松本利夫インタビュー 『よろしく候~BOTTOM OF HEART~』 「新しい時代へ向かって進んでいくための力や思いを感じ取っていただけたら」(前編)

2025年6月26日(木)より東京・シアター1010にて、LEGENDSTAGE feat. カムカムミニキーナ『よろしく候~BOTTOM OF HEART~』が上演されます。
1990年、早稲田大学在学中に演劇サークルのメンバーであった松村武氏、八嶋智人氏、吉田晋一氏らによって旗揚げされた「カムカムミニキーナ」。主宰である松村は劇団の全作品の作・演出を手がけ、歴史や神話から着想を得た壮大なスケールの物語と、ハイテンションでまくし立てるような台詞にテンポのよい笑い、演劇的表現を追求した斬新な演出を得意とし、その独特の作風から多くの根強いファンを獲得してきました。
その松村氏が2008年に脚本・演出・出演を務めた演目をキャスト、音楽、衣装、美術を一新し完全リメイクで届けられます。
物語の舞台は黒船来航に揺れる幕末。勝海舟の統括のもと、徳川幕府初の海軍養成プロジェクトが始動し、幕府の蒸気船には西洋航海術を学びにあらゆる出自の若者たちが集まる。そのうちの一人、旗本の息子・榎本釜次郎を演じるのはEXILEのパフォーマーとしても活躍した松本利夫さん。
共演に今江大地さん、小笠原健さん、松本祐一さん、阿部快征さん、亀岡孝洋さん、武藤晃子さん、神屋敷樹麗さん、松村優さん、田原靖子さん、内村理沙さん、福久聡吾さん、原口誠さん、篠原孝文さん、そして作・演出も務める松村武氏が顔を揃えました。
THEATER GIRLは、主演の松本利夫さんにインタビュー。前編では、本作へ出演が決まった時のお気持ちや役柄の印象、俳優業の面白さや大切にしていることなどについてお聞きしました。
年に一度くらいは大変なことに挑戦したい
――本作へ出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか。
今回、出演のお話をいただけて、とてもうれしかったです。舞台への出演は約1年ぶりなのですが、「年に一度くらいは大変なことに挑戦したい」という気持ちがあります。
舞台では自分の身をすべて剥がして、喜怒哀楽をさらけ出して演じます。年齢を重ねるとどうしても楽な方へ流れがちになるので、自分に喝を入れる意味でも、今回の舞台は「泥水をすすってでもやろう」と思いました。
台本を読んだときに、「ぜひ演じてみたい」と直感的に感じたのも出演を決めた理由のひとつです。また、自分の中で「年に一度は舞台に立つ」という目標もあり、今回のオファーをお受けしました。
――本作では、榎本釜次郎役を演じられますが、役柄の印象はいかがでしょうか。
演じる榎本釜次郎という人物については、もともと詳しく知っていたわけではなく、自分で調べた程度ですが、それをそのまま演じてもリアルにはならないのかなと思いました。これから共演者の方々と一緒につくり上げていく過程の中で、役を立ち上げていけたらと考えています。
また、登場時は若い設定なので、その部分をどう表現するかも工夫が必要だと感じています。これからやるべきことはたくさんありますが、大変な作業である反面、楽しみながら取り組めたらいいなと思います。

――脚本を読まれて作品の面白さや魅力をどんなところに感じられましたか?
武士としてエリート街道を歩んできた釜次郎が、思うように成果が出せず、最先端の場でありながら、そこの最下層に配属されるという設定に惹かれました。一見底辺に見えるその場所が、実は時代を動かす「車輪」となっているという点がとても面白いと感じました。底辺の人々が「自分たちで時代を変えていくんだ」という力強さを持つ姿は、現代にも通じるテーマだと思います。
今の時代も、物価上昇などさまざまな社会的な課題がありますが、それに対して一人ひとりが考えを持ち、行動を起こすことが求められています。選挙に行ったり、自ら立候補したりといった行動が、時代を変える原動力になるという点が、この作品と共通していると感じました。
――松本さんご自身にも刺さる部分はありましたか?
僕自身の活動においても、目に見えないところで支えてくださる多くのスタッフや関係者の方々がいて。その方たちの力があってこそ、今の活動が成り立っているのだと実感しています。この作品の中でも、そうした「目に見えないけれど重要な力」が時代を動かしていく様子が描かれているので、とても共感できました。そこに底力のような力強さを感じられる作品になるのではないかと楽しみにしています。

チームとして一緒に作り上げていく形が理想
――今回は座長も務められますが、座長として心がけていることや意識していることがあれば教えてください。
座長は久しぶりなのですが、やはり舞台はチームで作っていくものだと思っています。ひとりの力というより、みんなの力を合わせて相乗効果でより良いものが生まれるのが理想です。最後にはみんなでしっかりと熱量をそろえて、お客様にそのエネルギーを届けられるようにしていきたいですね。
そんなに力んで「まとめよう」と意気込んでいるわけではないですし、「俺についてこい」というタイプでもないので、自然体でみんなと一緒に頑張っていけたらと思っています。「お客様に楽しんでもらおう」という気持ちを全員で共有しながら、一緒に作品づくりに取り組んでいきたいです。引っ張っていくというよりは、チームとして一緒に作り上げていく形が理想ですね。
――もともとステージで高度なパフォーマンスをされてきましたが、その経験は舞台でも活かされているのでしょうか? 今回の舞台は音楽のステージとはまた違うものですが、両方で響き合う部分があれば教えてください。
僕たちは以前から「ダンサー」ではなく「パフォーマー」と呼んでいました。それは「表現者」であることを大切にしていたからです。踊るだけではなく、表現するという意識を持って活動していました。
舞台でも役者としてステージに立つときには、間や空気感を操っていく必要があります。そういった意味では、音楽ステージでの経験と共通する部分は意外と多いと感じています。

言葉ではなく行動で示すことが大事
――今回の舞台『よろしく候』では、武士を目指す人だけでなく、百姓などさまざまな立場の人たちが集まり物語が展開していきます。EXILEでもチームをまとめてきた経験がありますが、今回の舞台ではどのようなチーム感を意識して作っていきたいと考えていますか?
いろいろな見せ方があると思います。誰よりも苦労している姿や、見えないところで積み重ねてきた努力というのは、舞台の上でも自然と伝わるものです。なので、「ちゃんとやってきたんだ」ということを、言葉ではなく行動で示すことが大事なのかなと。それはどんな現場でも変わらず大切なことだと思っています。
――今回の舞台では、今江大地さんをはじめ若手の俳優さんが多く出演されています。他の舞台でも最近は若手の方々とご一緒する機会が増えてきましたが、若手の方から刺激を受けられることはありますか?
若手の皆さんの頑張りには本当に感心します。逆に、自分はつい怠けてしまう癖があるのですが、若い方たちの力や熱量を見て、改めて刺激を受けています。
上手な方が多いので、彼らの芝居を観て自分に気づかされることも多いです。自分の若い頃と比べると、今の若手のレベルは断然高いと感じます。ただ、自分はどうしても楽な方に流れてしまうところがあって……。単純に稽古やリハーサルがあまり好きではないんです。でも、練習は苦手でも、やらなければいけないと思っています。
そんな自分にとって、背中を押してくれる存在がたくさんいて。「やりましょうよ」と声をかけてくれる人たちのおかげで頑張れたので、一人だと怠けがちですが、そうした刺激がある環境の方が自分には合っていると感じます。

全く芝居が上手くならないところが面白い
――松本さんは定期的に舞台出演をされていて、俳優としてのキャリアも長く重ねられていますが、俳優業の面白さや、ご自身で大切にしていることがあれば教えてください。
全く芝居が上手くならないところが面白いかもしれません。これだけやっていても毎回毎回悩んでいる自分がいます。でも悩むということは、それだけ常に考えているということなので、その苦しみの中から達成感や充実感が得られるのが魅力です。山登りをしているような感覚に近いかもしれません。
――ということは、理想があり、それを追い続けているということでしょうか?
理想のようなものはありますが、それがなかなか思うようにはいかないので、今も追い続けているという感覚です。
――年齢を重ねることで、演じられる役柄にも変化が出てきたかと思います。これから俳優として、どのような活動をしていきたいと考えていますか?
役というのは与えていただくものだと思っているので、その中で自分は全力で取り組むだけです。あまりあれこれ言うと、面倒くさい人になってしまうので(笑)、シンプルに全力で向き合うことを大切にしています。
――舞台ならではの面白さについても聞かせてください。
舞台は一見同じことを繰り返しているようでも、演じている側は毎回違う感覚になります。また、お客様の楽しんでいる顔が直接見られるのも魅力ですね。あとは、失敗が許されない緊張感があります。あの独特の空気感は、なんとも言えない面白さがあります。

松本さんの原動力になっているものとは……⁉
――本作の舞台でもある地獄のかまどと呼ばれる真っ暗な船底、通称「ぼっとん」は船の原動力になりますが、松本さんが活動を続ける上での“原動力”になっているものは何でしょうか?
原動力ですか……。やはり家族ですね。
――Instagramなどにもご家族のお写真をアップされていて、とても大切にされているのが伝わってきます。
一番幸福感を感じられる瞬間が多いのは、やはり家族と一緒にいるときかなと思います。たぶん今だけだと思うんです。子どもが小さいうちに一緒に遊べる時間は意外と短いものなので、今のうちにできるだけ一緒にいたいなと感じています。
――お仕事の姿をお子さんに見せたり、今後舞台を観劇してもらいたいと考えていらっしゃいますか?
そうですね。舞台を観られる年齢になったら、ぜひ観に来てもらいたいですし、自分が仕事をしている姿も見せたいと思っています。
取材・文:THEATER GIRL編集部
撮影:Jumpei Yamada
ヘアメイク/稲野麻亜里
スタイリスト/jumbo (speedwheels)
(UNFILO)のジャケット ¥14,990-
シャツ ¥14,990-
パンツ ¥10,990-
以上オンワード樫山
その他スタイリスト、本人私物
問い合わせ先
オンワード樫山 tel03-5476-5811
公演概要
LEGENDSTAGE feat. カムカムミニキーナ
『よろしく候~BOTTOM OF HEART~』
【東京公演】
2025年6月26日(木)〜6月30日(月)
シアター1010
総合プロデューサー:黒谷通生(レジェンドステージ)
作・演出:松村武
出演:
松本利夫
今江大地
小笠原健 松本祐一 阿部快征 亀岡孝洋
武藤晃子
神屋敷樹麗 松村優 田原靖子 内村理沙
福久聡吾 原口誠 篠原孝文
松村武
企画・制作・製作幹事: レジェンドステージ
主催: 「よろしく候」製作委員会
公式サイト:http://legendstage.jp/yoroshiku
公式X: @Lsyoroshiku
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