-10 サンモールクレスト B1F

【チケット料金】
一般発売(先着) 10 月 2 日(水)20:00~
http://confetti-web.com/@/miyaomu8

【公式 HP】https://www.ruby-parade.com/lp/miyaomu8/
【公式 X(旧 Twitter)】https://twitter.com/miyaomu

【お問い合わせ】miyaomu.info@gmail.com
【宣伝】キョードーメディアス
【企画協力】株式会社ルビーパレード
【主催】宮下貴浩×私オム プロデュース

THEATER GIRL編集部

観劇女子のためのスタイルマガジン「THEATER GIRL(シアターガール)」編集部。観劇好きの女子向けコンテンツや情報をお届けします。

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